ピクサー従業員が関係者向けの声明で、親会社ディズニーによる同性愛要素の検閲を告発し、物議を醸しています。
背景にあるのは、米フロリダ州で3月8日に可決された、幼稚園から小学校3年生までの教育現場で性的指向や性自認についての議論を禁止する、通称「ゲイと言ってはいけない(Don't Say Gay)」法の存在。ディズニーはこれまで、同法を推進する共和党議員に多額の献金を行っており、声明ではこうした議員への財政支援を直ちに打ち切るよう求めています。
ディズニーがこれまで同法への態度をはっきりさせてこなかったことに対し、内部から批判が高まったため、同社のボブ・チャペックCEOは7日(現地)、従業員向けに釈明メールを送信。同社が伝統的に性的マイノリティーをサポートしてきたと強調しましたが、ピクサー従業員側の声明ではチャペックCEOのメールを「空虚」であると批判しています。
声明では2021年から販売されている「レインボー ミッキー」グッズに触れつつ、性的マイノリティーの権利が危ぶまれる状況下で適切な支援をしないにもかかわらず、性的マイノリティーグッズでもうける企業に所属するのは「最悪の気分だ」と、痛烈に非難。
さらに、ディズニーの社風はコンテンツ(アニメーション作品)が物語っているとして、ピクサー側のクリエイティブ・チームや経営陣双方から抗議があっても、ディズニーの意向で同性愛を好意的に描くシーンがカットされてきたと訴えています。声明はピクサーの「LGBTQIA+従業員、及び関係者」名義になっており、全文は米Variety誌上で確認可能。
この件を巡っては、アニメーターでディズニーの人気シリーズ「アウルハウス」の原案としても知られるダナ・テラスさんが、チャペックCEOのメール送信直後に、異例の顔出しでのディズニー批判を行ったことでも話題になっていました。
チャペックCEOは3月9日の年次総会で、これまで表立って立場を表明してこなかった理由について、「法整備に携わる関係者と水面下で意見交換した方が効果的に働きかけられると信じていたため」だと説明。こうした動きがうまくいかなかったと認めた上で、社内経営陣のLGBTQ+メンバーと共に、フロリダ州知事と面会予定であると明かしました。
また、同社はこうした法律への反対署名をすると共に、LGBTQ+コミュニティーの支援団体に500万ドル(約5億8000万円)の寄付をすると約束。これを受け、寄付先の一つとして名指しされたヒューマン・ライツ・キャンペーン財団は、ディズニーが「ゲイと言ってはいけない」法に対し意味のある行動を取るまでは、寄付金を受け取らないと表明しています。
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