「人の役に立っている」という実感
――bebeさん自身はなぜアニメ業界に入ろうと思ったのでしょうか。
bebe:大学時代に「エウレカセブン」を見て、初めてアニメというものに興味を持ちました。それからスタッフロールを見る度に「ここに自分の名前があったらなあ」と考えるようになり、アニメーターになろうと決意しました。初めてスタッフロールに自分の名前が載ったときはうれしかったですよ。
――どういった表現が得意でしたか。
bebe:実写ではできない、アニメならではの動きは描いていて楽しかったです。
――大きな会社と小さな会社を経験されたそうですが、スタジオの大小は仕事の達成感などに影響しましたか?
bebe:会社の大小よりも、自分の好きな作品を作っている会社で働いているかどうかによると思います。フリー(会社に所属していない)の場合でもそれは同様です。作品自体に興味がないと、どんな環境でも辛くなってしまいます。
――ブログで小さな会社の方が自分に合っていたと振り返っていましたね。
bebe:自分の場合「人の役に立っている」という実感を重要視していました。そういう意味では小さな会社の方がその実感が強く得られ、自分に合っていました。
――どういう部分が実感につながったのでしょうか。
bebe:やはり1話あたりの自分の作業割合が多いほど、作品に貢献した実感が得られます。小さい会社ほど社員が少ないので、1人分の担当範囲は増えやすいです。また後輩指導に力を入れられたのも、会社貢献への実感につながりました。
アニメーターの辞めどきは
――制作進行さんとの関係性についても教えてください。
bebe:必要な連絡事項を迅速に伝えてくれる人はありがたいです。また、演出さんや作画監督さんが自分を褒めてくれたのを、わざわざ伝えてくれたのもすごくうれしかったですね。
――逆に困ってしまった例はありますか。
bebe:早めに伝えるべき情報を後回しにされるのは困りました。打ち合わせが中止になったことを会社に到着してから伝えられたりもしたので……。でも問題は制作さん個人のせいではなく、アニメ制作現場のシステムのせいだと思っているので、やりとりのあった制作さんたちには感謝しています。
――この10年で改善された点として何が挙げられますか。
bebe:改善点はちょっと思い付きません。ただ、デジタル作画を取り入れる会社が増えてきたのは良い傾向だと思います。私自身はデジタル作画の経験が無いので、作業上のメリットについてはお答えできませんが、導入されるようになったという変化自体が良いことだと思っています。デジタル化の流れの中で、10年後20年後も紙と鉛筆で描き続けるのは無理があると思っていたので。
――アニメ会社の辞めどきは、いつだと思いますか? 世間には「3年は頑張るべき」なんて言葉もあります。
bebe:3年という期間に何の根拠もないので、辞めたいと思ったときに辞めるべきです。個人的に思う辞めどきは「まともな教育が会社内で行われない」「上司が人間的に信用できない」「自分の欲しいものがここでは得られないと分かったとき」だと思います。逆に「仕事をしているときが一番幸せだと感じている」なら続けても良いと思います。
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