通学路における「みち草」の意義についてフィールドワークを通じて研究した本『子どもの道くさ』(東信堂)が、発売から10年以上の時を経てSNS上を賑わせています。
きっかけになったのは、ライターの岡田悠さん(@YuuuO)が読者として投稿した「(本に出てくる)子どもが全然ちゃんと帰らなくて良い」という紹介ツイート。投稿には、同書に収録されているやんちゃな子どもたちが「壁のつたい歩きをする」様子や、「塀超えの抜け道を発見した」様子など、大人では思いもよらないようなコースで道くさをする写真が添えられていました。
『子どもの道くさ』は評論家の水月昭道さん(@syakusanjiki)が2006年に発表したもので、子どもの安全確保を偏重しすぎることで、かえって健やかな発達を阻害する側面があるのではないかと提起する内容。出版から長年経過していたこともあり、本はほぼ絶版状態。岡田さんは定価に近い価格で購入できたそうですが、ツイートが2万6000件以上のリツイートや、12万件以上の「いいね」を集めるほどの話題となったことで、Amazon.co.jp上では中古価格が10万円以上のプレミア値にまで高騰しました。
こうした盛り上がりを受けて、版元の東信堂が反応。重版の手続きを進めていることを明かし、著者の水月さんも「絶版状態であった本が動き出すという夢みたいな出来事」と、自身のnoteを更新しました。
水月さんはnoteで、執筆の動機などにも言及。国からの研究予算削減などにより、かつて可能であった“ゆとり”を前提とした研究が困難になっていることに警鐘を鳴らした上で、世間で根強い「役に立つことをやれ」という合理性を追求しすぎる発想よりも、役に立つかどうか分からなくても、「面白そう」を契機とした「道くさ」的な研究のほうが、結果的に有用性を浮かび上がらせることがあると強調しています。
東信堂に問い合わせたところ、重版分は8月11日ごろに刷り上がる予定とのこと。同社公式サイトには、各種通販サイトへのリンクもあるので、興味を持った人はチェックしてみると良いでしょう。
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