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露伴の初恋の決着を目撃せよッ! テレビ初放送・映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」を楽しむ3つのポイント(1/3 ページ)

荒木飛呂彦ワールド入門編に最適ィィィィィーーーッ!

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 誰にでも少し背伸びした恋の思い出はあるだろう。荒木飛呂彦の大ヒット漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)に登場し、プライドの高い俺様キャラとして振る舞う岸辺露伴(きしべろはん)も例外ではない。

映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」
映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」(画像は映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」公式サイトから)

 露伴はジョジョファンから非常に人気があり、スピンオフ漫画『岸辺露伴は動かない』が不定期で連載中。NHKで実写ドラマ化(主演:高橋一生)されたのに続き、2023年に映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」が満を持して劇場公開となった。

 「ルーヴルへ行く」では初めて露伴の青春時代が描かれるので、彼に対するイメージがガラッと変わること間違いなし。また、ジョジョシリーズを読んだことがない人にもオススメしたい作品で、上質なアートミステリーとして大いに楽しめる。5月6日15時55分からNHK総合でテレビ初放送となる本作の見どころを3つ紹介しよう。

1.露伴も経験した思春期の男子あるある

 天才漫画家・岸辺露伴は、ネタ集めのために国内外問わず取材へ行く。向かった先で遭遇するのは、妖怪やら祟り(たたり)やら怪現象ばかり。彼は、相手を「本」にして記憶や思考を読む能力「ヘブンズ・ドアー」を持っていて、それを駆使してピンチを切り抜ける。今作はパリのルーヴル美術館へ赴き、この世で最も邪悪な呪いを持つ「黒い絵」の謎を追う。

 パリへの出発前、露伴は「黒い絵」のことを聞いた青春時代を思い出す。この露伴の回想シーンが見どころの1つ目だ。

 当時の露伴(長尾謙杜)は17歳。漫画家デビュー前で、他人に堂々と原稿を見せる勇気もなかった頃だ。彼は下宿先で知り合った女性・奈々瀬(木村文乃)に作品を読ませてと言われても、なかなか応じない。

 この奈々瀬に露伴は一目ぼれしていた。彼女は年上のきれいなお姉さん。ミステリアスな大人の女性にひかれるのは、思春期の男子あるあるだ。露伴はつい彼女を目で追ってしまうが、奈々瀬の勘は鋭く、彼女は視線を向けられたことに気付く。バレた露伴は冷や汗が止まらない。

 ジョジョシリーズで描かれてきた露伴はクールかつ自信家。だから今作の回想シーンを見ていると、露伴よ、君もしっかり青春していたんだなと感慨深くなる。

 露伴は奈々瀬と交流を重ねるも、突如別れのときがやってくる。彼は、のちに大ヒットとなる漫画を執筆していたが、奈々瀬が露伴の漫画を読んで激怒。涙しながら原稿をズタズタに切り裂き、下宿先から姿を消す。彼女はなぜそんなことをしたのか? 露伴はただ呆然(ぼうぜん)とするばかりだった。

 ここで映画は現代パートに戻る。奈々瀬の失踪から長い年月がたち、露伴は当時彼女から聞いた呪いの「黒い絵」の話を思い出す。どうやらその絵はルーヴル美術館にあるらしい。

 注目すべきは、絵を見に行って初恋の決着をつけようという発想が、大人になるまで思い浮かばなかったことだ。おそらく奈々瀬との苦い記憶を心の中で封印していたのだろう。そんな露伴の繊細な一面が描かれるのは、シリーズ史上「ルーヴルへ行く」が初めてだ。

2.名作「ダ・ヴィンチ・コード」的展開

 「ルーヴルへ行く」は露伴の恋愛物語であると同時に、古今東西の芸術作品を巡る謎解き物語でもある。

 映画の中盤、ルーヴル美術館で不可解な事件が起き、美術に造詣の深い探偵役の露伴と、その助手役である編集者・泉(飯豊まりえ)が謎に挑む。手掛かりになるのは、絵に隠されたメッセージ。2人は現場で手に入れた情報をつなぎ合わせ、陰謀と黒幕の正体に迫っていく。

 この展開、映面「ダ・ヴィンチ・コード」(主演:トム・ハンクス)をほうふつとさせる。しかも両作品は、美の殿堂・ルーヴル美術館の地下深くには、現代のわれわれの想像を越えた秘密があるという歴史ロマンを描いている。

 実際、ルーヴル美術館には謎が多い。数十年間も行方不明だったモネの絵画が、2016年にルーヴル美術館で発見されたという出来事を引き合いに出しながら、露伴はこうつぶやく。

 「人間の手に負える美術館じゃあない」

 また、映画のなかでは、ヨーロッパの歴史的絵画や彫像に加え、日本画、現代の抽象画といった芸術作品が次々と登場する。

 もはや「ルーヴルへ行く」は、単なる漫画原作の実写映画という枠を超えている。豪華なアートミステリーへと進化した本作は、ジョジョ・露伴ファンではなかった層にもリーチし、興行収入12億5000万円を突破するヒットとなった。しかも、原作未読勢にも分かりやすい親切設計な脚本。だからいきなりこの映画から入って、ハマったら原作漫画を読むというのは「アリ」なのだ!

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