スルガ行員からの「融資の見返り要求」LINE入手 第二の“かぼちゃの馬車”「ガヤルド事件」の裏側を元従業員と販売会社が激白:スルガ銀行不正融資事件シリーズ(後編)(1/2 ページ)
後編では、スルガ銀行、ガヤルド元従業員、販売会社を取材しました。
スルガ銀行による不正融資問題が世間を騒がせる中、“第二のかぼちゃの馬車”と呼ばれている事件があります。その名は「ガヤルド事件」。ねとらぼ編集部では、被害に遭ったオーナー達の証言(前編)をもとに、スルガ銀行、ガヤルド元従業員、販売会社を直撃。事件はなぜ起こったのか、シリーズ後編では業者側から見た事件の真相に迫ります。
販売会社X社代表「ガヤルドを紹介したのはスルガ銀行」
シリーズ前編では、被害者オーナー達から「販売会社X社にも責任がある」との声が噴出していた販売会社X社ですが、代表が「身の潔白を証明したい」と編集部の取材に応じました。
――まず販売会社の立ち位置を簡単に教えてください。
X社:販売会社は、サブリース会社の物件を顧客に紹介するのが仕事です。契約が成立すれば、サブリース会社から報酬が支払われます。
――スルガ銀行絡みのサブリース案件を取り扱うようになったのはいつごろからでしょうか。
X社:2016年の7月ごろからです。当時スマートデイズ(旧スマートライフ)はシェアハウスで業績を伸ばしていたのでとても有名でした。東京でのサブリースの利回りが平均4~5%のところ、かぼちゃの馬車は7~8%に設定していましたから、成り立てばかなり良い条件だったと思います。スルガ銀行からも「スマートデイズという売り主がいる」と紹介されました。
――ガヤルドについてはいかがでしょうか。
X社:ガヤルドもスルガ銀行ミッドタウン支店からの紹介です。もともと面識はありませんでしたが、スルガ銀行が融資をする物件ということで、安心して顧客に紹介できるだろうと考えていました。しかし結果的に弊社も信用を失うこととなってしまいました。
――ガヤルドのサブリースが破綻したときの様子について教えてください。
X社:2017年6月末にガヤルドの床西社長から「明日顧客に通知書を出します」という連絡がありました。内容は、「サブリースの費用、土地の費用、建物が建つまでの費用負担が明日からできません」という一方的なもので、大変困惑しました。
――破綻の予兆はありましたか。
X社:ありませんでした。5月までは普通に物件を販売していたのになぜ……と。こんな経験は個人でも会社としても初めてだったのでかなり動揺して、とにかく床西社長に会いに行きました。
――床西社長とは会えましたか。
X社:はい。「資金繰りが回らなくなってしまって、申し訳ない」と謝っていました。しかし理由を聞いても「お金がなくなったので払えない」と答えるばかりで具体的には語りませんでした。今後については、「スルガ銀行以外の金融機関やファンドにもあたって、3億円ぐらいはめどがついた」と、正常化に向けて動いていることをアピールしていました。ただちょっとおかしな点もありました。
――おかしな点とは。
X社:対応があまりにも落ち着いていたんですよね。数十億単位の案件に関するトラブルを抱えたら、普通は取り乱すと思うのですが、床西社長はかなり冷静で。私がまだ何も言っていないのに、会社の通帳を全部用意して口座に何も残っていないことを確認させたり、ある意味で“手慣れている”と思いました。
――床西社長はどういう人なのでしょうか。
X社:もともとは、あるマンションシリーズを販売していたマンションデベロッパーです。過去にも会社を倒産させていて、今となっては今回も計画倒産ではないかと思います。ガヤルドに関しては、スマートデイズのやり方をマネして作った法人なのだと思います。しかしガヤルドは会社というよりも、不動産ブローカーがガヤルドという看板の軒先を借りているという感じで、紀尾井町にあったオフィスはかなり面積が広いのに対し、従業員は数人しかおらず、がらんとした印象でした。
――ガヤルド事件による被害は販売会社にも出ているのでしょうか。
X社:先ほどもお話した通り、顧客の信用を失ったというのは非常に大きな問題です。弊社はサブリース案件の紹介だけでなくさまざまな不動産案件に携わっていますが、ガヤルド事件の影響がさまざまなところへ飛び火しています。またガヤルドから支払われるはずだった紹介の報酬も支払われていません。
――ガヤルドに対して何か措置を取る予定はありますか。
