【ライター望月の駅弁膝栗毛】(初出:2020年12月1日)
終着・新大阪を目指して快走する、283系電車の特急「くろしお」号。
白浜や紀伊勝浦から温泉の思い出、新宮や紀伊田辺から熊野古道の思い出を乗せて、カーブに強い振り子式電車の性能を活かし、和歌山市の郊外を駆け抜けます。
283系電車は、平成8(1996)年に「スーパーくろしお(オーシャンアロー)」として誕生。
「オーシャンアロー」を経て、平成24(2012)年からは「くろしお」に愛称が統一されました。(参考)JR西日本ホームページほか
世界文化遺産として人気の高い、いわゆる「熊野古道」。
田辺から本宮への「中辺路」、田辺から海沿いに那智・新宮を目指す「大辺路」、高野山から本宮への「小辺路」、そして伊勢神宮と熊野三山を結ぶ「伊勢路」が構成資産です。
なかでも、熊野那智大社への途中にある「大門坂」は、紀伊勝浦駅からの路線バスでもアクセスしやすく、鉄道旅派の方でも、比較的気軽に訪れやすい「熊野古道」ですね。(参考)和歌山県世界遺産協議会ホームページほか
熊野那智大社と共に世界文化遺産となっている「青岸渡寺」と「那智大滝(一の滝)」。
本堂後方の三重塔を望む場所は、那智の滝のビューポイントでもあります。
天候に恵まれた日には、青空の下、流れ落ちる滝の飛沫の白と三重塔の朱色、そして、山の緑が映えて、南紀の旅の忘れられない瞬間となることでしょう。
私は“三度目の正直”で、ようやく雲のない日に、那智の滝を拝むことができました。(参考)那智勝浦観光機構ホームページほか
こんな風景を思い浮かべていただきたい駅弁といえば、「熊野牛の巻寿し」(800円)。
15年あまり前、西日本エリアの「駅弁の達人」キャンペーンを機に誕生した駅弁です。
和歌山駅弁「和歌山水了軒」が製造・販売する駅弁のなかでも、近年は若い世代はじめ、アクティブな人たちに人気を集めていると言います。
黒いパッケージにも、三重塔をイメージした風景が描かれていますね!
【おしながき】
- 熊野牛の巻寿し(酢飯、熊野牛の牛肉煮、カリカリ梅、わさびの葉)
- ガリ
平安時代中期ごろ、京都から荷牛として熊野へやって来た牛がルーツとされる「熊野牛」。
黒いパッケージを開けると、食べやすく、ひと口大にカットされた巻寿しが現れました。
和歌山水了軒によると、酢飯に負けないよう、熊野牛弁当の牛肉より濃いめの味付けにしているそうで、細かく刻まれたカリカリ梅の心地よい食感と相まって、よく箸が進みます。
“山歩き”となりやすい熊野古道の旅には、ピッタリの相棒となってくれそうですね。
「Go To トラベルキャンペーン」を活用して、存分に満喫できた和歌山の旅。
人の少ないエリアに足を運んだこともあり、ゆったりとした時間を過ごすことができました。
感染症リスクの低い方なら、「人があまり行かない場所」、「ピーク時間をずらした旅程」、「少人数で緊張感のある行動」を守って、日本の旅文化を引き続き応援したいもの。
レールの音に耳を傾けながら、列車の揺れに身を委ねる時間が、また愛おしくなりました。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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