人が亡くなったときにその親族が一番ほしいものは何か――法事でお坊さんに聞いた話を描いた漫画が「もっと早く知りたかった」「まねしたい」と話題になっています。作者は漫画家の大塚みちこ(@mt_mittyi)さん。
大塚さんが出席したおばあちゃんの法事でのこと。人が亡くなったときには深い喪失感や寂しさで心が覆われてしまうもので、親族であれば思いが深い分寂しさや喪失感も深いものになると語ったお坊さん。そんな気持ちは時間が解決してくれるものではありますが、お坊さんは1つ提案をしてくれました。
それは故人と関わってくれた家族以外の人の声に耳を傾けること。人は誰でも家の顔と外の顔があります。故人が外でどんな人だったのか、どんな気持ちで人と関わって来たのか……これこそ残された親族が一番知りたいことであり、葬儀に来てくれた人になるべく故人がどんな人だったか聞いてみてほしいとお坊さんは助言します。できれば受付などにノートを置いて、参列者に自由に書いてもらうとよい、とも。
お通夜や葬儀では参列者とゆっくり話をしたくても実際にはなかなかできず、終わってから「ゆっくり話したかった」と思う人も多いのだそうです。そこで、故人について自由に記せるノートを置くことをお勧めしているのだといいます。ノートに書かれる内容は他愛もないことでも、関わってくれた人たちの記憶から、故人のいくつもの姿を知ることができたと感激した――と、お坊さんはノートを置いた人のエピソードを語ってくれました。
「伝統も人も語り継いでいかないと消えてしまいます。語り継いでもいつかは消えてしまうのですが、形に残しておけば長く保つことができます」とお坊さん。故人への思いを形として書き残しておけば、子から子へ受け継がれて、どんな人が親族だったか知ることができると教えてくれます。大塚さんはお坊さんの話を聞き、「その時にいちばんほしいものをそっと渡せる人に私もなれたら」と思ったと結んでいます。
葬儀ではゆっくり参列者と話をする余裕がないことが多いからこそ、ノートに書いてもらうことで、後で見返すことができるようになり、故人をしのび、伝えていくことができるのですね。この漫画を読んで、葬儀に参列する側になった場合には、親族の方に故人との思い出を何らかの形で伝えたいと思いました。
大塚さんは今、大切な方を亡くして心痛んでいる方に少しでも届けばとこの漫画を描かれたそうです。この漫画を読んだ読者からは「もっと早く知りたかった」「ノートを置いておきたい」「送りに来た人が持ち寄ったパズルのピース。ダブりがあっても余らない」など、自身の家族の葬儀の時に知りたかった、これからノートを置きたいなどの声が集まっています。
この漫画は、大塚さんが祖母の死にまつわる出来事をつづったエッセイ『私はいつか今日のことを思い出す』がもとになっています。また大塚さんはゆるほっこり寺子屋4コマ漫画「それいけ!せっぷく丸」をぶんか社で連載中です。
画像提供:大塚みちこ(@mt_mittyi)さん
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