「RRR」待望の配信開始! 杉田智和&日野聡による吹替版が最高にかわいいのをご存知か? “言葉の壁”超える独自の工夫も話題に(2/3 ページ)
「言語の壁」があるシーンに工夫あり。
そう、字幕版では通訳をこなしていたラーマが、吹き替え版ではしどろもどろになるビームに、「ちゃんとした返答をしろよ!」とアドバイスというかツッコミをする意味合いが強くなっているのだ。それでいてビームのいじらしさは据え置きであり、そのトンチンカンな返答にラーマ(声:日野聡)が「んふふふ〜」などと言葉にならない声を放つのも味わい深い(ちょっと怒ってそう)。
その後の市場でのデートでも、ビームがただひたすらに奥手で緊張していて上手くしゃべれない、かわいい青年に見えてくる。ジェニーの名前を聞くくだりも、2人のやり取りを調整して違和感がないようにしているのだ。名前を盛大に勘違いするのは吹き替えだと「さすがに無理あるだろ!」と思ってしまったが、それくらいにビーム(声:杉田智和)がアホの子だと思えばきっと納得できてしまえる(やっぱりかわいい)。
その他の場面でも、杉田智和と日野聡という耳が幸せな声質と圧倒的な演技力を併せ持つ声優2人のパワーに感服させられる。序盤でトラとの熾烈なバトルを繰り広げた後に、ビームが「必要があって利用させてもらう。許してくれ」と語る場面は、杉田智和が演じてこその誠実さを感じさせる。
恋愛指南をしてくれるラーマの「こういうときはな、頭で考えていても始まらないんだ! 行動に移さないと!」という心強いアドバイスは毎日でも聞きたいので、今すぐこの日野聡ボイスのしゃべるLINEスタンプを作るべきである。
過去の同様の吹き替え例をご存知か?
ところで、今回のように劇中言語を統一する吹き替え版は、実は過去にも制作されたことがあるのをご存知か?
同じくインド映画である「バーフバリ 伝説誕生」では、劇中の「蛮族」が架空の言語でしゃべっていたのだが、日本語吹き替え版ではその部分も吹き替えられてしまった。おかげで、「本来は通訳をする場面が、ただ同じことを繰り返して言うだけ」になっていて違和感が出ており、このシーンのために架空の言語を作成したオリジナル制作者の意図を損なっているともいえる。そのため、字幕版を見た人からは(配役や演技そのものは称賛される一方で)、不評の声が相次いでいたのだ。
ほかにも、中国・香港の合作映画「ドラゴン×マッハ!」では、広東語・タイ語・韓国語・英語がそれぞれ話される作品であり、言語の壁がドラマに大きく寄与していた。しかし、日本語吹き替え版でその全てを吹き替えてしまったことにより、本来は必死で英語で訴えるが囚人たちに通じない場面、スマホの翻訳アプリを介して話す場面などに違和感が生じた。一部の言語だけ吹き替えると、それはそれで違和感があるだろうから、苦肉の策ではあったのだろう。それでも、こちらも字幕版を見た人からはおおむね不評だった。
この2本に比べれば、「RRR」は元の物語に即した意味づけがなされており、違和感も格段に少ないので、多くの方が納得できるであろう吹き替えになっている。とはいえ、こちらもビームが拷問を受ける場面での民衆への訴えが、「本来は通訳をする場面がただ同じことを繰り返して言うだけ」になっていたりはするが…。
それらを許容できるかどうかは、見た方次第だろう。総合的にはとても良い吹き替えであることは間違いないので、ぜひ作品未見の方や、字幕版をすでに見たという方も楽しんでほしい。
(ヒナタカ)
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