病院まであと10分、体調を崩した子猫が力いっぱい声で鳴いて…… 迎えた矢先に難病が発覚した人懐こい子猫の闘病記
「ペットロスとの寄り添い方」第17回は猫・トシくんです。
多くの飼い主が一緒に暮らす動物を“大切な家族の一員”として捉え、人生をともに歩んでいます。動物と暮らした時間は長くとも短くとも、深い愛情を持って接した分、飼い主にとって人生のかけがえのない一部となり、別れは深い悲しみとなって心身に押し寄せます。
愛する動物との死別による喪失感や混乱、後悔など、抱えきれないほどの悲しみによって心身が不安定になる状態を指す「ペットロス」「ペットロス症候群」。2022年、全国47都道府県に在住する20〜69歳の5000人を対象に実施された「ペットに関する調査(2022年)実態編」では、「困りごと・気になる点」として「死なれるのがつらい」などの理由から「ペットロス」が上位にあがる傾向にあると発表されています。
飼い主にとって非常につらい経験となり、カウンセリングを要するケースもあることから、「ペットロス」「ペットロス症候群」は今、メンタルヘルス上の大きな課題として多くの人が向き合っています。動物とのこれまでの日々を忘れたり、死を乗り越えたりすることはできないかもしれませんが、時間の経過とともに受け入れ、いつかふと思い出したときにあたたかい涙がこぼれるような“寄り添い方”はあるはずです。
そこでねとらぼ生物部では「ペットロスとの寄り添い方」をテーマに、読者にアンケートを実施。寄せられたさまざまなエピソードから、愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事をご紹介していきます。現在動物と暮らしている人や、悲しみの渦中にいる人に寄り添うヒントとなれば幸いです。
第17回 飼い主・杉田さん/猫「トシ」くん
―― トシくんのプロフィールと出会い、思い出や印象的なエピソードを教えてください
杉田:トシは、私がブリーダー仲介サイトを見ていたときに一目ぼれしたベンガルの男の子でした。わが家に来たのは生後2カ月半のとき、体重800グラムしかない小さな子猫でした。先住猫でビビり屋のロシアンブルーの子に威嚇をされてもお構いなしに近づき、3日目には親子のようにくっついて眠る人懐こい子でした。
―― トシくんと別れてからの心境や、救われた出来事などがあれば教えてください
杉田:トシはわが家へ来て10日目に体調を崩し入院しました。その後退院はできたものの体重が増えず、様子見の再診を翌日に控えた夜、呼吸が荒いことに気付きました。「猫風邪かな? もう夜遅いし、ちょうど明日病院で良かった」などと軽い気持ちでいましたが……。
診察の結果、FIP(猫伝染性腹膜炎)であることが判明。トシの肺とおなかは水ですでに真っ白の状態でした。それから2日間ずっとそばで見守っていましたが、ヨロヨロと水を飲みに歩き出す姿を見ていたら我慢ができず、FIPの治療をしてくれる動物病院へ向かいました。
トシは病院まであと10分というときに力いっぱいの声で鳴いたのです。今にして思えば、意識のはっきりしている最期のときをトシなりに感じて、お別れを言ってくれたのでしょう。病院に到着後すぐに酸素室へ入り、面会はできましたが触れることはできませんでした。
入院して2日目の朝、彼が旅立ったとの連絡を受けました。一緒に暮らせたのはたった2カ月間でした。0歳4カ月、短い生涯でしたが、トシはわが家で過ごせて幸せだったのか――。
先住猫のロシアンブルーがいたことに救われました。最後のお別れのあいさつは、私だけの大切な思い出となりました。
―― 現在の心境を教えてください
杉田:心配させちゃいけないと、その一心で過ごしています。いつトシの生まれ変わりに会えるのか、楽しみにしています。
―― トシくんに伝えたいメッセージ
杉田:トシのあとに2匹の猫がわが家に来て、今は3匹とおかーしゃんで暮らしています。そこそこ仲良しだけど、ロシアン兄ちゃんはトシほど溺愛しません。虹の橋で待ってなくていいから、早く生まれ変わっておいで。
(了)
「ペットロス」「ペットロス症候群」になった場合、その苦しみを閉じ込めたり自身を責めたりせず、家族や仲間と共有する、生活に支障を来す場合は専門家のカウンセリングを受けるなど、焦らずに“死”を受け入れていくことが大切だといわれています。
また現在動物と暮らしている人は、「いつかは別れがくる」と理解し後悔のないよう接すること、同じ動物と暮らしている友人や仲間を見つけ、喜びや悲しみを分かち合うことが、いつかくるそのときと向き合う心身の準備へとつながるかもしれません。動物と暮らす喜びをかみしめながら、心のよりどころとなる思い出や関係を作っていきたいですね。
ねとらぼ生物部では、引き続き「ペットロスとの寄り添い方」をテーマにアンケートを実施しています。犬猫、小動物、爬虫類など、動物のジャンルは問いません。愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事など、【こちら】までお寄せください。アンケート内容とお写真は部内で審査の上、記事で紹介する可能性があります。
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