カービィの空気抵抗
では、測定してみましょう。リザードンでカービィを投げてみます。なぜかというと、カービィは球体なので重心の位置が分かりやすいんですね。リザードンは後ろに投げる技が初期値を測定しやすいため、使っています。
トレーニングモードの背景が方眼紙のようになっているのですが、このマス目を1センチ×1センチの正方形と仮定します(理由は質疑応答にて後述)。
蓄積ダメージ0%のカービィをリザードンが投げると、飛距離は39センチ。また投げられる直前のカービィの位置から、初速を求めると毎秒1320センチ。
※飛距離などは背景に引かれた赤い縦線を「X=0」として測定。リザードンが投げるモーションで、カービィは−22から0の地点まで移動。そこから「X=39」の地点まで飛んだ。
ここから、物体の形などから決まる値「K」を計算すると、毎秒33.8mキロ(kg/s)であることが分かります。この「m」はカービィの質量ですね。
仮説「カービィは歯磨き粉の中みたいな世界で戦ってる」
スマブラの中でカービィの質量を測定する方法が分からなくて。でも、ゲーム内にヒントがありました。
スマブラのカービィって、水に浮くんですよ。カービィが完全な球体で、水の9割の密度だとすると、「質量=体積×密度」から、カービィの質量はだいたい1000グラムくらいだと推測できます。
ここから計算すると、空気抵抗を表す「K」は毎秒30キロ(kg/s)。これは私たちの知っている空気とはかなり違う値でして、「スマブラのカービィは、私たちとは異なる大気環境で戦っている」ということになります。
「同じくらいの『K』を持つ身近な物質があれば、カービィが置かれている環境がより理解できるようになるのではないか」と探してみたら、1つだけありました。
歯磨き粉です。
というわけで、「スマブラのカービィって、歯磨き粉の中みたいな世界で戦ってるっぽいよ」というお話でした。
質疑応答
―― スマブラにはさまざまなキャラクターがいますが、飛び方は一定なんですか?
キャラクターによって全然違いますね。
実際にどんなプログラムで動いているのかは知らないのですが、たぶん、キャラクターごとに「K」が決まっていて、飛ぶ量が毎回計算されてるんじゃないかと思います。
―― 蓄積ダメージが高いほどよく飛ぶのはなぜだと思いますか?
「ダメージが増えると飛ぶ量が増える」というのは、物理的にありえないわけですよ。飛ぶ量は初速や質量、空気抵抗で変わるので、ダメージは関係ないしなあ、という。
スマブラではダメージ量が%で表されますが、これも不思議です。例えば、100%のときに飛ぶ距離は、50%の2倍ではないんですね。また、もしも倍になっていたとしても「0%のときはどうなるんだ」という話になっちゃいます。
―― なぜトレーニングモードの背景を「1マス=1センチ」換算にしたのですか?
ここは悩んだというか、難しいところでした。というのも、スマブラは「キャラクターの“フィギュア”などが戦っている」という設定らしくて、原作のキャラクターの大きさを参考に考えることができなさそうなんですね(※)。
※身長比率からも同様のことが言えそうだ。「ポケモンずかん」によれば、ピカチュウの体長は40センチ。一方、「メトロイドII」公式サイトによれば、サムスの身長は190センチ。約5倍大きいことになるが、スマブラではそこまで変わらない。
最初はトレーニングモードのマス目の1辺を10センチで計算してたんですが、そうするとカービィが90センチになって。90センチの球体が水と同じ密度になると、重さは1トンになるんですね。さすがに1トンだと投げられないだろうということで、マス目の1辺は1センチと仮定しました。
※本記事の文章は読みやすさなどに配慮し、発表内容を一部補足・修正しています
※制作協力:日曜数学会
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