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お約束を逆手に取った良作「学園アイドルマスター」レビュー 下手な歌が成長していく前代未聞システム(1/2 ページ)

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 最近Xで話題になっている「学園アイドルマスター(以降学マス)」というゲームをご存じでしょうか。ゲームの名前は知らなくとも、“ものすごくきゃしゃな女の子のイラスト”をXのタイムラインで見たことはあるかもしれません。少なくとも自分のタイムラインでは結構な話題作となっているこの作品を今回はご紹介したいと思います。

タイトル画面

ライター:怪しい隣人

モバクソ畑でつかまえて

出来の良くないソーシャルゲームを勝手に「モバクソゲー」と名付けて収集、記録、紹介しています。モバクソ死亡リストは500件を超えました。年々ソーシャルゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。本業はインフラエンジニア。そのためソーシャルゲームの臨時メンテは祭り半分胃痛半分な気分です。


 同作は「アイドルマスター」シリーズの最新作。今までと大きく違うのは「プロダクションのプロデューサーとしてアイドルを育成する」のではなく、アイドルを育成する学校である初星学園の生徒たちである、アイドル科の女の子たちを育成するというところです。

 そして自分もプロデューサー科の学生であり、指導教官の下でアイドルを育成します。みんなそろって学生という立場なのは、「アイドルマスター シンデレラガールズ」が登場した際に上下に年齢幅が広いアイドルが登場したとき以来の新しさを感じます。

自分も生徒

 ゲーム内容は、シリーズとしてはおなじみのパラメータ「ビジュアル」「ダンス」「ボーカル」を育成し、数値を上昇させて試験をくぐり抜けるというものです。過去作では「オーディション」だったものが試験になっている辺りは学生らしさを感じます。ただ、ターンが大変短く育成の機会は限られており、そのためいかに効率よく育成を繰り返すかが問われます。

 育成および試験は双方デッキに組み込まれたカードを使ってパラメータを上げるカードゲーム風味。育成期間の合間には新しいカードや有利な効果をもたらすアイテムを入手する機会があり、育成の手助けになってくれるでしょう。この育成や試験が「Slay the Spire」というゲームに大変良く似ています。

デッキ構築とローグライク要素を組み合わせた「Slay the Spire」

 例えば先に紹介した“ものすごくきゃしゃな女の子”こと篠澤広さん。この子の育成や試験の基本スタイルは「『元気』という体力の代わりになるシールドのような数字を増やす」「『元気』が増える『やる気』という数字を増やす」「増えた『元気』をパラメータに変換する」という方針になります。

 これにより「Slay the Spire」のアイアンクラッドというキャラクターに似たような、「ブロックという体力のかわりになる値を得る」「ブロックを倍にする」「ブロックに等しいダメージを与える」という戦闘スタイルが取れます。実はこのゲームに触れてから皆があまりにも『Slay the Spire』に言及するので後からプレイしてみたのですが、プレイしていると学マスの理解が進むゲームでした。

基本的な育成はカードゲーム風味
学マスプレイ後に見ると妙になじむ『Slay the Spire』の戦闘シーン

 ただし、これらの内容をチュートリアルとして丁寧に教えてくれるかというと、そんなことはありません。逆に「まあいいからとりあえず1回やってみなさい」とばかりに3人のうちから1人を選んで1回育成する流れ。その時点では上記のような細かいカードの説明などはなく、ひとまずカードを使ってパラメータを増やして、というシンプルな進め方でサクッと終了します。その後SSRアイドルを1人選べるので、そこからが本格スタートです。

 その後も最初は適当にやっていてもなんとかなるのですが、アイドルにあった育成方法を考え、カードの使い方やパラメータの成長方法を考えていかないといけなくなってきます。そのため、何度も何度もアイドルを育成するのが前提のゲームになっています。

 そうして何度もアイドルを育成するうちにプロデューサーである自分のレベルも上がったり、良いカードが手に入ったりといろいろな要素が解放され、育成がやりやすくなっていきます。逆に言うと最初の時点ではデイリーを終わらせることすらできないほどに要素が解放されていません。また、初期の周回は短いのですが、じわじわと1回あたりのプレイ時間が長くなっているような気はします。

