「〇〇のカプコン」といったら何? という件と、「19XX」があまりにも面白すぎるという話:今日書きたいことはこれくらい(2/2 ページ)
そして唯一にして最大の問題点とは。
あまりにも考え尽くされた「19XX」の学習曲線
19XX。カプコンの名作「1943」の流れをくむ縦スクロールシューティング。ホントは「ないんてぃーんだぶるえっくす」って読むんですが、ファンには「いちきゅーぺけぺけ」などと呼ばれることも多いです。ぺけぺけ。ちょっとへべれけに似てますよね。
19XXは、その基本的な作りとしては、オーソドックスな縦シューだといってよいと思います。
プレイヤーは、P-38ライトニング・震電・モスキートの内から一機を選び、その戦闘機を駆って敵組織「アウターリミッツ」との戦いに臨むことになります。ステージごとに「超爆撃機『亜也虎改』」だの「超巨大戦艦『雷鳴』」だのといったかっこいい名前のボスがおり、ボスを倒すとステージクリアになります。ステージクリア時の演出がまたかっこいいんですよこれが。
私が思う「19XX」がカプコンSTG最高の一作である理由は、そのあまりにも考え尽くされた「学習曲線」です。
何の話かというとですね。
「初心者が、ゲームにどうやって熟達していくか」ということを考えます。最初のうちは、なんとか弾を避けて、雑魚敵をぴしゅぴしゅ撃ち落とすのが多分精いっぱいでしょう。何度かやっているうちに、勲章をポチポチ集めたり、ボスに弾を撃ちこむ楽しさを感じ取れるかも知れません。
で、インストを読むと、彼または彼女はある時、「マーカーミサイル」の存在に気付くはずなんです。
そう、マーカーミサイル。これが、これこそが、19XXを名作たらしめている、まさにその中核要素。
マーカーミサイルって要は溜め撃ちなんですけど、溜めた弾を当てると、当てた相手をしばらくロックオンして、通常の弾とは別に緑色の誘導弾がばかすか相手に襲い掛かるんですよ。
このマーカーミサイルがゲームにもたらしている要素って多分4つくらいあって、
- まず単純に、撃っていて超気持ちいい
- ロックオンしている間は画面のどこにいても相手にダメージを与えられるため、弾避けに集中しやすい
- 耐久力のある敵に当てれば当てるほどその後の展開が楽になるため、自然と「相手を選ぶ」という考え方が身につく
- そこからさらに、自然と「相手の出現パターンを覚える」「出現パターンに合わせた行動をする」というSTG攻略の基礎が身につく
という、もうこれでもかっていうくらい初心者に至れり尽くせりの要素満載なんですよ。
まず、単純にマーカーミサイルは撃っていて気持ちいい訳です。通常弾に加えた純然たる追加攻撃。緑色のすごげな弾が次から次へ相手に襲い掛かり、無関係な雑魚敵を片っ端からなぎ倒し、ボス撃破を強烈に加速する。
「撃っているだけで気持ちいい」「強烈なダメージで攻略も容易になる」というのが、まずプレイヤーへの報酬効果として非常に良質であることは言うまでもありません。とにかくこのゲームやってると、「マーカーミサイルを使い倒したくなる」というのがまず重要な前提なんです。
次に、「敵から軸がずれていても相手を攻撃することが可能になる」。これどういうことかっていうと、STGを初心者がやっていると、ハマりがちなのが「撃ちこむことに夢中で弾を喰らっちゃう」ということなんです。相手と縦軸を合わせていないと攻撃が出来ないけれど、縦軸を合わせることに夢中になっていると弾避けが出来ない。つらい。
しかし、マーカーミサイルを1発当てておくと、自機がどこにいても相手に弾が襲い掛かってくれる。結果、「いったん当てておいて後は弾避けに集中」という感じで、思考を切り替えやすいんですね。
3点目。マーカーミサイルは、相手を撃墜してしまうとまた溜めて撃ち直しになってしまうので、雑魚に当てても意味がないんですよ。ある程度耐久力がある敵に当てないと、あんまり効率的に使えない。自然と、耐久力がある敵を覚えて、それに当てたくなる。
「当てる相手を選ぶ」という学習が自然とインフラに備わっているんですね。
そして、4点目。これがまた19XXの絶妙な要素だと思っているんですが、19XXって、「マーカーミサイルを当てる相手」を実に有効に画面に配置してくれているんですよ。
例えば、画面の左右に耐久力がある敵が同時に出てくる。片方にマーカーミサイルを当てておいてもう片方に通常弾を撃ちこんでおけば、自然と両方ともさばくことができる。
例えば、耐久力がある敵が下から出てきて、画面上を動き回る。そいつにマーカーミサイルを当てておけば、自然と画面上を長時間誘導弾が暴れまわり、他の敵も自然と撃破している。
