インターネット大手通販サイトAmazon.comにて、ゲームの海賊版が販売されていたようだ。対象となったタイトルは、人気を博しているシミュレーション「Frostpunk」など。サードパーティーセラーにて定価の90%オフで叩き売られていたゲームの中身は、なんとほかのゲームストアから購入したDRMフリー版だったという。
発端となったのは、Redditユーザーの報告だ。ゲームの特価情報を共有するGameDealsで、定価約30ドルの「Frostpunk」が約3ドルで販売されていることが報告された。この怪しげなゲームを購入したユーザーCodependentlyWealthyが調査したところによると、ファイルの中身はGOG.com(以下、GOG)で販売されたものだったという。というのも、GOGに関するいくつかのメタデータと、同サイトのゲームランチャーGOG Galaxyの動作にまつわるdllファイルが残っていたからだ。販売業者は“Ace Media Group”という名前を付けパッケージし直し、Amazonで販売していたというわけだ。インストーラーは機能するものの、アンインストーラーは機能しないと報告されており、問題のある状態で販売されたことも明らかになっている。不可解な構造と安すぎる値段などを含めて、検証した同ユーザーはこのAmazonで販売されていたゲームを「海賊版だ」と断言した。
実は「Frostpunk」のほかにも「Surviving Mars」が格安で販売されていたほか、古くは「Lords of Xulima」といった作品も販売されており、海賊版が販売されるというケースは決して珍しくないという。もちろん、海賊版を販売する業者自体に問題があるわけであるが、サードパーティーセラーであるとはいえ、こうしたゲームを販売するAmazonに対しても疑いの目を向けられている。というのも、Amazonはこうした不正販売に誠実に対応してこなかったからだ。「Lords of Xulima」のNumantian Gamesが削除要請をした際には、要望を出した開発者に多くの書類を送ることを要求していたほか、海賊版「Frostpunk」を購入したゲームメディアSavyGamerの編集者Lewie Procter氏がAmazonに対し返金を求めた際には、謝罪をしながらも販売者に問い合わせてくださいと主張するのみ。その後氏は問い合わせを続け最終的に返金を受けたが、素っ気のないカスタマーサポートは多くのユーザーにシェアされ、批判を呼んだ。
のちに「Surviving Mars」開発元のHemisphere Gamesと販売元のParadox Interactiveはこの事態に気付き、Amazonに販売停止を要請。「Frostpunk」の販売元の11bit Studiosも反応し、同じくAmazonに問い合わせをし、最終的に腰の重かったAmazonはストアでの海賊版の販売を停止した。正確にいえば、コミュニティーから強い要望が生まれたタイミングで、販売が停止されたとのこと。この一件ではユーザーだけでなく、メーカーも被害にあったわけだが、両社は海賊版を購入してしまったユーザー向けにSteamキーを提供することを提案。3ドルで不正なゲームを購入するハメになったユーザーは、最終的に公式にゲームを手に入れた。
IGNのインタビューに答えた11bit StudiosはKarol Zajaczkowski氏は、Steamキーを提供したことについて、純粋にプレイしたいと願ってゲームを購入した、悪いことをしていないファンを悲しませることを避けたかったとコメント。同社は以前「This War of Mine」が発売されたタイミングで、海賊版が出回った際にも、さまざまな事情でゲームを買えないユーザーがいるという点に理解を示した。そしてゲームを買えないユーザーが海賊版に手を出すことは問題ないとし、さらにはそうしたユーザーのために一定数のSteamキーを配布していた(Polygon)。今回「Frostpunk」を格安で購入しようとしたユーザーに補償を提案したのも、ユーザーの目線に立つことを忘れない11bit Studiosらしい対応だったと言えよう。
またZajaczkowski氏は、Amazonで海賊版を購入したユーザーは決して多くはないとし、販売業者に対して法的措置をとることを否定。業者を追いかけて罰することに意味はないとコメントし、そのかわりにAmazonやその他ストア担当者と、同じようなケースが起こった際にどういう対応をとるのかを、話し合っていくと語っている。大手通販サイトで業者の海賊版が販売されるというのはショッキングな出来事であるが、Hemisphere GamesとParadox Interactive、そして11bit Studiosの丁寧な対応によりひとまず事態は収束に向かっていった。
今回の件でVentureBeatから問い合わせを受けたAmazonの広報は、Amazonからの販売であってもサードパーティー業者からの販売であっても、カスタマーは正しい製品を受け取るべきだとコメントし、偽造製品の出品を禁じるポリシーを強調している。今後の再発防止と、迅速な対応を望みたいところだ。
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