皆さんは「垈」という漢字を見たことがあるでしょうか?
「ない」と答えた方、まあそれが普通だと思います。ご安心を。
「ある」と答えた方、あなたは漢字に相当詳しいか、あるいは山梨県民ではないでしょうか。
実はこの「垈」という字、山梨県にしか存在しない漢字なのです。
幽霊漢字
「垈」は「ぬた」と読み、「藤垈」「大垈」などの形で山梨県の地名で使われる漢字です。逆に、山梨県の地名以外ではまったく使われない漢字で、かつては「幽霊文字」とされていました。
幽霊文字とは、出典不明にもかかわらずJIS漢字に含まれているものを言います。つまり、意味も読みも分からないのに、なぜかPCで変換できてしまう不思議な漢字のことです。
「垈」はしばらくの間、どこで誰が使っているのかも、何と読むのかも分からない幽霊のような状態でしたが、調査の結果、山梨県の一部で地名として使われていることが判明し、無事「成仏」した、というわけです。
うっかりミスで生まれた漢字
「垈」は実在する漢字でしたが、いまだ幽霊のままの漢字もあります。
例えば「妛」という字。これは滋賀県にある集落「妛原(あけんばら)」でしか使われていない字なのですが、実はこれは誤字。正しくは下のような字を使うはずのものでしたが、横棒が1本無駄に入ってしまったのです。
なぜそんなミスが? これは、当時変換できなかったこの字を「山」と「女」を貼り合わせて作ったときに、切れ目の影が横棒に見えてしまったからだ、とされています。
そんなうっかりミスで漢字が間違って生まれてしまうなんて、驚きですよね。
本当に何も分からない漢字「彁」
ちなみに、幽霊文字の代表とされるのが「彁」という字。幽霊文字の存在が明らかになった当時、徹底的に出典を調べたことで多くの漢字は無事成仏したのですが、「彁」だけは手掛かりすら見つかっていません。仮に「カ」「セイ」という読み方が付けられていますが、当然使う機会はありません。
文字の雰囲気も相まって、まさしく幽霊のようにおどろおどろしいものを感じてしまいますね。
まとめ
多くの漢字が存在する現在ですが、その1つ1つの歴史をじっくり調べてみると、意外な事実が分かるのですね。みなさんの周りにも「この言葉以外で見かけない」という漢字があったら、掘り下げてみると面白いかもしれませんね。
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