人から聞いた、脚色のない怖い体験談や奇妙な話。そういった実話怪談を美少女が聞かせてくれるという、ある意味でたまらないシチュエーションを描いた、実話怪談の恐怖と創作の恐怖、双方から目が話せない漫画が注目を集めています。
作者は漫画家の外本ケンセイ(@hokaron1101)さん。今回紹介する作品は、怪談師の夜馬裕(@yamayu_ggh)さんが蒐集した実話怪談が原作となっている『厭談夜話』の1編「女の幽霊」。マンガサイト『サンデーうぇぶり』で連載中で、単行本第1巻が発売中です。
ベッドに横たわる男性の上に、馬乗りに座るかわいらしい少女「レイ」。彼女は実話怪談が大好きとのことで、この日はレイが「本当にあった怖い話」を、朝までたっぷり話してくれることになったのでした。
彼女が語る話を体験したのは、オカルトと怪談収集を趣味に持つ編集者のYさん。彼はあるツテから「自分には女の幽霊が取り憑いている」と自称する男性「シンジさん」を紹介され、実際に会って話を聞くことになりました。
シンジさんは某有名企業に勤める、ごくごく普通の理性的な男性でした。話によれば、彼には死別した恋人がいるそうで、現在は団地の一室にて彼女の遺した娘とふたり、シングルーファーザーとして暮らしているそうです。
ですがある日から不可解な出来事……食器や棚の物がひとりでに動く、ドアが勝手に開閉する、寝ている娘の布団を掛けかえた痕跡がある、明らかに人の気配がするなど……さまざまな怪奇現象が起きるようになった、といいます。
シンジさんはこれらのできごとから「自分の住む部屋には亡くなった恋人の霊がいる、そうとしか考えられない」と断言するのです。そしてYさんは「本当に幽霊がいるのかどうか、一度確かめに来てみないか」というシンジさんの提案を受け、彼の家を訪問することになったのでした。
シンジさんの部屋では確かに、さまざまな現象が起きたのですが……それを見たYさんは怖がるのではなく「この家は明らかにおかしい、一刻も早く帰りたい」と考え、さらには「この人は正気なのか……?」といぶかしがります。
シンジさんは興味津々に「見えてるんだろ、女の幽霊。どんな姿をしてる?」と尋ねるのですが、Yさんはそれどころではありません。なぜならこの部屋にいたのは幽霊などではなく「どう見ても確実に生きている、人間の女性」だったのです。
シンジさんはどういうわけか、部屋で普通に生活しているだけの彼女を、まったく認識していないかのように振る舞うのです。お皿を落として割ってしまったのも、ドアを開閉していたのも、お茶を出してくれたのも、すべてこの女性がやったことなのに……。
女性の姿が見えているYさんからすれば、シンジさんが女性の行動を「幽霊のしたこと」と言い張っているようにしか見えません。からかわれているのかも、と思ったYさんは、女性に声を掛けようとするのですが……女性は「しゃべるな」というポーズを取り、それを制止するのでした。
シンジさんは確かにそこにいる女性を、なぜか認識できていない、しようとしない。女性はそれを受け入れ、Yさんには自身の存在を明かすな、と暗に伝えてきている。明らかに異常な家庭環境です。このようにおかしな人たちと暮らしていて、果たして娘さんは大丈夫なのか……シンジさんに促されるまま、娘さんの姿を見に行ったYさんは、さらなる怪異を目の当たりにします。そして……。
Yさんが見た「娘さん」の姿とは、シンジさんはなぜ女性を認識できないのか、そもそもこの女性は一体何者なのか……。徐々に明かされる不可思議な顛末、実話だからこその恐怖、創作ならではの恐ろしいシチュエーションは、漫画を読み進めてお確かめください。
(C)夜馬裕/外本ケンセイ 小学館
記事:たけしな竜美(@t23_tksn)
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