私のバイト先である科学実験教室では半年に一度の「発表会」があります。
この発表会では、半年間で行った実験の中から、発表会で紹介したい実験を生徒自身でえらび、自力でポスターと発表台本をつくります。発表会当日は、広い部屋を借り、ピンマイクで発表し、先生による質問タイムもあるという本格っぷりなんですよ!
準備は大変ですが、それでも子どもたちに、
- 半年の実験経験の集大成を
- 非日常的で適度な緊張感を持ちつつ
- プレゼンテーションを経験
してほしいからこそ、この日ばかりは運営するスタッフも子どもたちも本気で発表会に挑みます。
さて、発表会の季節は、子どもたちの成長が見られるとともに、別れの季節でもあります。数年前の発表会。その最後の発表者であるA君も、引っ越して教室を辞めてしまう一人でした。
その時私は司会で、12時間近くに及ぶ発表会の運営でもう足ががたがた。それでも私は腹の底からしっかり彼の名前を呼びました。彼はしっかりとした返事をしてくれて、立派に最後の発表をしてくれました。
「たまご先生。今日で最後になるね」
発表会のあと、その男の子が声をかけてくれました。私はこれが最後になることが寂しくて、でも晴れ晴れした姿を見れたのがうれしくて、
「うん寂しくなるね。実験教室でのこと、最後の発表までしっかりやりきれたね?」
と何げなくきいたら
「うん!! やりきった!」
とすごく良い笑顔で応えてくれました。
その時私はその笑顔を見たらなぜか無性にうれしくて涙がこぼれそうになりました。
ほんの一時でも彼の「やり切れたもの」に貢献できたのかな、今日一日頑張ってよかったな、今日の最後に、彼の名前をしっかり呼んであげることができて良かったな、大変なこともあるけどこのバイトをがんばってきてよかったな。そんないろんな思いで胸がいっぱいになったのです。
私は男の子とそのご家族を見送ると、会場の陰でこっそり、すこしだけ泣きました。
あんなふうに「やりきれた!」とすてきな笑顔でいえる生徒がこれからも増えるといいな。そして私自身「やりきれた!」と言い切れる仕事を少しでも増やしていけたらいいな。
そんなことをふと考えながら、その年の発表会シーズンを終えたのでした。
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