今から少し先の未来・2050年を生きる登場人物が昔を振り返る漫画『2050年の私たち』が現実味があって面白いです。オチがなるほど令和……!
令和生まれ(31歳)の小説家・鈴木杏寿郎(あんじゅろう)が、大叔母の小倉ちまき(59歳)に、2020年前後の東京について取材するお話。新作小説の主人公が1990年生まれの企業勤めの女性ということで、話題は当時の会社での“しきたり”に。
2021年現在すでに死語となりつつある「OL(オフィスレディ)」という言葉の解説から始まり、来客時にお茶を出すときのいろいろな作法を学ぶ「お茶くみ研修」があったことや、「名刺交換の研修」「エレベーターの上座の位置」などを合宿してまで一通りやった思い出が語られます。
そんな“昔”の話に、鈴木は「…知らない人が淹れたお茶は衛生面気にしてくれてるかな? とか俺は心配ですねえ」と話し、またエレベーターの上座やお酌のマナーは全くの初耳で、逆に興味深いようです。未来の若者が現代以上に衛生面に敏感なのは確かにあり得そうですが、その結果未来人の感じる違和感が現代人とはまた違ったポイントになるのも面白い……。
小倉が「最初はちょっとした相手への気遣いから始まったことがマナーになって、最後には形式重視のルールになって、それをする理由を知らないことってあるんだよねえ」とここまでの話をまとめると、今もそういう話はよくあると彼も笑って返します。
さらに、そういった時代を経てなくなったモノに対する捉え方として、「でもこれらの『今とはちょっと違う』って話は、ちまきさんたちが取捨選択してくださった結果なんですよねえ」と令和生まれの鈴木は話すのでした。
そして作品の最後では、彼が自身の“下の名前”について「母が深く感銘を受けた作品から漢字を頂いたと聞いています」という事実が語られており……当時の「杏寿郎」と言えば、400億の男!
作者は『マキとマミ〜上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話〜』の著者で漫画家の町田 粥(@machi_kayu)さん。今回の漫画を描くにあたって1990年代生まれの方に取材したそうで、飲み会の研修などはその方の実体験のようです。なお、一部の内容については「滝行したりする会社だったからちょっといろいろ特殊だったのかもしんねえ…」とも補足しています。
町田さんは『FEEL YOUNG』(祥伝社)で、伝統の歌劇団を夢見る少年たちが集う音楽学校を舞台にした『吉祥寺少年歌劇』を連載。先日最終回を迎え、10月8日にコミックスが発売予定です。また、「pixivコミック」では単行本発売まで、毎週エピソードを公開する再連載もスタートしています。
作品提供:町田 粥(@machi_kayu)さん
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