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【プレイレポ】10年ぶりの最新作『アーマードコア6』が面白すぎて感想を言いたくてしょうがねえ! 言わせろ!(3/3 ページ)

アーマード・コアの新作……すばらしい響きだ……。

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顔が見えなくても全てが伝わる良質なキャラクター描写にうなる

 そしてストーリーがまた素晴らしい……。アーマード・コア、というよりフロムソフトウェアの作品といえば、ストーリーを語りすぎない、妄想の余地を多く残しておくことでプレイヤーの脳を活性化させる、いわゆる「フロム脳」を発病させることでも有名だけど、今回はそのあんばいがだいぶ「分かりやすい」寄りになってて、でも絶妙な味加減で素晴らしい……。

 まず、ストーリーの展開で分かりにくいなと思うところは一切ないんですよ。「ルビコン3に眠る夢の新物質コーラルを巡る戦い」という縦軸は一貫してるし、何よりキャラクターの思想というか行動がハッキリしてる!

 フロム作品にありがちな、なんかクライマックスで意味ありげにいいタイミングで乱入してきて、いろいろ考えてるらしいしその真意はつかめないけど取りあえず「お前の力を見せてみろー!」とか言いながら突撃してくるみたいな奴がいない……!

 いや、でも中盤にそんな奴がいた気もするなあ! って今書いてる途中で思ったけど、そいつですらまあなんとなくやりたかったことは劇中の情報を素直にくみ取れば分かる気がするし、あとなんか別にクライマックスには直結してないから気にならない。

 そしてキャラクター達の完成度が高すぎる。

 PVでの「いかにもプレイヤーを使い捨てそうな悪徳元締め」みたいな雰囲気が完全に反転、シリーズ随一の優しいおじさんで全プレイヤーから愛されるウォルター・ハンドラー。

 儚げなヒロインみたいな雰囲気を全開で放出しながら時折、妙にしたたかだったり天然ボケっぽい雰囲気をいい声で出力したりしてくる謎の女性、エア。

 高い実力とアーマード・コア界ではまれな「誠実な人間性」を持ち合わせ、プレイヤーを「戦友」と呼び慕うラスティ。

 こうしたキャラクターたちと、過去例を見ないほどの回数会話を交わすことができる(いやプレイヤーは無言なんだけど)ので今回キャラクターへの愛着がすごい。

 むしろこれまでは大多数がそうだった、「ひとつのミッションにしか出番がないし倒すと死んじゃうので、せりふが数えるほどしかないキャラ」に対して「もっと出番くれよ!」とぜいたくなことを考えてしまう始末! ホーキンスやフロイトともっとお話ししたかったよ〜!

 特に初期作において顕著だったアリーナ(敵AC乗りとタイマンできるモード)の妙に味わい深いフレーバーテキストが復活したのもうれしい。

 これ大好きだったんだけど、こういうノリはほぼ初期だけで、ここ数作はそもそもなかったり、あっても妙に事務的・実用的だったりで「そうじゃなくてもっとプライベートの生活はどうしてるかとかを教えてくれよお!」って思ってたから面白文章が増えてうれしい。

 さらに今回、新たな試みとしてアリーナに登場するAC乗りが全員本編でも襲い掛かってくるんだよ! これすごくない? 今までそんなアーマード・コアなかったからね。

 このことによって何が起こるかというと、先にアリーナのテキストを読んでおいて、頭の中に「こういうヤツなのかな?」って思ってた答え合わせがやってくるってことなんだよね。アリーナで戦って「イカれたやつだなあ」と思ってたら、本物は「思ってたより5倍くらいイカれてる!!!」ってビビらされたりする事案が続出。すごすぎる。

 本作、とにかく登場するキャラクターたちが「キャラ立ち」しすぎている。アーマード・コアでは伝統的に、いくつかの例外を除いて人間の外見が描かれることはなかった。

 われわれに伝えられるのは搭乗しているACと少量のせりふ、声だけだった。とはいえ想像力は刺激されてしまうので、これまでも「こいつはこんな見た目だと思う!」という二次創作もあることはあった。

