閉館から半年ひとりぼっちのイルカ 「移してあげて」呼び掛け話題 行政検査では「施設や健康状態に問題なし」
1月に閉館した水族園「犬吠埼マリンパーク」に取り残された1頭のイルカに注目が集まっています。現在の状況について、千葉県や銚子市に取材しました。
2018年1月に閉館した水族園「犬吠埼マリンパーク」(千葉県銚子市)では現在も1頭のイルカが残されています。8月中旬に動物愛護団体PEACEが、施設の飼育状況が不透明であり「イルカをきちんとした施設に移してほしい」と呼び掛けたのをきっかけに、ネットではTwitterを中心にイルカを心配する声が広がっています。
千葉県衛生指導課に取材したところ、犬吠埼(いぬぼうさき)マリンパークには海匝(かいそう)保健所が月1回立入検査を行っており、イルカなど残された生物たちの健康状態に問題はないと回答。銚子市観光商工課は、現在も施設は飼育を継続しながらイルカたちの引き取り手を探していると説明しました。
「イルカを助けて」 不安が広がった経緯
犬吠埼マリンパークは1954年、銚子市が「銚子水族館」という名称でオープンしました。1963年に民営化し、1984年から富士食品の出資する子会社「犬吠埼マリンパーク」が運営していましたが、2002年に富士食品が倒産。2018年1月に経営難や老朽化から閉鎖しました。
閉鎖後も施設は犬吠埼マリンパークが運営管理しており、残った生物の引き取り先を探しながら飼養しています。千葉県衛生指導課によれば、18歳ぐらいのバンドウイルカのメスが1頭、フンボルトペンギンが26羽、さらに大小合わせて約40種類の魚が500匹ほどいるそうです。
PEACEは8月12日にサイト「イルカのハニーを助けて! はがきアクション」を立ち上げ、施設の不透明性を啓発。「鴨川シーワールド」(千葉県鴨川市)が受け入れる心づもりであったのにマリンワールド側に電話が通じなくなってしまったこと、団体から質問を送っても回答がもらえないこと、生き物の移送先の情報がまったく得られないことなどを列挙し、マリンパークと銚子市に手紙などで意見を送るよう呼び掛けました。
Twitterではこの「はがきアクション」を取り上げたツイートが3万回以上リツイートされ注目を浴びることに。「人間の勝手でひとりぼっち、かわいそう」「涙が出ます」「同じ千葉県民としてかなりひどいと思った」など同情や怒りの声があがったり、「銚子市長にメールで意見した」「市長宛にメールで意見させていただきました」とアクションに賛同した人が現れました。実際、銚子市にはイルカの移動を求めるメールなどが800件以上寄せられたといいます。
千葉県や銚子市による「犬吠埼マリンパーク」の現状
千葉県衛生指導課によると、直近で海匝保健所の職員が立ち入り検査を行ったのは7月26日。施設の飼育状況や健康状態には問題ありませんでした。「現在も生き物の引き取り先の交渉を進めているようです」(担当者)
マリンパークと連絡ができない状況について銚子市観光商工課は「現在連絡が取れない」と回答。千葉県衛生指導課は、「私たちには立ち入り権限があるので連絡が取れるのですが、今現在は一般の取材が殺到しているので外部からの接触を絶っているようです」と説明しました。
またPEACEのサイトでは、「マリンパークが『鴨川シーワールド』に引き取りを打診し、シーワールド側はハニー受け入れの心づもりをしていたが、マリンパークに電話も通じず音沙汰なしとなっていた」「銚子市がマリンパークの継続を希望しており、交渉の結果待ちだと現在シーワールドは理解しているようです」と報告していました。
これについて鴨川シーワールドに取材したところ、「ノーコメントでお願いします」と回答。銚子市観光商工課は「鴨川シーワールドとそのような話があったとは聞いていません。また、銚子市がマリンパークの継続を希望している事実はありません」と否定しました。
「銚子市では犬吠埼マリンパークへいろいろな手段を通じて連絡をとろうとしています。施設の生き物たちの今後の動向については、可能な限り情報発信していけるよう努めてまいるつもりです」(銚子市観光商工課)
(黒木貴啓)
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