当時のスター「テレビカー」、仰天ギミックの通勤電車「5000系」 京阪電車で感じる「昭和あの頃」ぶらり旅(1/2 ページ)
昭和な人も、昭和を知らない人も……。京阪電車で愛でる「昭和」をお届けします。
2021年3月、国鉄型特急車両「185系電車」(関連記事)が定期運行を終了。また1つ昭和・国鉄時代の名車が惜しまれながら引退しました。社会に目を向けてもここ1年、私たちの日常生活、特に「移動」の状況も大きく急速に変わっています。
移り変わりが激しくますます昭和が遠くなっていく今日この頃ですが、日本には昭和が残る鉄道路線がまだまだ残っています。今回は大阪と京都を結び、激動のあの時代にユニークな電車を送り続けた京阪電気鉄道で愛でる「昭和」をお届けします。
高度経済成長期の申し子、豪快すぎる“座席昇降”ギミック「5000系電車」 引退間際の勇姿をぜひ
昭和時代、とりわけ高度経済成長期の風物詩といえば「ギュウギュウ詰めの満員電車」。そんな高度経済成長期に登場し、活躍したのが5扉車の「5000系」です。
5000系は1970(昭和45)年に登場した日本初の本格的な多扉車です。当時、京阪本線でもラッシュ時の混雑が深刻化していました。しかし当時の電圧は600Vで、8両編成にするにも難しい状態。「両数を増やせないならば、扉の数を増やそう」ということで、5000系はピンチに登場する中継ぎ投手のような役割を果たしました。
そんな5000系はまだ現役で元気に活躍しています(2021年4月現在)。京阪電車では珍しい四角いお顔が今ではユーモラスに映ります。電車に詳しくなくても「四角い顔」か「5つ扉」を覚えておけばすぐに「5000系だ!」と分かります。
5000系の最大の特長は片側に5つ扉があることです。しかしそのうち2つの扉は閉まったままです。座席を昇降することにより、朝ラッシュ時間帯は5扉で、それ以外の時間帯は3扉で運行する超器用な電車なのです。残念ながら5扉での運用は2021年1月29日で終了し、現在は3扉車として運行されています。
車内は通勤電車らしくロングシートです。なぜかドアの前にも座席があります。ラッシュ時はこの座席が上がって収納され、扉も使えるようになります。「ウィーン」音とともに2扉分のロングシートが“座席ごと”昇降する様子はなかなかシュールな光景でした。この仕組みを考え、実現させた技術者に本当に脱帽します。
5000系は時代の流れで廃車が進み、現在は1編成しか残っていません(2021年4月現在)。
そして……5000系は、2021年6月に完全引退する予定となっています。
5000系が廃車となる理由として挙げられるのがホームドアです。5000系はその特殊形状がゆえ、ホームドアと位置が合いません。
令和時代に必須とされる主要駅のホームドア設備により、昭和な高度経済成長期の電車は適合できずに引退する……。時代の流れを感じずにはいられません。
今回は乗った5000系は「区間急行 萱島行き」。区間急行は京橋を出発すると守口市まで止まりません。過去に何回か乗ったのは全て普通列車。区間急行として複々線区間を時速90キロで疾走する様子はとても頼もしいものでした。
京阪らしい(!?)誇らしげな昭和の珍装備「回転グリル」
5000系の車内を見回すと、天井に不思議な丸型の装置を見つけました。
これは「回転グリル」という装置。簡単に言ってしまえば送風機です。暑い時期になると「回転グリル」自体がグルグル回り出します。5000系は全車冷房車ですが、クーラーの冷気を車内に満遍なく届けるためにありました。
回転グリルの真ん中には「京阪の社章」が誇らしげに取り付けられていました。機能としてはよくある扇風機でいいのかもしれませんが、このあたりのセンスが「京阪らしいなあ」と思うのです。なお回転グリルは5000系のほかに2200系などにも設置されています。
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