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「顔認証」 「鹿せんべい」 「ボイス付」――自販機の新たな可能性を生み出す会社に、「次はこんな自販機どうですか? 」と聞いてみた

夢の自販機、本当にできちゃうかも?

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 住宅街や路上、あるいはオフィスの中など、近くにお店がない場所でも手軽にドリンクを買えて便利な存在「自動販売機」。実は、最新の自販機はただ小銭を入れてドリンクを買えるだけの機械ではなく、どんどん進化を遂げているんです。

 顔認証機能搭載で手ぶらで買える自販機や、方言でしゃべる自販機、ベビー用 紙おむつが買える自販機、果ては鹿せんべいが買える自販機など、ユニークな機種が次々に増えています。

画像 自販機にタブレットが付いてる……?

 こちらは2021年から展開されている、ダイドードリンコの顔認証で買える自販機。自販機にタブレットが付いていて、カメラに顔を近づけると……?

画像 小銭もスマホもいりません

 顔認証が通ると、事前に登録した決済サービスで自動的に決済が行われ、手ぶらでドリンクが購入できます(詳しくはこちらの記事にて)。スマホを出す必要もなくて、とっても便利!

 そして、素朴な疑問として思い浮かんだのが「このような新しい自販機・ユニークな自販機はどうやって生まれるんだろう」ということ。

 自販機のアイデアを考える会議があったり、知られざる“ボツ自販機”が実は存在していたりするのでしょうか?

画像 左からダイドードリンコ株式会社 自販機営業企画部の江川さん、平尾さん

 顔認証自販機を開発したダイドードリンコは、今から約40年も前に「当たりが出たらもう一本」のルーレット機能をいち早く導入するなど、ユニークな自販機の開発にかけてはパイオニア的な会社です。今回はそんなダイドードリンコに突撃取材し、ユニークな自販機のアイデアはどこからくるのかを聞いてみました。

あれもこれも、自販機で買える! ダイドードリンコのおもしろ自販機

――ダイドードリンコさんといえば、当たり付き自販機も街中でよく見かけるし、“ユニークな自販機の飲料メーカー”というイメージでした。ドリンク以外にもさまざななものが買える自販機があって、最近は「鹿せんべい」が買える自販機を設置したとか……?

江川さん ありがとうございます。今年の10月に奈良公園内に設置された「I LOVE シカ 自動販売機」ですね。

画像 人間も鹿もうれしい!? 「I LOVE シカ 自動販売機」

――こうした飲料以外の自販機の開発には、どうして取り組むようになったのでしょうか。

江川さん 我々は自販機を、“ただドリンクを販売する機械”ではなく、“ひとつの店舗”として捉えています。お店であれば、よりお客さまにご満足いただけるようなラインアップをそろえるのは自然なことです。そんな考え方から、飲料という枠にとらわれず、食品やおもちゃだったり、ベビー用 紙おむつなど急に必要になるものだったりを、商品として柔軟に取り扱っています。

――作るものはユニークだけどめちゃくちゃ真面目だった。

画像 顔認証で買える自販機

――あとは、顔認証でドリンクが買えるという体験も面白いですよね。こちらは街中ではあまり見かけたことがないのですが、どのようなシチュエーションで利用されているんでしょうか。

江川さん 多いのはオフィスや工場などですね。あと最近増えたロケーションとしては学校です。それも通常の学校ではなく、全寮制の学校です。生徒さんは住み込みで通うわけですが、トラブルの原因にもなり得ますから、あまり大金も持たせられないという事情があったりするんです。

――それで親御さんのクレジットカードに紐付けて。

平尾さん 顔認証でドリンクを買ったら、親御さんのスマホに通知が行きます。離れた場所に暮らしていても、お子さまがドリンクを買っていることがわかると少し安心できるのではないかと。

――たしかに、そういった意味でもうれしい機能ですね!

平尾さん あとはフィギュアメーカーの海洋堂さんとコラボして、観光客をターゲットにしたガチャガチャの自動販売機も展開しています。

画像 土佐黒潮水産 黒潮ひろば店に設置された「高知県×海洋堂ガチャコラボ自販機」

平尾さん 普通のドリンクも買える一方で、海洋堂のご当地フィギュアを買えるボタンもあるという自販機で、現在は大阪府・京都府・高知県で展開しています。自販機でフィギュアを買うという体験を通じて、お客さまを楽しませながら地域を盛り上げることもできたらと思っています。

画像 「高知県×海洋堂ガチャコラボ自販機」販売カプセルフィギュアのラインアップ。プレスリリースより

ユニークな自販機は、どこからアイデアが出てくるの?

