テレワークの一般化によって期待される、オフィスワーカーの新たな働き方と観光業ビジネスの可能性「ワーケーション」の需要増を見込み、昨今、観光地を抱える多くの自治体や街、施設でワーケーション需要に向けた整備が急速に進んでいます。では「実際にやる人」の認知や意向も進んでいるのでしょうか。
Link Lifeとクロス・マーケティングがこのほど、それぞれのワーケーション認知度や利用意向についての調査結果を発表しました。
社会人のワーケーション認知度は51.2%、そのうち8割は「興味がある」
Link Lifeのワーケーション認知度調査(2021年2月にネットで実施/集計対象:20代以上の社会人750人)によると、2021年時点の社会人ワーケーション認知度は、51.2%が「知っている」、35.9%が「どこかで聞いたことはある」と回答。そのうち、ワーケーションへの興味についても「ぜひやってみたい」(42.1%)、「やや懸念点があるものの、興味はある」(41.6%)と回答者の多くが多少の興味を持っていました。
年代別では、40代の87%をトップに、30代の84.2%、20代の83.4%が「ぜひやってみたい」「やや懸念点があるものの、興味はある」と回答。50代以上は78%と管理職世代の意向は下がる傾向にありますが、幅広い年齢層で「関心はある」ことが分かりました。
ワーケーションの課題は「高速なネット環境があるかどうか」「余計に費用がかかりそう」「気が散りそう」
ワーケーションに感じる可能性には、「集中して仕事ができるようになること(51.5%)」「観光などを楽しみ、リフレッシュできる(34.7%)」「自粛・在宅ワークの気分転換になる(25.6%)」「仕事の新たな着想を得られる(21.6%)」が上がりました。旅先ならではの気分転換ができることに効率化の可能性を感じているようです。
対して、59.6%が「ネット環境の確保が難しい」、30%が「万一の場合のトラブル対応がすぐできない」、29.6%が「実施に費用が掛かる」、24.4%が「気が散ってしまい、仕事に集中できない」など、ワーケーションにおける懸念項目も多く上がりました。
利用意向は「2020年とあまり変わっていない」が、外出制限解除と、出先や企業側の環境整備次第で意向は上がる
クロス・マーケティングと山梨大学が実施した「ワーケーションに関する調査(2021年3月度)」(2021年3月23日〜29日実施/集計対象:全国の20〜64歳就業者7万6834人)によると、直近1年間のテレワーク経験者は39.6%、そのうちリゾートやホテルなどで実施したいわゆる「ワーケーション経験者」は6.6%でした。
なお2020年8月の調査では「テレワーク経験あり」が36.3%、そのうち「ワーケーション経験あり」が7.4%でした。同社は「コロナ禍でのリモート環境の整備に伴い、テレワークは徐々に浸透してきていることがうかがえる。しかしワーケーションについては、外出自粛や移動制限などの影響が続いていることもあり2020年から状況の変化はみられず、まだこれからといった結果となった」としています。
ワーケーション先で最も多かったのは「自宅や会社から離れた観光地(ホテル・旅館・キャンプ場など)」。観光地のリゾートホテル、ビジネスホテル、シティーホテルなどの既存の宿泊施設をそのまま仕事場所に選ぶ人、ワーケーション需要に向けて整備された「コワーキングスペース」などの施設を活用した人で大多数を占め、「リフレッシュできて仕事の効率が上がった」「整理整頓されたホテルでの作業でとても集中できた」など、ポジティブな意見が多い傾向が見られました。
ワーケーション先での仕事内容は、9割以上が「普段と同じ」と回答。このときの平均労働時間は「5.4時間」といつもの業務時間よりやや短い傾向にありました。
その一方で、「オン/オフの切り替えが難しい」や「コミュニケーションが円滑にいかなかった」「ネットワーク環境が意外とネック」などのネガティブ感想も散見されました。
なおワーケーション経験者は、6割が「会社に“制度”として既にある」人。またワーケーション経験者の管理職以上も7割が実施意向を示し、6割が会社としての制度導入を提言する意向があることも分かりました。
同社は「コロナ禍でテレワークが徐々に進む中、ワーケーション導入の整備はまだこれからといえるものの、”新たな働き方”として働き手にも、需要低迷が続く観光業界にも明るい兆しがみえる結果となった」としています。
(少年B)
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