「百合」と「SF」、好きなものが両方入っていたら2倍うれしい 『裏世界ピクニック』宮澤伊織に百合を聞く(2/3 ページ)
「最悪にも程がある」のいとうさんを聞き手に百合トーク。
緊張感が加速する3巻
いとう: 3巻に登場した新キャラ「ウルミルナ」は、人を支配する強力な声の持ち主。彼女もVTuber絡みから生まれたキャラですか?
宮澤: ルナに関してはそういうわけでもなくて。最初は「カルト教団」のほうがネタとしてあって、その中で「わかりやすい中ボスがいたほうがいいね」となって生まれたのがルナです。初期はカルト自体が全員「冴月の邪悪な元カノ軍団」にしようと思ったのですが、さすがにちょっと陳腐かなと考えて、「面識はないが冴月にほれ込んでいる厄介ファン」という構図になりました。
いとう: 元カノはいればいるほどいいですけどね。「冴月、キサマ、この女にも手を出していたのか……」と。3巻はいうならば「冴月の元カノ軍団」が対峙して、しかも彼女たちは空魚に昔の女の影を見ているという最悪の構図が明かされて、百合としての緊張感がすごかったです。
宮澤: 僕、伏線うまいんですよね……というのは冗談として、非常にうれしいです。
――2018年2月からは、水野英多先生によるコミカライズもスタートしました。原作の展開への影響はありますか?
宮澤: さっきも言ったように、わりとキャラのイメージを固めずに書き始めるので、イラストのおかげで「このキャラはこういう人だった」というのがわかってくるところはあります。それは小説の表紙を描いてくださっているshirakaba先生もですし、水野先生もそうですね。
――現在はコミックス1巻が発売中(2巻は2019年1月発売予定)。「くねくね」「八尺様」のエピソードが収録されています。
宮澤: 原作の要素をすごく丁寧に拾っていただいていてびっくりしました。『裏世界』は漫画化に向いている作品かというと、必ずしもそういうわけではない。2人でダラダラ歩いているシーンや、空魚のモノローグだったりと、絵面はわりと地味なんです。でも水野先生はさすがベテランというか、すごく漫画の呼吸で漫画にしていただいているなと思います。
いとう: 私はガンガンっ子だったので(『裏世界』コミカライズは「少年ガンガン」連載中)、水野先生が描いていることが超うれしいです。水野先生の絵でめちゃくちゃ好きなのは、“まつげの白抜き”が鳥子にだけ入っていることですね。小桜も銀髪ですけど、鳥子ほど美人ではないのでまつげが白抜きされていない。まつげが豊かさゆえに白く縁どられて影を落とすのは、本気の美人だけ。水野先生は本気で“顔”に向き合っているんですよ……。
宮澤: 小説家としては、非常にうれしい反面、「だからこそ小説でしか書けないシーンを書いていきたい」というひねくれた気持ちも生まれています。3巻のあるエピソードは、そうした気持ちがちょっと反映されているかもしれません。
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