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【1億部突破を勝手に記念】『鬼滅の刃』はなぜここまで人々を引き付けたのか――ねとらぼ編集部&ライター座談会(1/2 ページ)

やいのやいのトークしました。

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 2020年5月に最終回を迎え、10月発売の22巻をもって累計1億部を突破することとなる『鬼滅の刃』。記憶にも記録にも残る作品となった同作は、なぜ人々をここまで引き付けたのでしょうか?

 同作の1億部突破を(勝手に)記念して、ねとらぼ編集部+ねとらぼに寄稿しているライターで、『鬼滅の刃』の魅力を語る座談会を行いました。作品内で『鬼滅の刃』がブレイクしたポイントはどこだったのか、「ジャンプ漫画」としての『鬼滅』はどういう存在なのか、『鬼滅』で描かれる「感情」とは――と、さまざまなテーマでやいのやいの語り合っています。オタクたちの飲み会にいるような気持ちでご覧ください。なお、コミックス未収録分(最終回含む)のネタバレはありません。

鬼滅
ついに累計1億部を突破する『鬼滅の刃』。勝手に記念したファンの座談会です

主に出てくる人たち

戸部 ねとらぼ編集部。好きな漫画は『レベルE』『魔人探偵脳噛ネウロ』

青柳 ねとらぼ編集部。好きな漫画は『フルーツバスケット』『恋愛的瞬間』

高島 ライター。好きな漫画は『ボボボーボ・ボーボボ』『マギ』『ドロヘドロ』

突然通り過ぎて去っていく人たち

いけや ねとらぼ編集部。ゲームが好き。

イッコウ ねとらぼ編集部。好きな漫画は『AKIRA』

高橋 ねとらぼ編集部。好きな漫画は『HUNTER×HUNTER』


『鬼滅』原作、どこからアツい?

青柳: ついに1億部を突破するオバケヒットとなった『鬼滅の刃』。私はアニメ19話の「ヒノカミ」が話題になってからアニメを見て、その後原作コミックスを読み始めた“おっかけ”派です。『鬼滅』って、爆発的人気に比例するように「どこがそんなにすごい?」という声が批判も含めて大きい作品だと思っていて、今回は序盤から吾峠先生を追いかけていたふたりに語ってもらいたいなと思っています。吾峠先生との出会いはいつですか?

戸部: 金未来杯エントリー作品の読み切り「肋骨さん」(2014年)が最初ですね。とにかく自分の世界を持ってる新人さんだなーと思って、2015年掲載の「蠅庭のジグザグ」で完全にファンになりました。早く連載してくれ〜ってずっと思ってた。

高島: 私は『鬼滅の刃』が初見で、那田蜘蛛山編からずっとジャンプ本誌で読んでいます。その後アプリや短編集で「文殊史郎兄弟」など一連の読み切りを見て度肝を抜かれました。読み切り作品の大ファンです。

戸部: 読み切り時代の吾峠作品には、「ごく個人的な話だからこその説得力」を感じていて。だから『鬼滅』が始まった時は、正直「人間VS鬼」って壮大な構図にちょっと肩透かしを食らったんですよね。蓋(ふた)を開けてみたら「遺族VS加害者」の話で安心したんですけど。

青柳: 単行本を一気読みしたとき、連載中にかなり雰囲気が切り替わっているな……という印象があって。「炭治郎VS鬼」ではなく、「炭治郎&鬼殺隊VS鬼」になっていく那田蜘蛛山編(4巻〜)あたりから一気に面白くなっていった感覚があったのですが、どのタイミングから面白さを感じていましたか?

戸部: 「鼓鬼」編(3巻〜)の「頑張れ炭治郎頑張れ!」「長男だから我慢できた」ですね。それまで「人の良い少年」だった炭治郎が「頭おかしいやつ」になった瞬間というか。こんな変な奴だったんだ! って。

青柳: 「鼓鬼」編は善逸と伊之助の初登場回でもあります。

戸部: 善逸という「ツッコミ」のおかげで、炭治郎が「ボケ」に回れるようになったのは大きい……。

いけや(通りすがり): たしかに善逸と伊之助が出てきてから楽しくなった!

