「数億円規模の持ち逃げ」「スルガ銀行保証の安心感で契約」 第二の“かぼちゃの馬車”、「ガヤルド事件」被害者が語る衝撃契約の実態:スルガ銀行不正融資事件シリーズ(前編)(3/3 ページ)
前編ではミニアパートのオーナーになるはずだった被害者3人を取材。
――状況を教えてください。
Cさん:証券会社で勤務していると株を買えないということから同僚に不動産投資を勧められ、ガヤルドの物件を契約しました。将来独立してIT系の企業を立ち上げたいという夢があるので、そのバックアップになればと考えていました。
――同僚からはどういう説明を受けていましたか。
Cさん:サブリースがあるから安心だと聞いていました。同僚から紹介された販売会社Xの担当者からは、練馬区にデザイナーズマンションを建てるという説明を受け、利回り7.58%で契約することになりました。
――契約等で問題はありませんでしたか。
Cさん:弁護士に相談したりして後から分かったことですが、契約書の中には、重要事項説明書があり、これは宅地建物取引士が説明を行わなくてはならないそうです。しかし私の契約時には、ガヤルドのYさん、X社の担当者2人、スルガ銀行川崎支店のO氏しか同席しておらず、重要事項説明書に名前が書いてある宅地建物取引士は同席していませんでした(※)。
(※)編集部注:編集部がX社に確認したところ、当時ガヤルドから「ガヤルドで用意していた宅建士が行けなくなったので、X社で宅建士を用意してほしい」という連絡があり、当日は契約書にサインをした宅建士と別の宅建士(X社の社員で宅建の資格保有者)が立ち会ったとのことです。
――編集部が東京都(※)に確認したところ、重要事項説明書は「(サインをした)宅地建物取引士が取引士証を提示した上で説明しなくてはならない」ということで、もし違反すれば最大で業務停止相当になりうることもあるとのことでした。これをガヤルドや販売会社、スルガ銀行が黙認していたということでしょうか。
(※)東京都都市整備局住宅政策推進部不動産業課指導相談担当
Cさん:私の記憶ではそうです。その後も、登記された物件の住所と契約書の住所が違ったり、聞いていた場所と違う場所で建物の工事が行われていたりということが、全ての契約が済んでから発覚しました。その確認を行っているさなかにガヤルドから支払停止の通知が送られてきたんです。
――そうした状況にスルガ銀行はなんと言っていましたか。
Cさん:スルガ銀行川崎支店のSさんとその上司は「スルガ銀行とガヤルドは無関係」と繰り返すばかりでした。またサブリースがストップしたことで、X社から紹介されたスルガ銀行の審査部門のYさんにも「金利を下げられないか」など相談しましたが、「銀行の立場は貸すことで、Cさんの仕事は返すこと。ガヤルドとスルガは関係がない。Cさんは他にも資産や口座にお金があるはずなので返せるのでは?」と言われ、まともに取り合ってもらえませんでした。
――その後、独自に調査を行われたそうですね。
Cさん:まず、土地と建物の関係について調べました。私が調べた限り、契約した土地は評価額が6500万円程度です。しかし契約時には約1億円となっています。これについてスルガ銀行川崎支店のSさんに「明らかな詐欺では」と尋ねたら「建物が建ったら価値が上がるので詐欺ではないです」と話していました。しかし建物が完成していない状況なのに、これから価値が上がるとは思えません。
――建物についてはいかがでしょうか。
Cさん:ガヤルドが作った完成予想図ではデザイナーズマンションになっていましたが、実際の土地を照らし合わせてみると、明らかに建物が入るような広さではありませんでした。ガヤルドははじめから建物の代金を持ち逃げする気だったのではないかと思います。
――今回の問題について、Cさんは紹介料制度が被害拡大の要因になったとも考えられているようですね。
Cさん:人によっては紹介料を30万円から100万円程度もらっていたようです。私のことを紹介した同僚も販売会社X社から報酬をもらったと言っていました。
販売会社にも怒り
――紹介料はガヤルドが支払うのではなくて、X社が支払っているのですか。
Cさん:そうです。
Aさん:私はそれがおかしいところだと思うんです。問題が発覚したとき、私たちはまずX社に事情を確認したうえで、責任を追求しました。しかしX社は「顧客にガヤルドを紹介したことは事実だが、あくまでもX社は第三者。契約書にも名前が出てこないのでできることは限られる」と責任逃れをしているんです。
Bさん:私もX社の担当者を信頼して契約したので、何度も連絡を取りましたがそのたびに「分からない」「調べます」ばかりで、力になってくれる気配はありませんでした。
Aさん:私たちには何の責任も取らないのに紹介者にだけはちゃんと紹介料を払うなんておかしくないですか。ガヤルドとスルガ銀行にも腹が立ちますが、X社にもちゃんと対応してほしいと思っています。
後編では被害者たちの証言をもとに、販売会社X社、スルガ銀行、ガヤルド元従業員を取材。業者側から見た「ガヤルド事件」に迫ります。
(Kikka)
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