多くの飼い主が一緒に暮らす動物を“大切な家族の一員”として捉え、人生をともに歩んでいます。動物と暮らした時間は長くとも短くとも、深い愛情を持って接した分、飼い主にとって人生のかけがえのない一部となり、別れは深い悲しみとなって心身に押し寄せます。
愛する動物との死別による喪失感や混乱、後悔など、抱えきれないほどの悲しみによって心身が不安定になる状態を指す「ペットロス」「ペットロス症候群」。2023年、20歳〜69歳のペットを飼っているまたは飼育経験がある391人を対象に実施された「ペットロス」に関する調査では、「約8割が『ペットロス』という言葉を見聞きしており、約4割が実際に経験している」と発表されています(サンセルモsorae調べ)。
飼い主にとって非常につらい経験となり、カウンセリングを要するケースもあることから、「ペットロス」「ペットロス症候群」は今、メンタルヘルス上の大きな課題として多くの人が向き合っています。動物とのこれまでの日々を忘れたり、死を乗り越えたりすることはできないかもしれませんが、時間の経過とともに受け入れ、いつかふと思い出したときにあたたかい涙がこぼれるような“寄り添い方”はあるはずです。
そこでねとらぼ生物部では「ペットロスとの寄り添い方」をテーマに、読者にアンケートを実施。寄せられたさまざまなエピソードから、愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事をご紹介していきます。現在動物と暮らしている人や、悲しみの渦中にいる人に寄り添うヒントとなれば幸いです。
第16回 飼い主・成田さん/猫「ばんと」くん
―― ばんとくんのプロフィールと出会い、思い出や印象的なエピソードを教えてください
成田:ばんとは動物病院付属の専門学校の里親募集で出会った日本猫の男の子です。夫がうつ病で休職中、寝ているときは必ず隣に寄り添ってくれていました。帰宅できず不在の日があると、翌日怒っている顔をしていました。
―― ばんとくんと別れてからの心境や、救われた出来事などがあれば教えてください
成田:17歳10カ月で虹の橋を渡りました。飛んだり跳ねたりできない時間があったため、「これで少し楽になれたかな」という安堵(あんど)の気持ちと、「これで良かったのかな」という気持ちが交錯しました。「頑張ったね。ありがとう」という気持ちになりました。
ばんとになじみのあるものを片付けていく中で、時間がたってからじわじわと寂しさがこみ上げています。少し前に愛猫が息を引き取った友人に話すことで、少しずつ心が整い、整理されていくのが感じられました。「無理に悲しい気持ちや寂しさを押し込めずにいていいんだよ」という言葉に救われました。
また家族で話し合い、遺毛を家族それぞれが持つということで納得し、いつもばんとを感じられるようにしています。わが家ではばんとが唯一、角をかんだことがある写真立てに写真を入れ、その後ろに遺毛を埋め込みました。これで寂しくないと……。
―― 現在の心境を教えてください
成田:夜はいないことがまだ悲しいけれど大丈夫です。今はばんとが息を引き取ってから半年が経過したころですが、あらためて小さな天使だったと感じ入ります。
―― ばんとくんに伝えたいメッセージ
成田:いろいろんなことをたくさん教えてくれてありがとう。
(了)
「ペットロス」「ペットロス症候群」になった場合、その苦しみを閉じ込めたり自身を責めたりせず、家族や仲間と共有する、生活に支障を来す場合は専門家のカウンセリングを受けるなど、焦らずに“死”を受け入れていくことが大切だといわれています。
また現在動物と暮らしている人は、「いつかは別れがくる」と理解し後悔のないよう接すること、同じ動物と暮らしている友人や仲間を見つけ、喜びや悲しみを分かち合うことが、いつかくるそのときと向き合う心身の準備へとつながるかもしれません。動物と暮らす喜びをかみしめながら、心のよりどころとなる思い出や関係を作っていきたいですね。
ねとらぼ生物部では、引き続き「ペットロスとの寄り添い方」をテーマにアンケートを実施しています。犬猫、小動物、爬虫類など、動物のジャンルは問いません。愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事など、【こちら】までお寄せください。アンケート内容とお写真は部内で審査の上、記事で紹介する可能性があります。
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