2020年3月、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行が原因で、多くの留学プログラムが中止になり、緊急帰国を余儀なくされた学生が続々と日本に帰ってきました。
かくいう私もその1人。帰国直後は、念願の留学がこんな形で終わってしまったことがショックで、なかなか筆が進まなかったのですが、ようやく当時を振り返ることができるようになってきました。
この連載では、マンガと文章でコロナ流行当初の雰囲気や状況の流れをお伝えします。
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2月のバカンス明けの緊迫
2月末〜3月初頭の休暇が終わり、大学の授業が再開されたころの出来事です。コロナは怖いけれど、学生である我々の目下の敵は、3月末にせまる期末試験。ところが授業開始直後の3月10日、日本外務省が、フランスを感染症危険レベル1(=十分注意してください)に指定しました。この影響で、いくつかの日本の大学が留学プログラムを中止し、留学生たちに帰国要請を出しはじめました。
出身大学や、参加していた留学プログラムやビザの種類にもよりますが、都内某私立大学から留学していた友人たちは危険レベル1が出された日に「来週の飛行機で帰国するように」との指示を大学から受けたそうです。
留学生を帰国させる決定をしたのは日本だけではありませんでした。アメリカ、アジア、EUの他の国からきている留学生なども、次々に荷物をまとめて帰国しているようでした。おそらく、大学の要請を受ける前に、自主的に帰国する決断をした人もいたのではないでしょうか。
私が住んでいた学生寮(フランス人学生も留学生も入居している)でも、帰国の準備をする学生たちが目につき始め、廊下やロビーでは帰国するか否かを真剣に話し合っている学生たちの姿がみられました。
私自身は、こうした状況の急変にとまどいつつも、妙に落ち着いた気持ちでいました。自分の出身大学からは、まだ帰国の要請は出ていなかったし、大学院生だったので、取るべき単位もなく、就活する予定もない。「日本に帰ってもすることないし、私は帰国しなくていいかな〜」などと考えていたのです。
大学が閉鎖に
そして、3月14日土曜日の朝。コロナの感染拡大を防ぐため、月曜日から大学が休講になるという知らせがきました。この時の私の気持ちは「コロナが怖い」よりも、「定期試験のために準備してたのに!ひどい!」「でも、しばらく勉強する時間ができるぞ!ラッキー」というものでした。
最後の外食になった中東料理
とはいえ、不安な状況には変わりなく、勉強もなかなか手につきません。癒やしを求めて、同じく日本人留学生の友達と猫カフェへ行くことにしました。リヨンには2軒の猫カフェがありますが、1軒目は満席だったので、2軒目へ。猫を愛でながらの話題は「フランスが、イタリアみたいに外出禁止になったらどうしよう?」「学校もお店も閉まってたら、どうやって過ごそうか? Netflixに加入すべき?」「せめて試験を受けて、単位をもらってから帰りたい」「滞在を続けるために、どうやって大学とか先生とか親を説得しようか?」などと言う、ぼやき&愚痴&妄想。このときは、十分な情報もなく、見通しの立たない状況のなかで、少しでも気分を晴らしたかったのだと思います。
その後、夕食をとるために立ち寄った中東料理レストランで、当日深夜からのバー・レストランなどの休業要請が出されたことを知りました。さらに、翌々日の16日にはマクロン大統領が演説をし、コロナ対策について詳しく説明するとのこと。
店員さんに「このお店も閉めるんですか!?」と聞いてみると、意外にも「こんな状況じゃしょうがないから、バカンスだと思ってしばらくお休みするよ。明日から車で南仏にいくことにしたよ〜」とのんびりとした返事がかえってきて、少し安心したのでした。実際にはこの後、緊急の理由がない長距離移動が禁止になってしまったので、彼はきっと南仏には行けなかったでしょう……。
ついに帰国要請の予告が
そして翌朝15日、ついに私の派遣元である日本の大学から「外務省の感染症危険レベルが2に達した段階で交換留学プログラムを中止し、帰国を要請する」という予告メールが届きました。この時ようやく、「もしかして私も帰国させられるの!? 他の留学生たちみたいに!?」という不安が実感として襲ってきました。
はたして、私は帰国させられてしまうのか? それとも、意地でもフランスに残るのか? 第3回に続きます。
<第3回に続く>
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