X社:未払いの紹介料に関しては既に顧問弁護士を通じて民事訴訟を起こしていますが、お金は返ってこないと思います。現在床西社長は顧客から預かった建物の建築費(数億円規模とみられる)と共に失踪しており、弊社ではご実家に連絡させていただいたりして、地道に行方を探しています。
――被害者オーナーたちからは、「ガヤルドから報酬をもらっていないのに、X社が紹介料を支払うのはおかしい」という声も上がっています。
X社:ガヤルドから報酬をもらっていない案件があるのは事実ですが、顧客側からすると「新しいお客さんを紹介した」という事実があります。そのため、顧客との信頼関係を保つためにも弊社が持ち出す形で紹介金をお支払いしています。
スルガ銀行から「見返り融資」の提案
――ガヤルド事件ではスルガ銀行の責任も問われています。
X社:私は事件の主犯がスルガ銀行だと考えています。多くの行員がパッケージ作りに関与し、むちゃくちゃな融資に加担していました。
――詳しく教えてください。
X社:サブリース不正融資問題のキーワードは「1~2億円までの物件」「東京23区と神奈川県の一部のエリア」「利回りは7~8%」の3つです。この3つを満たした物件であればスルガ銀行は融資するといわれていました。だからガヤルドを始め、サブリース会社はそうしたプランをスルガ銀行に持っていくのです。それを行員がチェックしてサブリース会社とスルガ銀行が二人三脚で作ったパッケージをスルガ銀行の行員から販売会社に渡していました。今回の問題にスルガ銀行は大きく関わっています。
――サブリースの問題が明るみに出ると、販売会社やサブリース会社が顧客の通帳を書き換えているという不正も発覚しました。
X社:スルガ銀行の口座情報の書き換え自体は、サブリース案件以外でもよく知られている話でした。資産証明をコピーで済ませているのはスルガ銀行だけだったので、他の銀行では行えない不正だと思います。弊社は技術を持っていなかったので口座の書き換えを行ったことはありませんでしたが、ガヤルド事件ではガヤルドが口座情報を改ざんしていたと聞きました。
――融資については行員から交換条件を出されることもあったようですね。
X社:これもスルガ銀行ならではです。弊社の場合、行員からLINEで「スルガ銀行のクレジットカードを顧客に作らせて」という指示が来ていました。具体的には「スルガのVISAカードのプラチナ年会費6万 ブラック年会費12万どちらか入ってもらいたいです…」「VISAなんとか5000円のにできませんか」という感じです。貸し手側で立場の強い銀行側が「優越的地位の濫用」を行っていると感じました。弊社から「スルガ銀行のクレジットカードに入ってください」という営業はできないので、行員から営業してもらいました。こうした見返り融資は問題だと思います。
――行員について他にも気になる点などはありましたか。
X社:ローンの名目を勝手に考えたり、「エビデンス(口座の金額)をいくらにしろ」と指示をしてきたりと問題はありましたが、中でも気になったのは、行員が地方営業に行く際の交通費を販売会社が立て替えていたことです。
――通常は銀行側か顧客側が負担するのではないでしょうか。
X社:普通はそうだと思うのですが、LINEで「交通費は販社さんに負担してもらってます」「銀行の建前は、お客さんからもらうことになってるので、経費が出ないんですよ……」というメッセージが送られてきました。
――交通費は手渡しですか。
X社:領収証の画像をLINEしてもらって、行員の個人口座に振り込んでいました。その際なぜかスルガ銀行以外の個人口座を指定されました。
――一連の事件で一番問題視されている点はどこですか。
X社:不動産売買契約の場合、虚偽の内容が含まれていれば契約自体を白紙にすることができます。しかし、不動産の契約と、銀行との融資契約は別で、顧客側からすると、不動産の契約を白紙にできてもローンだけが残る可能性があるということです。
――最後に、今回取材を受けてくださったのはなぜだったのでしょうか。
X社:身の潔白を示したかったからです。顧客の中には弊社とガヤルドが組んで一連の詐欺行為を働いたと思っている方もいらっしゃると思いますが、弊社は善意の第三者として物件の紹介を行ってきました。現状、顧客の中には建築物を完成させたいという方もいらっしゃるので、新しい建築会社を紹介したり、弊社としてできることを続けています。
スルガ銀行「行員が地方に行く際交通費の請求をすることはない」
こうした状況について、ねとらぼ編集部はスルガ銀行に取材を打診。質問状を送ったところ次のような回答が送られてきました。
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