米カリフォルニア州が交通事故により発生した野生動物の死骸を食べることを合法とする法律を発表しました。同州では少なくとも年間2万頭の鹿が事故に巻き込まれ捨てられてきたこともあり、複数の海外メディアが注目しています。スマホやPCから申請できるパイロットプログラムを2022年から施行予定です。
アメリカでは路上事故に巻き込まれた動物「ロードキル」の対応が州ごとに異なり、持ち帰り食べることを合法とする、または承諾を得れば合法とする州がある一方で、合法化していない地域もあります。地元メディアによると、カリフォルニア州の現行法では合法ではなく、最大1000ドル(約14万円)の罰金と懲役6カ月が科されています。
通称「ロードキル法案」と呼ばれる新しい法律により、申請すれば野生動物の肉を調理したり食べたりすることが可能になります。対象は意図しない車の衝突事故により生じた野生動物の肉に限定しており、適応される野生動物はシカ、エルク、プロングホーン、野生のブタです。
カリフォルニア州では過去6年間に8000件を超える大きな野生動物を巻き込む事故が発生しており、1500人以上のけが人、少なくとも24人の死者を出していると地元紙は報じています。また、カリフォルニア大学デービス校の推定では2万頭を超える鹿が交通事故により死んでいるようです。
ロードキル法案を推進するカリフォルニア州議会議員ボブ・アーチュレタ氏は、「一つの命を救い、一つの生き物を救うことになれば、私たちはこの法案により正しい行いをしたことになる」と意義を語っています。
「The Pew Charitable Trusts」という慈善団体では、カリフォルニア州ドーリスの自然動物監視員レニー・クレランド氏を紹介しています。1988年から小さな町で監視員を務めてきた彼は、税金を使って山道で死んだ鹿を溝へ投げ捨てることに疑問を抱き、動物肉を近隣の貧しい人々に配るプログラムを実施してきました。州の法律に反するものの、米国森林局職員や警察署長上司などと協力し、23年間で約1万6000キロの肉を運んだといいます。クレランド氏は「こんなに大量の肉を利用しないのは犯罪的です」と語っていますが、このプログラムは故意に動物を狙う恐れがあるとして2011年に閉鎖されました。
新しい州法により、不慮の事故により失われた野生動物の命が人々の生活に貢献することが期待されます。
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