鬼滅
3巻から登場する善逸。小学生人気も高いキャラクターです

戸部: あと、鼓鬼は動機が「承認欲求」というキャラなのですが、そこがうれしかったですね。僕、吾峠先生が描く「しょうもない理由で悪行に走っちゃう敵キャラ」が大好きなんですよ。「こんなことで人殺しちゃうのかよ!」っておかしさと、「でも分かるな〜」ってリアリティのバランスが絶妙で。

 読み切り作品の悪役も「アパートの上階に住んでる女の生活音がうるさいから殺そうとした」ってしょうもない奴なんです。しょうもないけど、確かに日常で一番ムカつくのって騒音トラブルだったりするじゃないですか。『ジョジョ』4部的な面白さというか。

高島: 「蠅庭のジグザグ」、名作ですよね。ジグザグのモノローグもなく、ジグザグには信念もないし、犯人の動機はジグザグと特に関係ないところで解決されてしまう(足音がうるさい→「厚手のカーペット敷いて足音にも気を付けます!」)。主人公の周囲のキャラクターが主人公の異能力にあまり興味を持たないことがあり、モブキャラひとりひとりに集中すべき事柄が別途設定されており、物語に動員されきらない。そこに作品世界の拡張と語りのずらしがある。この点こそが吾峠呼世晴作品最大の魅力だと思っているので、『鬼滅』では好きなところが失われているように思っています。

いけや(通りすがり): アニメ放送分+「無限列車」編(7巻〜)までというすごい中途半端な追いかけ方をしているんだけど、正直原作1巻の印象がいまいちだったのは覚えてます。もう数年ジャンプ漫画読んでないジャンプ弱者なのであんまりアテにしないで欲しいんだけど、最初はなんか主人公暗いし一見普通のバトル漫画だなーと。時代が大正なのが面白いなと思ったくらい。

イッコウ(通りすがり): 「『鬼滅』がすごいよ」と言われて読み始めたんですが、原作の序盤で挫折気味です。周囲の評判聞いても、漫画の序盤を評価してる人は本当に少ないような気がする。

いけや(通りすぎていった): 僕も「無限列車」編までで止まっているので、正直まだ柱の魅力がよくわかっていない……。

※本人より補足:後日、無事最新巻まで追い付いたそうです

戸部: いけやさん、言うだけ言って仕事に戻っていった……! 柱は登場の流れが美しすぎたんですよね。「那田蜘蛛山」編で義勇としのぶが助太刀に来たあと、得体のしれない9人の激ヤバ集団として登場させる。そして7巻からの「無限列車」編で煉獄の活躍と生き様を描き、「かっけえええ! ほかの柱にも期待しちゃうぜ……」とさせた。あと、鬼は無惨に改造されたこその狂気が多いんですけど、柱の面々はナチュラルボーン狂気なんですよね。

高島: 流れが美しかったというのは確かに。煉獄さんの初登場はめちゃくちゃ強かった。あと宇随さんは登場当初ものすごい美形に描かれていて、印象が鮮烈でした。

戸部: あのメンツで悲鳴嶼行冥さんが1番強かったりとか、鬼殺隊員同士の人間関係だったりとか、そういうおいしいネタを過不足なく調理し切ってラストバトルに突入したのもすごいと思います。

鬼滅
9人の“柱”たちの登場は序盤の大きな盛り上がりのひとつ。アニメ第1期も終盤に登場。公開を控えている劇場版は柱のひとり・煉獄が活躍する

高島: 余談ですがTikTokでの『鬼滅』ブーム、というか「柱ブーム」はすごくて、「だから柱である俺(私)が来た」からスタートする声マネ(「柱チャレンジ」)をはじめとして、大量の自撮り・声マネ動画や、自分でキャラクターを創作した“オリジナル柱”のイラストもあふれています。

青柳: 「占いツクール」の名前変換機能を使った名前変換小説(夢小説)もすごい人気でしたね。ランキングを席巻していた。

イッコウ(通りすがり): 3巻以降も読むか……。

高橋(通りすがり): とりあえず8巻、できたら上弦の鬼が集結する12巻までは読むべき。自分がちゃんと面白いと思ったのは柱たちがそろうところ(6巻)。上弦の参VS煉獄(8巻)から作品のステージが上がったと思った。

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