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「狂気」「やりすぎ」と反響 フライパンの3Dモデルで埋め尽くされた冷凍餃子の特設サイト、その仕掛け人に聞く(1/4 ページ)

「狂気のサイト」とも言われた味の素冷凍食品の「冷凍餃子フライパンチャレンジ」はいかにして生まれたのか。

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 Webサイトにずらりと並ぶ、使い古したフライパン――味の素冷凍食品が、フライパンに張り付かない餃子を追究するために立ち上げたプロジェクト「冷凍餃子フライパンチャレンジ」。プロジェクトの特設サイトは、全国各地から提供された「冷凍餃子が張り付くフライパン」の3Dモデルが延々と出てくるというインパクトのある作りで、SNSでは「狂気のサイト」とも表されました。

冷凍餃子フライパンチャレンジ
冷凍餃子フライパンチャレンジ

 SNSが騒然となった冷凍餃子フライパンチャレンジはどのようにしてできたのか。味の素冷凍食品、本田事務所とともにプロジェクトに携わり、サイト制作などのクリエイティブディレクションを担当したI&CO Tokyo共同代表の高宮範有さんに聞きました。

フライパンチャレンジが生まれたきっかけ

 プロジェクト誕生のきっかけとなったのは2023年5月の、あるX(Twitter)の投稿。「油いらないって!!書いてたじゃん!!嘘つき!!」と、冷凍餃子がフライパンに張り付いてしまったことに不満を訴えるユーザーの投稿が拡散し、それに対して味の素冷凍食品が研究・開発に活用するためフライパンを提供してほしいと申し出たことから始まりました。


3520個のフライパン

 その後、同じような問題を抱えた人から「商品開発に活用してもらうためフライパンを提供したい」といった申し出が複数あったといいます。実際に家庭で使われていたフライパンを研究することで、最適な調理条件を追究するべく、同社は餃子が張り付いてしまうフライパンを送ってほしいと募集。反響は大きく、当初の予定より10日ほど前倒しで募集を終了。最終的に3520個のフライパンが集まりました。

 特設サイトは10月にオープン。届いたフライパンを3Dモデル化して順次公開しており、測定精度±10マイクロメートルの高繊細な3Dスキャナでスキャンしたフライパンが、「直径」「厚み」「重さ」「焦げ付き」といったパラメータを添えて掲載されています。回転させてさまざまな角度から見ることも可能です。


パラメータとともに掲載されたフライパン

 傷や焦げあとのある、使い込んだフライパンが精細な3Dモデルとして並ぶさまは「狂気(褒め言葉)」「冷凍餃子への情熱がすごい」「技術と予算の無駄遣い感が素晴らしい」「やりすぎだよ!!」など反響を呼びました。


湯気のオンオフを切り替えられたり、背景とカーソルが餃子になる「餃子モード」があったりと、芸が細かい

なぜフライパンをスキャン?

 フライパンをスキャンするアイデアはサイト制作チームの発案。「たくさんの方からお送りいただいたフライパンを拝見し、たくさんの発見がありました。この発見をみなさまにも共有することが起点です。その上で最も精緻にフライパンの様子を共有可能にする方法を模索し3Dスキャンによる展開に行きつきました」(高宮さん)

 スキャンには味の素冷凍食品が保有する機材を使用。通常では想定していない使途のため、フライパンをスキャンするアイデアに味の素冷凍食品は当初驚いたそうです。サイト制作チームとしても、「研究開発で使用している機材なので、今回のような用途での使用が難しいかと想定していましたが、味の素冷凍食品さんも企画主旨に全面的に賛同をいただき、機材の使用許諾をいただけたことで、一気に制作が進みました」と高宮さんは話します。

フライパン3520個の「物量と重量」

 フライパンの3Dモデル化にかかる時間は、1個あたり20分程度。取材時点(12月上旬)では560個ほどがサイトに公開されており、約200時間かかったことになります。


フライパンの3Dモデルがずらり

 3Dモデル化にあたって大変だったのは「フライパンの物理的な物量と重量」(高宮さん)。フライパンの物理的な管理は味の素冷凍食品が担当しましたが、3520個の保管には大きな空間が必要で、整理、運搬には「筋肉痛不可避の苦労」があったといいます。

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