とりあえずやらされるチュートリアルは3人から強制

 そんな周回プレイを「ダルい」と思わされずに繰り返してしまうのは、目標設定の段階がうまく設定されていることに加え、何よりキャラクターやシナリオの魅力が大きいと思います。

 今までのアイドルマスターであれば「元気で明るい子」「クールな一匹狼でなつくまで時間がかかる子」「みんなのムードメーカー」みたいな感じのメイン3人組だったのですが、今回は「高飛車で闘争心旺盛だけどおだてられやすい子」「口調はキツいが内面は弱すぎるを通り越している子」「お金のためにアイドルを目指すけど妙に自己評価が低い子」というある意味王道からはみ出したアイドルばかり。今回はいろいろな意味で今までのお約束を逆手に取った部分がうまく機能しています。

 さらに、育成目標をクリアしていくとこの3人が絡む「初星コミュ」の閲覧が可能になり、個性と個性のぶつかり合いを通り越したような激突っぷりが堪能できます。この「初星コミュ」は動画も公開されているのですが、できれば育成しながら見ていただければキャラクターの理解が深まることと思います。この3人にそれぞれ未実装のライバルキャラクターが存在しており、今後のストーリー展開でその辺りがどう掘り下げられるのかも楽しみなところ。

高飛車で闘争心旺盛だけどおだてられやすい花海咲季
口調はキツいが内面は弱すぎるを通り越している月村手毬
お金のためにアイドルを目指す妙に自己評価が低い藤田ことね

 基本的に育成で閲覧することができるストーリーはプロデューサーと担当アイドル1対1のものになるため、他のキャラクターとの絡みは初星コミュや現在開催中のイベント、サポートカードのイベントなどに限られるのも面白いところです。

 主人公であるプロデューサーのセリフも負けず劣らず個性的。調子を崩しているアイドルに正面から「体重が増えたせいだ」と言い放ったり、クールすぎる台詞回しが印象に残ります。

 また、このアイドルたちが「育成を繰り返すうちに成長していく」ことが歌からも分かるというのは前代未聞のシステムだと思いました。最初は普通にみんな歌があまりうまくなく、繰り返し育成して上位のエンディングを迎えるほどに歌がうまくなっていくのです。キャラクターには専用の曲があるのですが、ゲームリリース後に実装された最初の新アイドルには新曲がセットになっており、新バージョンのアイドルの実装が新曲の実装につながっているのも斬新だと思いました。この新アイドルがガチャから排出されるときには専用演出があるのもインパクトがありました。

体重が増えたと正面からいえるプロデューサー
ステージの変化に合わせて歌もうまくなっていく
新アイドル様専用演出ガチャ

 リリースから一週間ほど継続してプレイして、これからもプレイしたいと思わされるゲームであるのは間違いありません。効率化を目指して強いデッキを組むのを目指すもよし、キャラクターのやりとりを追いかけるために繰り返しプレイするのもよし。いろいろな楽しみ方ができるゲームだと思いました。

 自分はようやく1人TRUE ENDという当面の目標には到達したのですが、さらにスコアを上げ、アイドルとの絆を深めた先があると聞いています。いったんのエンディングを迎え若干気が抜けているところはあるものの、いっそしばらく休んだあと、自分の担当アイドルの新曲が実装されたので再開する、というようなプレイスタイルも考えられると思いました。いずれにせよ、今後が楽しみな作品です。難易度が高いゲームではないので、ぜひ皆さんも一度ダウンロードしてみてください。

 

 ……と、綺麗に締めようと思ったのですがこのゲーム展開が早く、いろいろな動きがありました。

 まず、先日100万ダウンロードを記念して「チャイルドスモック」という新規衣装が追加されました。アイマスシリーズはなぜか女の子にこの園児服を着せたがる傾向があるのですが、まさかはじめての衣装として実装されるとは思いませんでした。

 そしてもう1つ、6月1日に新キャラ・花海佑芽が実装されることになりました。プロデュース可能なアイドルの一人、花海咲季の妹にしてライバル的な存在で、成績は悪いが秘めた才能を発揮すれば姉を超えるかもしれない少女です。明るくドジでこの子が主役級では? というような性格をしていますが、そこをあえて姉をプレイアブルにしてきたのがこのゲームの面白いところ。そう思っていたのにあっという間に実装されて驚いています。これからもこんなサプライズをお出ししてくれるのか、いろいろな意味で目が離せません。

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