国内初「AI冷房」って何だ? 2021年度登場、JR東海の新型通勤電車「315系」 鉄道ファン目線でチェックしてみた(1/2 ページ)
旧国鉄時代の車両はなくなりますが、ハイテク機能で快適そうです。
東海旅客鉄道(JR東海)は5月18日、新型通勤電車「315系」のインテリアデザインと車内設備を公開しました。
315系電車は、2021年度の順次投入を予定する新しいJR東海在来線の通勤型電車です。2020年1月に新製を発表(関連記事)、通勤電車211系、213系、311系が更新期を迎えることを背景に刷新を進める計画。運行線区は名古屋エリアの中央本線、東海道本線、関西線と静岡エリアの東海道本線が予定されています。
車内のデザインコンセプトは「優しく安心感のある快適な移動空間」。多くの人が安心・快適にして乗車できるよう、バリアフリー設備やセキュリティ機能を強化し、1人あたりの座席幅拡大による座り心地の向上、天井を高く、開放感も得られる色使いを用いた車内空間の演出などを取り入れます。
今回は「車内は“東"っぽく、車体は“西"っぽい」などという声もある315系車内設備の特徴を鉄道ファン目線でチェックしていきましょう。
国内初「AI冷房」を搭載 AI冷房って何だ……?
315系には、国内初導入とうたう「AI冷房」なる設備を新たに搭載します。
こちらは、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による自動学習と制御最適化機能を持つ、なかなかハイテクな冷房装置のようです。設定温度を自動で維持するスタンドアロンの温度制御機能や乗務員による手動調整に加えて、人工知能と通信を活用した動的な温度・湿度の管理を実現します。
AI冷房は、315系全車両の温度、湿度、乗車率などの車上データを管理サーバに集めて、これまでの乗務員による手動補正学習データなどとも組み合わせてAIで解析し、それを定期的に車両へフィードバックすることで「その日、そのときに最適」な冷房の制御を行います。
冷房装置個々の動作状況もオンライン監視し、故障を予測してその予兆段階でメンテナンスすることで「ごめんなさい。真夏に冷房故障しました」といった乗客の不便も未然に防げるとしています。
「大勢乗ってきて急に暑くなった」とか「クーラー効きすぎで寒い」とか「にわか雨で車内が急に蒸し暑く不快になった」などの経験があると思います。これまで多くの部分で人の感覚や経験で制御していたところを、通信とIT(ICT)を用いる動的な自動制御によって「いつでも快適な車内空間」を提供できるようにするイメージです。通勤も旅も、より快適な車内空間が期待できそうです。
遮光ガラス、車内ディスプレイ JR東海の在来線で初採用となる設備も
315系では、窓ガラスに赤外線と紫外線をカットする「遮熱・遮光ガラス」を採用します。これにより、従来の車両にあった「カーテン」は撤去されます。
従来車両の風情のようなものは薄くなり、ネットにも「(前例があって)それでもまぶしいので、ブラインドは欲しかった」などの声も上がってはいますが、「日差しがまぶしい」の不快はこの遮熱・遮光ガラスで低減し、感じなくなるほどの性能があるからとの判断なのでしょう。
このほか、列車の情報や運行情報などを案内するフルカラーの情報表示ディスプレイは1両あたり6カ所、ドア上に設置。セキュリティも非常通話装置を1両あたり3カ所、防犯カメラを1両あたり5カ所に設置して強化しています。
車いすスペースの設置や優先席付近床面の塗り分け、全編成に車いす対応トイレ設置、車両とホームの段差を縮小する車両床面の工夫など、バリアフリー設備も拡充させます。
このあたりは首都圏や関西圏のJR車両では既に採用例の多い設備ですが、JR東海の在来線でも315系によってこれらもグッと拡充されます。
JR東海の通勤電車最長となる8両編成で活躍?
JR東海は315系を、2021年度から2025年度にかけて総計352両の製造を計画しています。
車両製造を行う日本車輌の資料によると、2021年度に7編成56両を製造予定です。1編成あたり8両の計算。「8両編成」が登場するとJR東海の在来線としては最長となります。
2021年5月現在、東海道本線では全ての列車が、中央本線では一部の列車がクロスシート車両で運行しています。立席人数の少ないクロスシート車両は、旅にはいいもの(関連記事)ですが朝夕の混雑には不向き。315系が投入されるとロングシートと長編成を生かす収容力で混雑緩和にも大きく期待できそうです。
ICTを利用した新しい設備、今望まれている機能をふんだんに取り入れたJR東海の新しい通勤車両315系電車。どんな編成となって、いつから、どの路線を走るのか、運行開始が待ち遠しい車両です。
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