ずんの飯尾和樹さんやMEGUMIさん、神尾楓珠さん、芋生悠さんらが出演するテレビCMなども目を引くボートレース界は近年、さまざまな施策により人気と売り上げを順調に伸ばしています。同CMで神尾さん演じる養成員のモデルとなっているのが、A1級選手として活躍する永井彪也(ながい ひょうや)選手です。
端正な面持ちで、いわゆる“イケメンボートレーサー”として人気と実力を兼ね備える永井選手は、過去ねとらぼでも取り上げたボートレース界の強カワニューヒロイン・大山千広選手とともに、ボートレース界の顔としてピックアップされています。本稿では、そんな永井選手にインタビュー。コロナ禍におけるボートレース界の近況や、そんな状況下で選手としての気付き、そして26日からのSGボートレースオールスター出場についての思いを聞いてみました。
お客さんがいてもいなくても、パフォーマンスを充実させたものにしたい――コロナ禍での影響
―― 2020年以降続くコロナ禍はボートレース界にも無風でないと思います。永井選手からみたコロナ禍におけるボートレース界の近況を最初に教えていただけますか。
永井 僕ら選手への影響を全体を俯瞰していうと、お客さんを入れず無観客開催するようになったことがコロナ禍で一番大きく変わった点です。
往時は週末や祝日はもちろん、平日でもたくさんの方がレース場に足を運んでくださり、また入り待ち出待ちも可能でしたし、その他のファンサービスにもたくさん参加させていただきましたが、そうしたものも全て中止。選手とファンが交流する機会が激減し、直接声を聞くことがなかなかできなくなってしまいました。
一方で、SNSなどを介してコメントやファンレターをいただいたり、コロナ禍に応じた選手の応援の仕方があるとも感じました。僕ら選手としても、お客さんにレース場に来ていただけない分、もっとよいパフォーマンスをして貢献しようという意識の高まりがあったように感じます。
―― モチベーションにも相当影響がありましたか?
永井 最初はものすごく違和感がありました。歓声によって自分のテンションが上がってきたりもするのですが、スタンドにお客さんがいないと練習のような雰囲気でレースが始まりますから。でも次第に、お客さんがいてもいなくても、パフォーマンスを充実させたものにしたいという意識になりました。
―― そんな中、ここ1年を振り返って、永井選手が一番印象的なレース、あるいは出来事は?
永井 難しい質問ですね。逆に言えば、先ほどの話に連動しますが、いっとき、お客さんがレース場に入れるようになった時期があり、僕もその時期のレースで、お客さんがレース場に来て観戦していただけることがものすごくありがたいことだったのだとあらためて感じました。
強みは“平常心”
―― 永井選手が2019年にヤングダービーを制し、デビュー8年目でG1初優勝となったのは1つの転機といえます。上のグレードになるほど当然強い選手も集まってくるわけですが、強豪がひしめく中で、今現在自身の強みはどこにあると感じますか?
永井 2019年にヤングダービーを優勝したときから大きく変わったこともありますが、自分の強みを考えると、やはり一番は冷静さを自分で保つというか、平常心。気を抜きすぎず、とはいえ高ぶりすぎず。レースには一定の気持ちで臨み、自分の出せる精いっぱいのパフォーマンスに近づけようという意識でいることではないかと思います。
―― このインタビューにあたって過去のインタビューなどを確認しましたが、高頻度で“平常心”を口にされていました。平常心に近づけるべく鍛えたり、あるいは高めたりするため永井選手の場合はどういうアプローチをとっているのでしょう。
永井 僕の場合は“自分との対話を常に行うこと”を意識します。今自分はどう感じているのかを自分でちゃんと理解する。あとは体がどんなふうに動くかとか、頭はちゃんと速く回転しているかとか、そういったことを日々自分で把握するようにして、ちょっと緊張しそうなレースでも、どんな対応がとれるかなど自分の中でずっと対話しながらやっています。人によっていろいろな方法があるでしょうが、上手に自分を変えていくような取り組みが自分には合っていました。
―― アプローチは試行錯誤されたのでしょうか。
永井 そうですね。今回はめちゃくちゃ気を入れてやってみようとか、ちょっとだらっと行ってみようかなとか、いろいろ試したこともありますが、そういう風に思っている時点で微妙というか、正常じゃない考え方だなと。
デビューしたてのころは右も左も分からず、いろいろやってきましたけど、そのときはまだそういうことにあまり気づけていなかった。もともとレースに臨むことに緊張しないタイプでしたが、それは緊張感を持てない、緊張感がない状態だと気付き、なるべくそういう意識を持つようにしてからはレースの姿勢も変わってきたかもしれません。
―― 以前大山選手にもインタビューをさせていただいたのですが、2021年のボートレースのCMのいわゆるアイコンのような形で2人が起用され、ボートレース界の顔になっているのを感じます。
永井 そうですね。CMに登場する養成員のモデルとして扱っていただけるのは光栄なことで、うれしいです。ただ、そう扱っていただくことに僕はどちらかといえば、成績を残さないと情けないなと感じるタイプ。成績やレースもしっかり成果を残していかないといけないし、いきたいです。
―― それはつまり、永井選手自身はここ1年くらいの成績もしくはレース結果に満足していない部分があるということですか?
