夫に先立たれ、寂しさを引きずる“おばあちゃん”・うみ子。これといった趣味もなく、ぼんやりと日々を過ごしていた彼女は、ひょんなことから映像専攻の美大生に出会います。若きクリエイターからあふれ出る衝動の波は、65歳のうみ子を映画作りの海原に引きずり込んで……。
たらちねジョン(@new_john1)さんによる漫画、『海が走るエンドロール』の第1話がTwitterに公開され、大きな反響を呼んでいます。
夫の四十九日が終わったころ、道端でご近所さんに遭遇したうみ子は、「独り身らしくそろそろ趣味でも見つけたら?」という話題から逃げるように近くの映画館に駆け込みます。
夫の生前、2人の楽しみはいっしょに映画のビデオを観る時間でした。上映が始まったスクリーンを前にして、彼女は初デートで映画館に行った思い出を回想します。
「貴方は映画が好きなのではなく 映画を観てる人が好きなんですね」――。うみ子には、映画の内容よりも“映画を観ている人”が気になってしまうたちがあり、周囲の座席ばかりを気にする様子を夫に指摘されたのでした。
そんな性質は年をとっても変わらず、久しぶりに入った映画館でも、つい他の観客へと視線が向かいます。すると後方に座っていた若者と目が合ってしまい……。
映画が終わった後、うみ子は先ほどの若者から声をかけられます。怒られるかと思いきや、若者は「自分もたまに客席観たくなるんでわかります」と言うのです。少しだけ意気投合した2人は、紆余(うよ)曲折の末、うみ子の家で映画のビデオを観ることに。
偶然の出会いから始まった2度目の映画鑑賞。久しぶりに家で誰かとビデオを観る時間は、うみ子に夫がもういないことを実感させます。喪失を受け入れるための大きな一歩を踏み出したうみ子でしたが、彼女の人生を大きく変えるかもしれない一日はまだ終わりませんでした。
玄関で別れのあいさつを交わす最中、ぼんやりして捉えどころのない若者が、人が変わったように真剣な表情でとんでもないことを口にしたのです。
「うみ子さんさぁ 映画作りたい側(こっち)なんじゃないの?」「今からだって 死ぬ気で映画作ったほうがいいよ」。
うみ子が客席を気にしてしまうのは、自分の作った映画がこんなふうに観られたらと想像してしまうからではないか。その想像にゾクゾクしているのではないか。――若者の言葉は波のように強くうみ子に押し寄せ、彼女をどこかへ引き寄せようとするのでした。
こうして映像専攻の美大生・海(カイ)と出会ったうみ子。続く第2話以降では、出会いと環境に後押しされ、ますます“創作の波にのまれる”彼女の姿が描かれます。その展開は怒涛のひとこと。『海が走るエンドロール』(ボニータ・コミックス)は第1巻が発売中です。
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