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2020年初頭、フランスでは何が起こっていたのか? ある1人の留学生が漫画でつづる「新型コロナ」感染拡大の記憶(2/2 ページ)

ヨーロッパ圏でのコロナの受け止められ方は……。

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史料調査のためスイスへ

コロナ 帰国日記

 2月のバカンス(ヨーロッパでは次々に長期休暇があり、その合間に授業がある)でどこに旅行するかということが、友達同士で話題に上がりつつあった頃。2月26日に、在リヨン領事館から注意喚起メールが届きました。ヨーロッパで、特にイタリアを中心に流行が本格化し始めたのです。

 これを皮切りに、次々と日本の指導教授からのフランス調査旅行中止の連絡や、安否確認、情勢を心配するメールが届きます。日本でも学会などが軒並み中止されつつあった時期でした。

 そんな中迎えた、2月29日〜3月8日のバカンス。かなりの人の移動が見込まれるため、非常に悩みましたが、私も史料調査のためスイスへ行くことにしました。スイス(ジュネーヴ)にはWHO本部があり、さらにEU加盟国ではないことも相まって、国境も早めに封鎖される可能性があると考えたからです。また、今行っておかないともうしばらく行けなくなるかも! という焦りもありました。

 結局、私のこの予想は外れました。スイスどころかヨーロッパ全体の一斉国境封鎖という、はるかに大変な事態が、この数週間後に起こったのです。

コロナ 帰国日記

 スイスで宿泊したBNB(民泊)では、リビングのテレビでもずっとコロナ関連のニュースが流れ、あらためて状況の緊迫を感じました。でも、BNBの管理人のマダムは、全くためらわずにビズ(頬を合わせるあいさつのキス)をしてくれました。「フランスでは両頬に2回だけど、スイスでは3回するのよ!」と教えてくれつつ……。

 その他、一緒に泊まっていた他のゲストや、図書館の職員さん、駅の酔っぱらいすらも優しく、おかげで無事に調査旅行を終えることができた私は、リヨンへの帰途につきました。「コロナが収まったらまた来たいな〜!」なんて能天気なことを考えながら……。

 状況が急変したのは、このバカンスから帰った直後でした。外務省が設定する感染症危険レベルが引き上げられ、大学が休講となり、留学生は次々と帰国。ついには、外出制限措置が取られる事態に発展します。

 今思えば、私と同じように「理論的に」「大丈夫」と判断し、多くの人がバカンス旅行に出かけた結果、大流行が引き起こされたのかもしれません。人間の心理には、危険や異常を小さく見積もり、日常の延長を生きようとする「正常性バイアス」が備わっています。楽観的な考え方が良い結果をもたらすこともありますが、欧州のコロナ大流行においては、むしろ大きなマイナスに働いたようです。

第2回に続く

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