「近鉄」の存在が大きい
それでは、なぜ奈良県にJRの定期特急列車が設定されないのでしょうか。
まずは「メインルートから外れている」こと。確かに「本線」の名が付く関西本線(JR難波〜名古屋)は奈良駅に乗り入れます。しかし大阪〜名古屋間のメインルートではありません。単線・非電化区間が多く、時間も他のルートよりかかります。目的があって乗る鉄道ファンなどでなければ、大阪から名古屋へ行くために関西本線を選ぶ人は少ないでしょう。
ちなみにかつては関西本線に名古屋〜奈良間を結ぶ急行列車「かすが」がありましたが、残念ながら2006年に廃止されました。
2つ目は大手私鉄「近畿日本鉄道(近鉄)の存在」です。
奈良には近鉄線も多く走ります。特に主要駅「近鉄奈良駅」はJR奈良駅よりも街の中心地にあり、奈良公園や奈良国立博物館も近いです。
また、京都へ向かう近鉄の京都線は電化・複線化済み。京都〜近鉄奈良間にはリクライニングシート付きの有料特急が設定されています。併せて、近鉄奈良〜大阪難波間の特急の一部には近鉄の最新型特急である「ひのとり」(関連記事)も走ります。
この近鉄線の存在がとても大きい。JRの奈良線は長らく単線であり、近鉄京都線の利便性に大きく水をあけられています。複線化も進んではいますが……設備面からも特急列車は設定しにくいことになります。現時点、近鉄特急に勝つにはなかなか難しいことでしょう。
新大阪〜奈良を結ぶ「まほろば」で定期特急の実現に期待
もちろん明るい希望もあります! 2019年、新大阪〜奈良をノンストップで走る臨時特急「まほろば」が設定されました。
「まほろば」は奈良を想起させる美しい列車名。大和路線から2019年に全通した「おおさか東線(新大阪〜久宝寺)」に直通し、奈良と新大阪を結びます。行程は約50分。奈良から新幹線拠点駅である新大阪へのアクセス性向上とともに、新幹線との接続を取ることで九州・山陽エリアから奈良へのアクセスもとてもスムーズになります。
感染症の流行が終息したら……この「まほろば」が定期特急になり、奈良を走ることに強く期待しています。
新田浩之(にったひろし)
1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める
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