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「あいさつ代わりに組み手を仕掛け合う」 オリンピックをガチで目指していた人に“あるある”を聞いてきた(レスリング編)(3/4 ページ)

頂点を目指す者たちの世界。

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人生最強の相手

――大学はどこが強いとかってあります?

 僕の時代だと、日本体育大学、拓殖大学、早稲田大学、日本大学、専修大学、国士舘大学……あたりですかね。いわゆるスポーツの強い大学と思ってもらえばOKです。

――競技人生の中で最強だった相手は誰です?

 ロンドンで金メダルをとった米満達弘選手とかとも戦ったことはありますが、手も足も出ないとか、完敗だ……ってことはなかったです。外国人選手にしてもそうで、勝つこともあれば、あと一歩で負けたりとか。

 僕は全日本中学校選手権で中3のときに全国優勝をしたんですが、最強の相手はその前年の中2のときに対戦したJくんです。彼には全く手も足も出ず、完全にたたきのめされました。

――全中で優勝するレベルのAさんが完敗したってことは、Jさんはその後さぞかし偉大な選手になったんでしょうね? オリンピック代表選手になったとか?

 いや、それが高校で競輪の世界に行ってしまいまして……レスリングからは離れてしまったんです。たらればですが、そのまま続けていれば日本代表も夢じゃなかったと思います。



skeezeによるPixabayからの画像

代表に届かなかったアスリート全員が大なり小なり味わう感情とは

――レスリング選手時代の“あるある”を教えてください。

 減量中は軽い栄養失調状態のようなものなので、座っている状態から急に立ち上がると貧血で倒れやすい。なので、おじいちゃんのごとくゆ〜っくり動きます。

――ちょっと想像がつきます(笑)。

 暇さえあればレスリングの動画を見ている、もあるあるですね。海外動画を見て技の研究をするとか。「奇抜な技のかけ方するなー」とか「ファンキーな動きをしやがるなー」とか思いながら見ます。

――ちなみに国ごとの特長ってあるんです?

 ロシアは強いですよ。スタミナ、テクニック、ハングリー精神全てにおいてハイレベル。それとキューバも。パワー系選手が多いです。カザフスタンとかウズベキスタンとかキルギスタンのような「スタン」とつく国名も伝統的に強いです。ロシアに似てますね。あとは韓国かな……。日本に似てて堅実で正攻法なんですが、日本よりはやや雑な印象。

――なるほど……。ほかには?

 レスリングに限りませんが、レベルが上がって人に認められるのはうれしかったです。強くなると試合会場で「お、Aだぞ」「本当だ」って声が聞こえてきたり、「Aの試合見ようぜ」ってヒソヒソ話が聞こえてきたり。「どうやってあの技はかけているんですか?」って声をかけられることもよくありまして、ちょっとした優越感は味わえました。

――オリンピック代表を本気で目指していたそうですが……そっちの思い出はありますか?

 ロンドンと北京は本気で代表選手を目指していましたが、オリンピックの選考前に肩を脱臼してしまい、棒に振ってしまいました。そのときの虚無感はかなり強烈で、選手として最も成熟して自分史上最強だった時期に、目標を捨てなければならなかったときの喪失感はすごかったですね。正直、鬱になりかけました。オリンピックを目指して、代表に届かなかったアスリート全員が大なり小なり味わう感情だと思います。

――どうやって立ち直ったんですか?

 落ち込んでいる自分に、後輩が積極的に絡んでくれました。外に僕を連れ出したり、一緒にサウナに行ったり……あれがあったから救われました。彼には本当に感謝しています。

――もしも代表になっていたら……と今も考えたりします?

 たまにですが、思い出しますね……。もしも代表選手になっていたら、周囲にちやほやされ、異性にもモテて遊んでしまうというか、欲望に溺れてしまったかもしれない、と。代表にならなかったから、人生を踏み外さず、今はビジネスの世界できちんとキャリアも積めているわけですし。まあ、そうやって自分に言い聞かせている部分もありますが。

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