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東大教授のトランスジェンダー差別記事に東大教員有志が抗議 TOCANA編集部は「抗議に応答する予定はある」

※2019年6月17日に追記を行いました。

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 2019年5月26日、東京大学教授の三浦俊彦氏が執筆した記事にトランスジェンダーに対する差別が含まれるとして、東京大学関係教員は抗議声明を発表しました

記事の要点と批判

 問題となっているのは、2019年5月14日にサイゾーが運営するWebメディア「TOCANA」に掲載された記事「【#木綿の天井】「レズビアンたるもの、相手にペニスあっても女だと思ってヤレ」世界で広がる狂ったLGBT議論を東大教授が斬る!」です。トランスジェンダー女性を女性として認めることに対して疑念を示す内容であり、記述には多くの問題が認められます。

 トランスジェンダーとは、生まれた時に割り当てられた性別と異なる性別を自認している人を指します。例えばトランス女性とは、出生時に医師から「男性」と判断された女性です。反対に、生まれた時に割り当てられた性別と同じ性別を自認している人はシスジェンダーといいます。性別は常に本人の自認に従って選択されるべきものであり、トランス女性は間違いなく女性です。

 三浦氏は、トランス女性を女性として認めるならば、レズビアンのトランス女性がシスジェンダーのレズビアンに対して「自分と性的関係を持たないなら、それは差別だ」と主張することが可能になってしまう、と述べています。

 相手と性的関係を築くかどうかは、どのような条件であっても個人間の問題です。「性的関係を持たなければ差別になる」という状況は成立しません。抗議声明では、三浦氏の文章が「ある特定の生のあり方を社会的に承認すること」と「そのような生を生きる個人を性的に『受け入れる』こと」が不可分であるように見せかけていると指摘し、批判しています。

 さらに三浦氏は、レズビアンのトランス女性を「不特定多数の女とやりたが」る「わかりやすい普通の男たち」と称していますが、これは偏見に基づいて個人の性自認を踏みにじるものです。また文中の「普通の男性」なら「不特定多数の女とやりたが」るかのように読み取れる表現は、そうでない男性を「普通ではない存在」として扱うことにつながりかねません。

 抗議声明では、「意図的なミスジェンダリング(自認と異なる性別で相手を扱うこと)」に対して異議を申し立て、東京大学で学ぶトランスジェンダーの学生たちが生活を脅かされることに懸念を示しています。

TOCANAトランスジェンダー差別記事 抗議声明に賛同する東京大学在籍教員・研究者
TOCANAトランスジェンダー差別記事 抗議声明に賛同する東京大学出身/過去在籍教員・研究者

「(抗議声明に応答する)予定はあります」

 ねとらぼ編集部では、TOCANA編集部に取材を行い、本件に関する認識について以下の回答を得ました。

――三浦俊彦氏の記事が批判されていることは認識していますか。

 認識しています。

――東京大学関係教員による抗議声明に応答する予定はありますか。

 予定はあります。

――トランスジェンダー差別がネット上で巻き起こっていることについて、TOCANA編集部はどのように考えていますか。

 トランスジェンダー差別はネット上だけではなく、社会全般で見受けられると考えています。ただ一辺倒に差別を批判するだけではなく、なぜ差別が生まれるのか、どうすれば差別がなくなるのか、また、現状のトランス支援が引き起こす二次的問題はないのか、耳障りのいい話だけではなく、リアルな議論が必要だと考えています。(TOCANA編集部)

追記(2019年6月17日11時25分)

 2019年6月11日、TOCANAに三浦氏からの応答が掲載されました。

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