今のギャグ漫画は「テレビを基準にするやり方だとちょっとまずい」――『トマトイプーのリコピン』大石浩二に聞く、「面白かったね」で終わらない方法(3/6 ページ)
「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」第99回。
笑いのラインをどこに置くか
――当初の予定とは違う感じで始まった「ジャンプ」での週刊連載を経て、今年(2019年)7月からは漫画アプリ「少年ジャンプ+」に連載を移されました。紙媒体から電子媒体に移って、何か作り方に変化はありましたか?
「ジャンプ」の読者って「いないいないばぁ」で笑う子どもから、落語で笑う大人まで読んでるんで、自分が面白いと思うラインをどこに置くかっていうのがすごく難しいんです。お笑い好きの人だけを笑わせようとするとすごく狭くなっちゃうし、かと言って小学生だけ、というのは僕がやれる範囲じゃない。だから、今まで合計して5、6年くらい「ジャンプ」でやってるんですけど、ギャグに対して「絶対にこれでいける、会心の出来だ」と思えたことが1回もなくて。
――「全年齢を笑わせるギャグ」って確かにめちゃくちゃ難しいですね……
お金を出して買ってもらってるというプレッシャーが「ジャンプ」にはあったんですけど、今の「ジャンプ+」は気軽に無料で読めるっていうのもあるじゃないですか。だから、そのプレッシャーはなくなった感じですね。
それ以外だと、後から修正が利くっていうのも楽ですね。出した原稿がそのまま載ってしまう紙だと、後になって「あのツッコミやめたい」ってなっても直せないですよね。あと、時事ネタを使おうとしてるんだけどパンチが弱いときに、ほかのもっと面白いニュースが出てきて変えることもあります。「スーパースター出てきてくれ……!」ってところで、野々村議員が出てきて「スーパースターきたー!」みたいな。だから、僕みたいな作風の人にとって締め切りって邪魔なんです。けど、これも「ジャンプ+」に行ったらましになりました。
――「修正が利く」といえば、特に「ラップバトル」回(第18話「ふれあいしんぼくかい」)は初出時に比べてずいぶん変わったという指摘がありますね。
あれは本来コミックスに載せてる方が正解だったんですよ。締め切りギリギリまで5回くらい差し替え続けたんですけど、最終的に「これにしてください」って言ったのと違うものが載ってしまって。ギリギリまでやりとりしてた僕がまず悪いんですけど、その時は当時の担当にすごい怒って。「担当者出せ!」って集英社に電凸して。
――誰が担当者なのか知ってるのに、わざわざ会社を通して連絡したんですか(笑)。
伏線をいろいろ計算したのに、担当が「これでいいや」って伏線を全く無視したものを載せたのが許せなくて。
――『リコピン』の場合、内容を変えるだけじゃなく、「ジャンプ+」には載ってるのに、単行本には収録されなかった話が結構ありますよね。この前先生がTwitterアカウントに載せた「QR決済」ネタなんかは2万回以上もリツイートされてたのに、単行本には入ってなくて意外でした。
あれは本当に限定的なネタなので、コミックスに載せるのではなく、その時に消費すべきネタかな、と。ただ、コミックスに載せなかったのはもったいないなと思って、「7pay」がやらかしたときに「今だ!」と思ってTwitterに載せたんです。移籍してからそういう限定的なネタを強めてる感じなので、3巻でも「どれ載せようかな。これ載せていいのかな」っていうのが結構あって。
――いっそ未収録回だけをまとめた「裏1巻」とかどうですか?
載せられなかった回は、クオリティというより倫理的な問題が理由なんで、どうでしょうね。
――倫理的(笑)。ということは「大石先生の『リコピン』ノーカット無修正版が読めるのは「少年ジャンプ+」だけ!」ってことになりますね。
「幻の最終回」の秘密
――何より大きな未収録回としては、「ジャンプ」で連載されていた時の『リコピン』最終回も、単行本には収録されていないんですよね。単行本派なので、連載時の「幻の最終回」が読めなくてすごく残念だったんですが、どんな展開だったんでしょう?
「実はキュートピアは人類が滅びた後の遠い未来の地球だった」という展開でした。
――えっ、それは結構衝撃的な結末……!
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