ベビーシッターの手配サービス「キッズライン」は、6月4日より男性ベビーシッターの新規予約受付を一時停止しました。キッズラインに登録していた男性ベビーシッターが、キッズラインを通じて預かった子どもに対する強制わいせつ罪で逮捕されたことを受けての対応です。
ベビーシッターによる虐待・性犯罪を防ぐ施策の必要性が認識されている一方、一律に男性ベビーシッターの活動を停止させるやり方には問題があり、批判の声が上がっています。
事件の経緯
キッズラインの報告によると、当該の男性ベビーシッターは2019年7月から11月までキッズラインに登録して活動していたとのことです。2019年7月下旬にはキッズラインの登録説明会、面接、座学研修、経歴チェック、身分証明書・資格証明書の確認がキッズライン社によって実施されており、活動開始後のクレームは全くなかったといいます。
しかし2019年11月中旬に警察からキッズラインに連絡があり、捜査の手が入ることとなりました。警察の捜査を機に、当該の男性ベビーシッターのキッズラインにおける活動は停止措置が行われたとのことです。その後当該の男性ベビーシッターは逮捕され、複数の余罪・逮捕歴があったことが確認されました。
男性シッター活動停止について
キッズライン社は事件発生後、安全対策委員会を社内に設置し、専門家との協議を行い、まず以下の安全対策を講じました。
- 24時間受付可能なサポート体制の構築
- サポートセンター人員の強化
- 初回登録時のみ実施していたベビーシッターの経歴・保有状況のチェックを、登録後も定期的に実施
上記の対策は、事件の報道が行われた直後の2020年5月3日に公表されたものです。
男性シッターの活動停止が実施されたのはその1カ月後となる6月4日であり、理由は以下のように説明されました。
弊社としましては、国や自治体との性犯罪データベースの共有が実現することや、安全性に関する充分な仕組みが構築されるまで、また、専門家から性犯罪が男性により発生する傾向が高いことを指摘されたことなどを鑑み、男性サポーターのサポート(家事代行を除く)を一時停止することといたしました。
キッズラインに登録しているベビーシッターは個人事業主(フリーランス)という扱いですが、キッズラインは「最大限補償して参る所存です」と表明しており、今回の決定によって経済的打撃をこうむった男性シッターには経済的補填を行う方針を示しています。
男性ベビーシッターの排除=性犯罪の排除ではない
しかし、男性ベビーシッターの活動停止は、果たして適切な判断だと言えるでしょうか。
確かに統計上、性犯罪の加害者は男性の比率が圧倒的に高いことは事実です。法務省の「犯罪白書」平成27年度版によると、性犯罪で有罪判決を受け、懲役刑になった受刑者1791名のうち、男性の割合は99.8パーセント(1788人)、女性は0.2パーセント(3人)でした。
しかし当然ですが、それは保育の場から男性を排除してよい理由にはなりません。重要なのは性犯罪の取り締まりであって、男性の取り締まりではないからです。保育の場における性犯罪を男性特有の行動のように扱うことは、男性以外による性犯罪の不可視化や、育児労働を女性の領域に押し込めることにもつながります。
SNS上では、「男性ベビーシッターへの偏見を助長することになるのではないか」という意見や、実際にキッズラインに登録していた男性ベビーシッターからの「信頼して自分を選んでくださる方のことを思うと涙が止まらない」という悲痛な声、またキッズラインを通じて男性ベビーシッターに依頼していたユーザーからの「私がお世話になっている男性ベビーシッターは誠実ないい人だったのに」という困惑の声が上がっています。
キッズラインは内閣府のベビーシッター派遣事業における割引券取扱事業者に指定されており、利用の促進に税金が投じられている企業の一つです。今後キッズライン側には誠実な対応が求められます。
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