対談取材時の作家と編集者の関係は「ポケモンとトレーナー」? 漫画家が恐れる“呪いをかけてくる”編集者とは:コナリミサト×高野ひと深(2/2 ページ)
『凪のお暇』作者×『私の少年』作者。飲酒トークで本音を語ります。
――コナリさんからの注意点はありますか?
コナリ: それこそ“なんでなんでマン”なんですけど、「なんでいいと思ったんですか?」「なんで嫌いだと思ったんですか?」と聞いたときに、きちんとコミュニケーションできる人なら、いいんじゃないでしょうか。編集さんと意見が違っても全然いい。
編集・三村: 新人さんは「正解」があるような気がして、正解を言ってくれる編集者を求めてしまいがちかもしれないですね。
高野: 編集さんが過去に手掛けた作品をすごく気にしてしまったり、過去作がヒットしていれば自分もヒットできると思ってしまったり……ってことはありますよね。でも結局人と人の相性の問題なので、そう簡単にはいかない。
――すでに安定して連載をされているお二人にも、他誌からのお声がけのメールは来ますか?
コナリ: アドレスは公開してないですけど、熱意のある方は何らかの手で連絡をくれますよね。本当にありがたいことです……。
高野: そうですね。今は全く余裕がないから、取りあえずお会いしても仕方ないなと思って、断ることが多いですけれど。ちなみに三村さんのときは、Pixivのメッセンジャーでご連絡をいただきました。
――今はSNSがあるから、漫画家さんと編集者さんがつながりやすい時代ではありますね。
編集・三村: でも、雑誌の立場が今どんどん低下してますからね。「雑誌だぞ! メジャー誌だぞ!」と声をかけたって、意味がない。作家さんが自分だけで表現できる場所も増えているし、こちらも頑張らないといけないと思ってます。
『凪のお暇』は“ヴィーナスの欠けた腕”である?
――漫画家さん発信のプロモーションも増えましたよね。Twitterで、「すごくわかりやすいタイトル」をつけて漫画を拡散させるやつとか。
コナリ: 最初にどういう話か言っちゃうんですよね。私も「めちゃコミ」さんの宣伝ツイートが、作品の売れ行きにつながった経験があるので、ネットの反響も大切だと思ってます。ただ、それだけが全てではないので、やりたい人はやればいいけど「Twitterでもっとプレゼンしなきゃいけないのかな……」と悩んでる人は、無理にやる必要はないんじゃないかな。
高野: 私は本でも映画でも、想像力を働かせる余地のあるタイトルが好きなので、あれをやるのはちょっと抵抗があるんですよね。例えば『凪のお暇』って、すごく良いタイトル。“ヴィーナスの欠けた腕”みたいじゃないですか?
コナリ: え、ごめん。ちょっとわからない。どういうこと?!(笑)
高野: 「ミロのヴィーナス」の腕が欠けているからこそ想像力がくすぐられるように、すごく“開かれて”いて、どこにでも通じるじゃん。どんなエンディングになったとしても「これが『凪のお暇』です」と言える。
――何となくわかります。
高野: 一方、『私の少年』って、結構“閉じて”いるタイトルなんですよ。「私の少年」と所有格で宣言してしまっている以上、そこに抗っていくような描き方になる。
コナリ: ひと深ちゃん、ねとらぼのインタビューでも前に言ってたよね。「まぁ現実だったらこうなるよねという展開にはしないつもりです」って。めっちゃ手に汗にぎった。どうなるの!? って。
高野: 無理かもしれない。「ごめーん」になるかも。
コナリ: どうするの!?
高野: でも、毎話、そのときの自分にしかやれない形で描いているので、やってるうちに見つかるし、変わっていくかなと思います。そもそも時代も、読者さんの意識も、1年たつと全然アップデートされてるじゃないですか。私が2019年に「こうだ」と決めたことが、エンディングを迎える時点では「どうかな……」となることもあるだろうし、未来の自分に期待したい……。
コナリ: あ、結局二人でしゃべっているうちに菅原さんが帰ってしまった! また私がポケモンに……。
――対談には勝ち負けはないですから、ポケモンのことは忘れてください(笑)。
(つづく)
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