今のギャグ漫画は「テレビを基準にするやり方だとちょっとまずい」――『トマトイプーのリコピン』大石浩二に聞く、「面白かったね」で終わらない方法(4/6 ページ)
「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」第99回。
もともと『リコピン』は縦軸のない物語ではあるんですけど、「ジャンプ」での連載が決まったときに、何となく伏線のようなものは入れておこうと思ったんですよね。「『ONE PIECE』って何だろう」みたいな。だから、実は「ボクらぜつめつきぐしゅ」の回(第27話)に出てきた「キュートピアレッドリスト」の「絶滅」の中に、伏線として「Homo sapiens(ホモサピエンス)」がしれっと入ってるんですよ。
――ええええ、本当だ! 全然気付きませんでした……!
ほかにもリコピンが住んでるフロランタン地方の地図も東京の形に即してて。
――えー!
めめちゃんとリコピンが出会ったハニトー地区が千代田区あたりなんですよ。穴掘り系アイドル・ミーアキャッツのライブハウス(第7話「キュートピアのアイドル」)が、ちょうど秋葉原の辺りにあって。だから「ハニトー地区の広さは、こっちの世界で言うと東京の千代田区くらいだよ」っていう注釈も、実は本当に千代田区で。ちなみに、リコピンパパの会社(ブラック企業)のある場所が集英社です。
――リコピン、ちょっとしたSFじゃないですか。そして何となく「けものフレンズ」的な感じも……。
でもこれ僕、「けもフレ」より先に考えてたんですよ。「ねほりんぱほりん」に続いて先にやられてちゃって。ガチガチのSFっていうわけじゃないけど、すごく読み込んだ人は分かってくれるかなっていう。
冨樫義博先生の『レベルE』の野球部の回がすごく好きで、そういう「最初は誰が犯人か分からない」ことをやりたいなって思ってたんですよ。『いぬまる』でも、最初は誰がいぬまるのお父さんか分からないようにしたりして。そういう伏線に気付いた人がいると、僕が楽しいですよね。
――分かります。自分の細かいこだわりまで、読者に気付いてもらえるとうれしいですよね。
「ジャンプ+」第8話の「エンドレスハロウィン」では、何度も何度もハロウィンを繰り返す「エンドレスエイト」ネタをやって、もちろんそれに気付かなくても面白くなるようにはしてますけど、コメント欄に「8話だからループネタね」っていうのがあってうれしかったですね。もうちょっと伏線をしっかりやれれば良かったんですけど、急に「あと3週で連載終了」みたいになったんで、「ジャンプ」では割とバッドエンドみたいな形になっちゃって。
――そういうことだったんですね。で、「ジャンプ+」に移籍した後は、「PLUS SIDE」として「ジャンプ」最終回とは別の世界線に。
最終回の路線で行くと笑えないんで、単純にギャグだけの別の世界線に行きました。
――なるほど。『リコピン』は「ジャンプ」時代からネットネタが強かったので、むしろ今の「ジャンプ+」の方が相性がいいんじゃないですか?
『リコピン』は週刊連載中から、Twitterでバズるのを意識していた部分があって、実際に初期のころから画像を切り取られて何万RTとか結構やられてたんですよ。なのに、全然『トマトイプーのリコピン』とかいわれず、まるで自分が描いたかのように「こんなに伸びるとは思わなかった!」とかいわれて。「いやお前の手柄じゃねーよ」とか思いつつ、まあ言うのも野暮なので何も言わないんですけど。
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