永井 はい、全然至らないですね。ボートレーサーというのはものすごく大まかにいえば調整が大事で、調整というのは夏と冬の調整に大別できます。1年を通して毎回いいエンジンを引けて、毎回調整が合うことはほぼないので。1年でみればフラットまたは右肩上がりなら最高ですが、調整は難しいので。
―― ずっと平たんな感じではなく、山や谷があると。
永井 そうですね。谷に入ってしまったときにどう対処し、早く上がっていけるかが鍵というか。レースについていえば、少し調子が悪かった時期は、いつも通りのレースに戻すにはどうしたらいいかというのと、あとは最近の調整の悪さだったり、怠惰になっている部分はないかだったり、何か間違えていることがあるんじゃないかと試行錯誤し修正していくので、そういうときは優勝とか大きいことは考えずリラックス気味にいったりもします。
―― この時期は1年のスパンでいうとどういう時期にあたりますか?
永井 今は、寒い冬場の時期の調整から暖かい夏場の調整という時期に切り替わり始める時期で、エンジンにもちょっと変更があったりとかするような時期。ここで調整をバシッとつかみだすと、リズム的に登っていきやすいです。
ファンタジスタに――2年連続出場のボートレースオールスターへの思い
―― 天候不良で初日が中止順延となったSGのボートレースオールスターが26日から開催されますが、永井選手は2年連続の出場です。今のお話を踏まえてもこの時期のボートレースオールスターは重要なレースの1つといえますよね。
永井 2020年に初めてSGに出させていただきましたが、ファンの方に選んでいただいたおかげで出られたSGでしたので、そういうものを背負って戦っているつもりで臨み、得られたものも多かったです。レースに勝てる要素をもっと増やして、また来年選んでいただけるなら、情けないレースはしたくないと感じてやってきた中、今年も選んでいただけたので、そこはもうバシッと走りたいです。
―― バシッとしているかどうかが分かる見どころのポイントを挙げるなら?
永井 基本的には攻めるレースを心掛けたいですが、ファン感謝祭というイメージでいえば、お客さんを魅了できるよう、もしくは僕を選んでいただいたファンの方、投票していただいた方が良かったと思ってもらえるよう、ファンタジスタ要素も持ってないといけないなと。そういうことを意識して1年間取り組んできました。いろいろな引き出しを持って勝負できるかなと思います。
―― よい状態で仕上がっていると。今回のボートレースオールスターは若松開催ですよね。水が合うかなども含め、若松のレース場にはどんなイメージをお持ちですか?
永井 初めて出たSGが若松で、その後も何回か走らせていただきましたが、あまり調子がよくないというか、好印象を持ちづらいレース場のイメージでした。3月に一般戦で走った際は、ボートレースオールスターにつながるようなことを意識して走ったのですが、「これなら戦えるかも」という準備はそこでできたので期待をもって臨めるとは感じています。
―― こうしてお話を聞いていても、受け答え含めすごくイケメンだと感じます。永井選手から見て、ボートレーサーとしての立ち振る舞いも含め、ボートレース界のイケメンだと感じる選手はおられますか?
永井 最近、東京の濱野谷憲吾選手とレースなどたくさんご一緒させていただく中、彼が昔から強かった理由もくみ取れますし、人を引きつけるレースをされる方だなと今になって分かったというか。成績ももちろんですけど、イケメンだなと思います。
―― 現役の第一戦にいるボートレーサーである永井選手からボートレースの見どころをあらためて教えていただきたいです。どんな部分に注目するとよりレースを楽しむことができますか?
永井 女子と男子が同じレースに出走して競うこともある珍しいスポーツということもそうですが、選手がどんな思いで走っているかはファンの方や投票する方もなかなか分からないと思うんです。だから、ただレースだけを見たら面白さは半減すると僕は考えていて。
せっかくスタート展示や周回展示(編注:本番レース直前に、各選手がスタートやターン、直線の走りを観客に見せること)もあるので、そういうのも見てもらった上で、本番のレースを見てもらうと、選手の心理的な部分もくみ取れると僕は思います。レース場に来て、走っている姿を見てもらうのが本当は一番いい。例えばまだ新人の子が、水面を使って練習してるのとかを見てたら「あの子うまいな」とか気付ける。そういうのはネットじゃ全く知ることができない情報なので。
―― 最後に、今目標としていることと、ぜひファンにコメントをお願いします。
永井 僕の掲げている目標は師匠の中野次郎さんとグランプリに出場すること。ファンの方にはいつもたくさん応援いただけることに感謝をお伝えしたいのと、今後も皆さんを魅了するレースをできるよう精いっぱい頑張ります。
画像提供:BOAT RACE振興会
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