 しかしそれにしたって今作は二次創作が多すぎる! いや、もちろん単純に売り上げ本数が多いとか、過去作に比べてSNSが発達しすぎているとかそういう環境的原因もあるよ。でもやはり「外見を想像せずにはいられない」ほどキャラクターが立っているのが一番の原因だと思う。彼らの豊かな人間性を見ていると「こんな姿をしているのかな?」と思わずにはいられないもの。

 特に描写の仕方で舌を巻いたのは作中登場する2大企業、ベイラムとアーキバスでそれぞれ下っ端であり、プレイヤーへの任務の斡旋(あっせん)もとりおこなっているレッドとペイターの2人。

 この2人とは特に序盤、プレイヤーの名が上がってないころに多くせりふを聞くことになる。特にベイラムのレッドは「俺にも後輩ができたぞ」みたいなノリで話しかけてくるのでほほえましい。

 この2人、3周目のあるミッションにて両方出てくる。この極限状態の、似たような立場だった二人が全然違うリアクションするのがすごいんだよな〜。作劇のお手本じゃんこんなの。キャラクターは設定だけ考えるんじゃなくてシチュエーションに放り込んだ時にどんなリアクションをするかどうかが大事なんだよみたいなアレです。いやほんとうまいわ。

 キャラ性で言うと、過去作で言えば「4」「fa」でうまく使ってた「機体の構成で作中の政治やキャラクターの立ち位置を表現する」みたいなのもバリバリやっててほんと興奮する。 

 シリーズ伝統の根幹のシステムを用いた環境ストーリーテリングですよ。スッラの装備の意味に気づいたときは震えたね。マジで今作のキャラクター表現白眉すぎますよ。

Feed the fire. Let the last cinders burn.

 そんな濃いキャラたちと存分に交流ができるので、本作は「まるで乙女ゲーみたいだな」と言われたりもする。いや、決して言い過ぎではないと思うんだよなこの言い方……。出会うキャラクターはみんな独自の呼称(621、レイヴン、戦友、G13、野良犬、駄犬、害獣、ご友人……)でプレイヤーに話しかけてくるし、エンディングの分岐に関わる選択なんかはモロに「それでお前はどっちを選ぶの?」って形で両側から腕を引っ張られてるような感覚。

 エンディング後に周回を促してくる一言も感慨深いし、そうして双方の物語を読み終えた後に訪れる「3周目」。そのエンディングはこれまで待ち続けた全てのアーマード・コアプレイヤーたちへのご褒美のような内容で放心した。すごすぎる。信じていいんだな?

 なんなら「アーマード・コアを実際には遊んでないけどネットミームは弄る」みたいな人類まで救済するような内容になってませんでしたか? 考えすぎか?

 アニメでもゲームでもそうだけど、ロボットものの勘所って「なぜその兵器が人型なのか?」だと思うんだよね。今作はその点にも過去作に比べてかなり強く踏み込んでいて、またそれがアーマード・コアを体現しているなあと思わされるもので、うなった。これまた主要キャラクターともシナジーを生み出していて素晴らしいのよね。これを見るにはどうやったって3周クリアが必要なんだけど、ぜひ見てほしい。別にネタバレ全開の記事にしたっていいんだけどみんなの目で見てうなってほしいから。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の話はしたいけどネタバレをしたくないみたいな心境です。遊んでくれ超良質のSF・アーマード・コア6を……!

 そんなわけでざっくり書きましたが「ゲームが面白い」「キャラが良くて」「ストーリーが面白い」つまり最強ってわけだ。いや、なんかほんと何度も書くけどアーマード・コアが復活してくれただけじゃなくて、こんなにめちゃめちゃ面白い上にしっかり売れてしかも流行ってるのうれしすぎる。夢? ここまで来たらゲーム・オブ・ザ・イヤー取ってほしいまである。

 一度生まれたものはそう簡単には死なない。

 見事よみがえったアーマード・コアが再びフロムソフトウェアの柱として末長く、コンスタントに新作が遊べるようになることを願います。あと過去作移植してくれ頼む〜!

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