額縁の中の油絵が動画のようにぐるぐると回転する絵がなんとも不思議で魅了されます。多摩美術大学の統合卒展2021に展示された作品。
壁に掛けられた額縁の中に、油絵が飾られています。描かれているのは、カモの剥製やリンゴ、ガラスビンなどがテーブルの上に並ぶ様子。一見するとオーソドックスで落ちついた雰囲気のあるすてきな絵画ですが、足元の踏み台に、不思議な仕掛けが用意されています。
鑑賞者が踏み台に乗り、再び絵の方へ目をやると、絵画がパラパラアニメのように動いているじゃありませんか! まるで対象物が回転テーブルで回っているかのような、不思議な感覚を楽しめます。
踏み台を降りると、絵画の回転は止まり、普通の油絵に戻ったようです。作品名は「回転する静物画」。作者のふじまきは頑張る(@maki_togo)さんは、創作の意図について「アナログとデジタル、ひいては、油絵とディスプレイの融合を図っています」と投稿していますが、なぜ動いて見えるのかとても気になります。
ふじまきさんに伺ったところ、仕組み自体はとてもシンプルで「踏み台に乗ると映像が再生される」とのこと。45枚の油絵を描き、撮影したものをコマ撮りアニメーションにしたといいます。踏み台に乗っている間、スイッチが押されて、映像が再生され、踏み台から降りると再生が止まるというわけです。
テーマである「ディスプレイと油絵の融合」を実現するためにもこだわりが。額縁の中にあるのはディスプレイなので、展示されている絵は実物ではなく映像。ですが、高解像度でマットな質感のモニターを使用したり、油絵を撮影した照明と展示会場のライティングを統一したりすることでディスプレイに見えないようにしています。さらに、元となった油絵の背景やテーブルクロスのマチエール(絵肌)を立体のようにしたりと、本物の絵画に見せるための工夫が随所に込められていました。
作品を前にして、思わず「どゆこと???」とつぶやいてしまいそうな、不思議な感覚を楽しめそうな作品です。
画像提供:ふじまきは頑張る(@maki_togo)さん
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