「夫を亡くしてもケロッとしている」「気味が悪い」「失礼」――評判の悪い女性に、お金を借りに行く漫画「或ル婦人」が胸に響くと好評です。
夫の由一を亡くし、下女と2人で暮らすみや子を尋ねる野津。みや子はまだ若く美しくお金もありますが、嫁いで間もなく夫やその親族が相次いで亡くなったことで、親戚には良く思われていません。「周囲の親族が次々亡くなっても泣かない」「世話を申し出る男に悪言を吐く」など悪い風聞も。そんなみや子を野津が訪ねるのは、暮らしに窮し、お金を借りるためでした。
実際会ってみると、野津は凜としたみや子の居住まいに気圧されます。着物を左前に着て、ウワサ通りの無礼な振る舞いを見せ、「怖いもの無いの」と堂々と言い切るみや子。しかし、野津が由一から借りていた本を返すと様子が変わります。
本にはさまれていた由一の手書きの紙片を見つめながら、「あの人のいない私なんて無いようなものなの」と亡き夫への思いを口にするみや子。野津は、彼女がなぜあえて縁起の悪いことをするのか、無礼な振る舞いをするのか、その真意に気付くのでした――。
怖い物知らずで傍若無人。そう振る舞っているみや子が見せた深い思いが切なく、悲しくも美しい物語に心をつかまれます。強く後を引く余韻の残るお話です。
作者は漫画家のD・キッサン(@d_kissan)さん。同作は10月末に電子版が配信開始となった短編集『電子特装版 矢継ぎ早のリリー』に収録。併せて短編集『ゆり子には内緒』の電子版も解禁されました。また新作『神作家・紫式部のありえない日々』の連載スタートを記念し、11月19日からは過去作や新作を200ページ以上収録した試し読み冊子が配信予定となっています。
作品提供:D・キッサン(@d_kissan)さん
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