丸みのある車体、ピョンと伸びた屋根上のポールと懐かしいベルの音……。米国にレトロな路面電車が元気に走っています。
ここはボストンの鉄道路線「マタパン線」。ここに「PCCカー」と呼ばれる路面電車車両が、あのトロリーポール(集電のための稼働式ポール)を携えて活躍しています。
PCCカーは、米国内の路面電車であればどの路線でも運行ができるように、米国電気鉄道社長会議委員会(Electric Railway Presidents' Conference Committee)によって開発、規格化された路面電車車両です。1930年代に登場し、量産しやすい設計と性能の高さから1950年代まで製造されました。
もちろん21世紀の現在、既に多くのPCCカーは引退済みですが、マタパン線では1940年代製の車両が現役で運行。レトロな見た目に反して、なかなかの高速走行やすごい加速っぷりを見せてくれます。
マタパン線のPCCカーは運転台が片方にしかありません。そのため終点はループ線になっていて、車両はぐるーりと回ってUターンします。そんな終点のアッシュモント駅は開放感のある高い屋根の高架駅で、何だか日本の都市型モノレールの駅のようななかなか近代的な造り。レトロなPCCカーとの異色な組み合わせがたまりません。
なおそんなボストンのPCCカーも老朽化のため置き換え計画が進んでいるそうです。貴重なかわいい車両が走るのは残りわずかかもしれません。「まだ走っていたのか!」「間違いなくレトロな車両だ」と動画にもその姿を懐かしむ人のコメントが多く寄せられていました。
ちなみにPCCカーのライセンスで製造された車両は、チェコ・プラハの路面電車(関連記事)などで、そして日本でも1両だけ製造されました。都電5500形の5501号という車両です。
5501号は都電荒川線の荒川車庫前駅に隣接する「都電おもいで広場」に静態保存されています。PCCカーとはなんぞや、そもそも路面電車/都電とはなんぞや、と気になった人は訪れてみてはいかがでしょうか!
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さすが大迫力。でも向かっている先は……(悲)。