――自販機は地域を盛り上げることにも一役買っているんですねえ。こうしたアイデアって、どういう流れで生まれて実現するものなのでしょうか。

平尾さん ユニークな自販機を作ろうと思っていたわけではなく、お客さまの声を反映した結果、あるいは社内のアイデアを実現した結果として生まれました。

画像 平尾さん

平尾さん 弊社には、社員が実現したいアイデアを応募できる「DyDoチャレンジアワード」という取組みがあります。実現可能かどうか、もしくはニーズがあるかどうかを検証し、実現に至るものもあります。

――外からの要望と、社内から生まれるのと両方だったんですね。今までの事例を見ると、自治体から相談を受けることが多いのかなと思っていましたが。

平尾さん 自治体から声がかかることもありますし、こちらから提案する場合もあるので両方ですね。

画像 春日大社の鹿苑に設置された「I LOVE シカ 自動販売機」 自販機Newsより

平尾さん  普段の会話の中で「地域としてこういう悩みがある」「こういうPRをしたいと思っている」という話になり、できることをみんなで話し合っていると、どんな自販機が求められているかが自然と見えてくるということも少なくありません。鹿せんべいの自販機も、ダイドードリンコの営業と地域の方の、何気ない会話から生まれたものなんです。

――ユニークな自販機は、地域の問題解決にしっかり取組んだ結果でもあったんですね!

平尾さん また、アイデアから開発につながった例として、神戸市と神戸学院大学の学生さんが協力して開発した、デジタルサイネージを搭載した自販機があります。

画像 「地域貢献型自動販売機」

平尾さん 通常時は地域のニュースなどを映し出していますが、災害の際には地域の災害情報などを知らせてくれる機能をもった自販機です。神戸学院大学 経済学部 井上善博ゼミの学生さんからアイデアを出してもらい、その中で最優秀賞となったものを実用化しました。

画像 「災害対応+情報発信ベンダー」 自販機Newsより

平尾さん ふだんは、神戸市の情報や時事ニュースのほか、井上ゼミの学生が制作した防災啓発動画もサイネージで配信しています。かなり地域密着型の機種なので、現時点では兵庫県内にいくつか展開しているのみなのですが、病院のロビーなどで活用していただいてますね。

ダイドードリンコさんに「ぼくの考えた最強の自販機」をぶつける

 そして今回は、今までいろんな自販機のアイデアを実際に形にしてきたダイドーさんに、ねとらぼ編集部のオリジナルアイデアをぶつけることに。自販機のプロはどんな判断を下すのでしょうか……!

妄想1:キャラクターからドリンクが買える!? 自販機

 「キャラクターに会いに行く」感覚でドリンクを買える自販機。自分で複数の任意のキャラクターから、ボイスを選んでドリンクを購入できる。ポイント制で、買えば買うほど対応が変わっていく機能もあったら最高だな〜!!

画像

――個人的にイチオシの妄想自販機です。実現可能性、ありますか?

江川さん できると思いますよ! なんなら、ひとつの自販機に複数人のキャラクターのボイスを別々に搭載することもできるはずです。

――えっ……!?

平尾さん 今すでにある自販機として、4か国語を喋れるインバウンド対応の自販機というものがありまして。中国語・韓国語・英語・日本語の4つのボタンのうちどれかを押すと、選択した言語の音声で購入をサポートしてくれる、という自販機です。

江川さん この機能をいかせば、最大4人のボイスをひとつの自販機に搭載することができそうですね。

画像 ダイドードリンコのインバウンド対応機能自販機

江川さん 過去には人気声優さんの声を自販機に搭載したこともありました。今回ご提案していただいたような自販機は、実現するための機能はもうそろっているのに、今までアイデアとして出ていなかったなと。

――ぜひ作ってください!!!!! 1週間の飲料そこで買う勢いです。

江川さん 圧が怖い。学校などに設置したら盛り上がりそうですよね。

――ウワーッッ! お前、あいつ(※自販機)に話しかけてこいよみたいなやつ! アオハルだ!!

 まさかの実現できそうかもというコメントを頂きました! 取材の際には気合を入れ過ぎて、4人のざっくりしたキャラクター設定まで考えて持って行ってしまいました……。厳格な教師タイプのキャラが、ドリンクを買う度に少しづつデレていくのとか、見たいじゃんよ……。あと個人的な趣味だけど控えめなメカクレキャラからドリンク買いたい。ダイドードリンコさん! 本当に作って!!! 

妄想2:アツアツで出てくる! おでん自販機

 ホットスナック感覚でアツアツおでんが買える自販機。ドリンクでもおでんだしを選べたりして、日本酒を買って、おでんの出汁割りができたら最高では……?

画像

平尾さん 正確にはちょっと違いますが……過去に「スープ缶をアツアツで提供する自販機」はありました。

画像 かつて存在したという「IHベンダー」

平尾さん スープ缶としておでんを販売していて、常温でストックされている商品を、お客さまがボタンを押してから電磁誘導加熱装置(IH)で温めるという自販機が過去にあったと聞いています。

――通常の商品よりアツアツなんですよね? めちゃくちゃ良さそうなのに、なんで今はなくなっちゃったんでしょうか。

平尾さん 缶がアツアツに温まるまでに、30秒〜60秒ほど待たなければいけなかったんです。でも、自販機を利用するときって「今すぐ」飲みたい・食べたいと思っていませんか? そんなニーズのほうが強かったようで、想定よりも広まりませんでした。

画像 おでん缶はかつてありました

――缶までは実現していたんですね。おでんそのものが出てくるのはやっぱり難しそうですか?