「マーカーミサイルを、うまく使えば使うほど楽になるよ!!」と言わんばかりの敵配置がめじろ押しなんですよね。初心者にマーカーミサイルを使ってもらおうと考え抜かれた配置。自然と、「相手の出現パターン」を覚えたくなる。これ本当に絶妙なんですよ。
STGって基本的に、「面白さを感じられる」までの距離がちょっと長いジャンルです。一度面白さを感じることができれば、その後はずぶずぶとハマることができるんですが、そこまでがちょっと長い。だから、開発者さんはあれやこれやの手を尽くして、「面白さ」のフックを用意して、プレイヤーに面白さを感じてもらおうとします。
19XXにおいては、「マーカーミサイル」というたった一つの要素が即そのガイドラインになっていて、マーカーミサイルを有効に使おうとしてみるだけで、自然と「相手の動きをよく見て」「相手を選んで」「弾避けをしつつ」「パターンを覚えて撃ち込む」という、まさにそのまんまSTGの上達ラインをなぞるような経路に乗ることができるんです。
マーカーミサイルというたった一つの要素が撃ち抜いたもの。それこそが、19XXが「名作」である最大の理由なんです。
上級者も熱くなれる奥深さ
もちろん19XXは、うまくなるごとに次から次へとさまざまな側面を表し、初心者のみならず上級者までズブズブとハメてくれます。
敵の撃墜率を高めていけばいくほど昇進していく階級システム。
階級が上がれば上がるほどボーナス点の倍率が上がり、勲章を集めてどーんと点稼ぎするのが気持ち良すぎる得点稼ぎ。
一方、死ぬと集めた勲章がパーになってしまうため、自然とノーミスクリアを目指したくなる求道感。
最初弾消しをした後、そのまま溜めることで攻撃力を上げられ、さらにもう一度弾消しができる、これも初心者に優しいボムシステム。
ボスの撃墜タイムがランクに反映され、張り付いて撃ち込みまくりたくなるボス戦。
難易度も序盤は緩めでありながら、後半はどんどん緊張感を増しながら歯ごたえのある難易度になっていきます。特に6面ボスの「アウターリミッツ」から7面に至る展開は、その難度と緊張感もあいまって、記憶に強く焼き付けているプレイヤーが多いことかと思います。7面開始の展開超熱いよな?
演出といえば、BGMが余りにもクッッッッソ熱すぎることも19XXの大きな特徴でして、時にハード、時に寂寞、時におしゃれと、さまざまな側面を見せてくれるBGMは全方位隙なく「100%名曲」と言い切ってしまいたくなる出来です。1面出だしの激しいギターのようなメロディから、6面道中の悲壮感あふれる重厚な展開、7面の激戦をくぐりぬけてのEDに至るまで、もうマジで全曲かっこいい。
特に印象的なのは、全体的に耳に残りまくるキレッッッキレのパーカッションでして、特に3面BGM「Dance of Green Gnome」の激しさあふれるノリノリのパーカスには一聴の価値があります。5面のジャズ風BGM、「City Light In The Black Strait」も超絶おしゃれで大好き。
唯一にして最大の問題点、それは……
さて。
ここで私は、皆さんに、19XXというゲームについての、唯一にして最大の問題点についてお話しなくてはなりません。
それは、19XXが、1996年に姿を現してから2020年の今に至るまで、まだ一度も「家庭用ゲーム機に移植されていない」ということ。基本的には現在19XXをプレイしようとしたら置いてあるゲーセンを探すか基板を購入するかしかなく、そのハードルはとても低いとはいえません。
もうですね、こんっっっっなに面白くて初心者にもおすすめで上級者にもやりがいがあって得点稼ぎが面白くってメカデザインがかっこよくってグラフィックの描きこみがすごくて曲が超いいゲームがですよ、なぜ、一体なぜ、今に至るまで移植されないのか?????? CPS2ってやっぱそんなに移植難しいのか????
いやいろいろと事情があるのは察するんですが、本当私、もし家庭用で19XX出たらアケコンと一緒に即ハード買いしますんで、カプコン様何とぞご検討のほど、よろしくお願いいたします。
ということで、今日の記事を一言でまとめると「19XXは速やかに、一刻も早く、日本全国1億3000万の民のために家庭用に移植されるべき」ということになりまして、他に言いたいことは特にありません。よろしくお願いいたします。移植さえされるならPCエンジンGTだろうが3DO REALだろうがハード買いしますから。
今日書きたいことはこれくらいです。
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