ポケモンにガンダム、どん兵衛まで! 手ぬぐいばかりを集めた同人誌『てぬマップ』でお気に入りをゲットだぜ:司書メイドの同人誌レビューノート
意外なところに売られていたりするんですね。
梅が咲いてますねー! 満開です。やわらかな芳香に、丸いはなびらが風もないのにほろほろとこぼれる様の美しさ。花が咲くまで意識しませんでしたが、ひそやかに花開いているのに出会うと、古くから愛される植物が街のそこここでいまも息づいているのを感じました。
今回紹介する同人誌
『てぬマップ 東京23区内編』A5変形 52ページ 表紙カラー・本文モノクロ
『てぬマップ 東日本美術館博物館編』A5変形 50ページ 表紙カラー・本文モノクロ
作者:笹本木綿子
百貨店も東京駅もスカイツリーも! 世の中こんなに手ぬぐいがあるなんて
今回ご紹介する同人誌は、手ぬぐいをコレクションし、自らもオリジナルの手ぬぐいを制作されている作者さんが、実際に訪ね、手ぬぐいを入手したお店の情報をまとめたご本です。2冊合わせてなんとおよそ80店! 1ページにお店の名前、場所、そこで購入した手ぬぐいの情報がまとめられています。正方形の小さな本ですが、最寄の駅などの情報もきちんとカバーされています。
ページをめくっていて、まず楽しくなってきたのはそのお店の多彩さです。手ぬぐい専門店はもちろん、JR東日本が運営する鉄道グッズのお店や、ポケモンセンター、スカイツリーでガンダムの手ぬぐいを発見したりも。実はこんなにも手ぬぐいがあちらこちらにあったなんて驚きです。しかも種類も豊富で、その年の干支にちなんだ新作が出たり、季節ごとに柄が変わったり、中には「雨の日にだけ売られている」というものも! そんな多種多様な手ぬぐい情報に“最近は夏以外にも突然新柄を出してくるので警戒が必要(特に桜の時期)”なんてコメントが添えられます。熱く収集するコレクターさんの心情が思わずにじみ出ちゃった気持ちが、じわじわとこちらにも伝わって、ほのかな温かさがなんとも良い感じです。
楽しい意匠はお土産にぴったり。美術館・博物館にも充実
『東日本美術館博物館編』には各地の美術館や博物館、そして水族館やカップヌードルミュージアムなんてところも掲載されています。
その施設の性質からかおしゃれさが際立つものも多いです。マリンピア日本海のアザラシとラッコの模様にワンポイントで鰯の大群が描かれているかわいさ! 夢の島熱帯植物館の大胆さ。うーん、かっこいいです。しかも描かれるモチーフも、動物、植物、時計やバイク、どん兵衛のきつねさんも群馬のキャラクターぐんまちゃんも手ぬぐいに。もうどこまで広がるのかちょっと遠い目になるほどいろんな絵柄が1枚の木綿の布に展開されています。手ぬぐいはだいたいサイズも同じ、素材も木綿です。そのなかにこんなにもいろんな世界が広がっているんですねぇ。
宮城、新潟、長野……と各地を巡っていらっしゃり、「行ったときは暑い夏だったので手ぬぐい濡らして涼んでました」と書かれたコメントを読むと、旅して、そこにしかない意匠を手にして、それを使って持ち帰るという使いこなし方がかっこいいです。薄くてかさばらない手ぬぐいはお土産にぴったりですね。
モチーフ×デザイン×販売店の組合せの妙!
ご本を読んで、ぐっときたのは、「手ぬぐい」という古風な小物に、過去から今の最先端まで、思っていたよりもずっとずっと幅広いジャンルが描かれていたことです。そしてそれらが「こんなところにも!?」と思いもつかなかった場所で売られていることにも驚きました。
「これも手ぬぐいにしちゃう!?」と驚くような意外なモチーフが描かれたり、「いつも見ているアレがこんなにかっこよく配置されているとは!」とデザインにうなる逸品を見る面白さ。さらに、「ここで販売してるのね!」と場所に思いをはせて、自然に“物品そのもの”と“それを取り扱う場所”が頭の中で混ざり合っていきます。
かわいくかっこいいものが「ここで売られているよ」という情報と混ざると、いくつもの「すてき」「いいね」「驚き」が重なる面白さになるなんて。それはこんなにもたくさんの場所の一つ一つに足を運んだ作者さんのリアルな情報と、手ぬぐい愛がにじむコメントがぎゅっと詰められているからこそ感じられたように思います。
手ぬぐいってクラシックな小物なのに、そこに描かれた文様はどこかユーモラスで愛らしくって、とってもおしゃれ! 『てぬマップ西日本編』も予定されているそうで、楽しみです。
サークル情報
サークル名:黒猫舎
Twitter:@kuronekosha11
入手先:黒猫舎ネットショップ
次回イベント参加予定:日本てぬぐいの日イベント(3月21日)、おもしろ同人誌バザール7(4月6日)
今週のシャッツキステ
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
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今週はサークル「FANDOMAIN」さんの同人誌「アメリカンコミックス効果音辞典 スーパーヒーロー誕生から70年代まで」をご紹介。