江川さん どうでしょう……どうしても自販機の構造上、入れるものにはある程度のサイズと重さがないと、補充の観点でも難しいかとは思いますね……。

 アツアツのおでん缶は過去にあったけど、おでんそのものを自販機で提供するのは難しいそうです。そりゃそうかぁ……自販機のアイデアを考えるのって難しいですね。

妄想3:家の中に設置できちゃう! コンパクトな自販機

 いっそ、自販機を自分の家に設置したい。ドリンクの種類はお気に入りの3種類とか4種類。家の中に置けるコンパクトなサイズで、使った分だけ請求されるみたいな……お酒好きの人は炭酸水やジンジャエールなど割りものを自販機にストックするもヨシ! 夢が広がる個人用自販機!

画像

平尾さん ダイドードリンコの最初の自販機が、ちょうどそのイメージに近いかもしれません! まさに机の上に置けるようなサイズ感で、パーキングエリアやガソリンスタンドに設置されていました。

――なんと! すでに過去に存在していたんですね?

画像 約50年前の卓上自販機

平尾さん 実は、ダイドードリンコのルーツは、配置薬業(置き薬の提供)にあるんです。お客さまに合わせたお薬を詰めた「箱」を提供している中で、眠気覚ましのニーズがあり……そこから、ダイドードリンコの原点となるコーヒーの提供が始まりました。

――そんな歴史があったとは……! では、個人向けの小さな自販機というのは、今でも実現可能なものなのでしょうか?

江川さん 技術的には不可能ではありません、ですが……卓上自販機は、現在では一台もありませんね。

平尾さん この卓上自販機のサイズだと、ドリンクが一種類しか入らないんです……。お客様に喜んでいただくために、ラインアップを増やそうと思うと、このサイズではニーズに応えられなくなりました。

画像 江川さん

江川さん それと、意外かもしれないですが、このサイズの自販機って思っているより電気代が高くなるんです。大きい自販機だと、中に省エネの機械を入れられるので電気代は抑えられるんですよ。

――確かに、一人暮らし用の小さい冷蔵庫も電気代が高くなりがちと聞いたことがあります……!

江川さん 都内の繁華街ではすごく薄い自販機を見かけると思います。あれは繁華街で販売のニーズがあるので、小さくて電気代が高くても買ってくれる人がいるから置けるんです。でもこれが家の中でとなると……。

――技術的にはできるし、物理的に置けなくはないけども、売れないといけないんですね。

 自販機の電気代は設置先のオーナー持ちです。つまり売れないといけません。しかし家の中にあるとなると買うのは自分や家族ぐらいだし、買えば買うほど自分のお財布からはお金が出ていくし……ジレンマ!! いいアイデアだと思ったんだけどな〜!

 そういえば、筆者が以前住んでいたマンションでは入り口の近くにダイドードリンコの自販機があり、よく利用していました。あれも大家さんが設置してくれていたのかなと思うと便利だったし、微力ながら買い支えられて良かったなと思います。

時代に合わせてなくなる自販機、新しく生まれる自販機

 いろいろなユニーク自販機を企画&開発しているダイドードリンコさん。その陰には、消えていった自販機の存在も多くあります。

画像 2020年に登場し、すでに稼働を終了したという「足操作自動販売機」。プレスリリースより

平尾さん 新型コロナウイルス感染症の影響が拡大し始めてすぐの2020年に「足操作自動販売機」をリリースしたのですが、こちらは現在では展開していません。

――足操作で購入できると、直接ボタンを触らなくても良いですもんね! 見た目もサイバーでかっこいいですが、今はもう展開を終了しちゃったんですね……?

平尾さん そうなんです。ただ現在は、毎回の補充時に触れる部分をきれいに拭いていたり、必要に応じて自販機のボタンに抗菌コートを施していたりしますので、どの自販機でも安心してご利用いただけます。

――でも、当時のニーズにすばやく注目した自販機だったということですよね!

画像 役目を終えた「足操作自動販売機」。利用してみたかった

 自販機をひとつの店舗と捉えているダイドードリンコは、お客様の課題に寄り添うことを第一に、枠にとらわれない発想で積極的に開発に取組んでいるということがわかりました。この記事を見た人からもアイデアがあれば是非SNSなどで呟いてほしい、参考にしたいとのこと。もしかしたら、あなたの夢の自販機が街に設置される日が来るかも……!?

 これからも便利で、そしてワクワクする自販機が登場するのが楽しみですね!


提供:ダイドードリンコ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ編集部/掲載内容有効期限:2022年12月28日

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