カートゥーンのように目玉が付いた自動車、「Gazing Car」がCEATEC 2022に登場し、Twitterで話題となっています。一見するとコミカルな演出のようですが、実は自動運転車の安全性を高めるための研究なのです。
Gazing Carは、東京大学と科学技術振興機構(JST)による研究。自動運転車が無人ゆえ、歩行者との意思疎通がとりにくい問題の解決策として始まりました。
フロントガラス下部に備えた2つの大きな目玉は、歩行者へ自動で視線を向け、「運転の意図」をアイコンタクトで伝えるためのもの。「あなたのことを認識したうえで運転していますよ」と示して安心させ、歩行の判断を助ける役割を果たすわけです。
Twitterでは、CEATEC来場者のロボ先輩(@3rd_factory_ro)さんのツイートがきっかけで話題に。「目の付けどころが良い」「『カーズ』や『ボブとブーブーズ』みたいで好き」「モルカーとコラボしてほしい」「(ドライバーの視線と連動させれば)有人車でも有効なのでは」などと、期待する声が上がりました。
研究代表者の五十嵐健夫教授に経緯を聞いたところ、きっかけは歩行者と自動運転車の意思疎通に関する研究が不十分と感じたことから。自動車メーカーや研究機関による先行研究を踏まえ、ディスプレイや音声などの手法を検討するなかで、目を付ける案が生まれたといいます。
その後、CGでの実験で効果の見込みがあったことから、実車を開発しての実験がスタート。モーター駆動の目を付けて、歩行者を見ているときは「停止」、そうでないときは「進行」と、視線で意思を示せるようにしました。
ちなみに、この実験段階では、車の運転も目の動きも手動で行っていますが、CEATECで公開された車両は、周囲の画像から歩行者を認識して視線を動かす仕組みに。将来的には各種センサーの活用が想定されているとのことです。
実験に際しては、実験車両を撮影してVR映像を制作。無作為に選んだ18才〜49才の男女18人を対象に、VR環境で道路を渡るべきか止まるべきかを判断させました。
その結果、男性の場合は危険な道路横断をした割合が通常の車と比べて49%から19%へ低減。女性においては、車が停止しようとしている状態での、むだな停止が72%から34%へ低減されました。研究チームは成果について、「自動運転車と道路利用者との意思疎通を円滑にするための1つの可能性を示しています」と述べています。
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状況だけ見るとコントのようですが、フォードによる真面目な実験です。