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舞台初心者が舞台「ウマ娘」を見てみたら 「勝利へのこだわりという呪い」に気付き、ガチャを引く意欲が高まったお話(1/2 ページ)

配信でも伝わってきた、舞台の感動。

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 しばらくぶりのご無沙汰でした、怪しい隣人です。年末年始はこれというネタがなくひっそりと過ごしておりましたが、1月末にたまたま見た舞台「ウマ娘 プリティーダービー」〜Sprinters' Story〜(以降舞台ウマ娘)が大変面白かったのでその話をしたいと思います。ある意味ゲームのステージつながりということで、普段のゲーム紹介とはやや趣が異なりますが、お付き合いいただければ幸いです。

ライター:怪しい隣人

モバクソ畑でつかまえて

出来の良くないソーシャルゲームを勝手に「モバクソゲー」と名付けて収集、記録、紹介しています。モバクソ死亡リストは500件を超えました。年々ソーシャルゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。本業はインフラエンジニア。そのためソーシャルゲームの臨時メンテは祭り半分胃痛半分な気分です。



 舞台を見た経験がまったくないわけではないのですが、見たことがあるのはゲーム「FGO」の舞台「Fate/Grand Order THE STAGE」と、「少女 歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE-」をどちらも配信で、というぐらい。前者はコンテンツが好きだったので興味を引かれ、後者は同じような趣味を持つTwitterのフォロワーから「怪しい隣人さんは絶対に気にいると思う」とプッシュを受けてたまたま見たのですが、どちらも配信あってこそでした。

 舞台ウマ娘も最初は配信の予定がなく、さすがにこのご時世東京まで見に行くのも、と思っていたところにコロナで公演がほぼ中止になるというアクシデントが発生。そのせいか急に千秋楽だけの配信が決定し、これ幸いと見てみることにしましたが、その結果「どうせなら現地で見てみたかった!」と思うレベルにお気に入りの作品になってしまいました。

 どんな作品かというと、「Sprinters' Story」という副題の通り、短距離からマイルという距離を得意とするウマ娘たちの物語です。ダイタクヘリオス、ダイイチルビー、ケイエスミラクル、ヤマニンゼファー。4人のウマ娘はほぼ同世代であり、彼女たちの元ネタである競走馬が走っていた当時のレース結果をベースにした物語が展開されます。

 例えば、ゲームのウマ娘では現代のレースに合わせて高松宮記念は短距離レースなのですが、この時代は高松宮杯という名前で2000mという中距離を走るというレースになっていたりします。ある時代のレースをウマ娘で再現する、という意味ではヤングジャンプで連載中の「ウマ娘 シンデレラグレイ」に近いものがあるといえるでしょう。

 4人のウマ娘がどのように絡んでいくかというと、あくまでも「走るのが楽しい」というダイタクヘリオスが、「家柄のために勝たなければならない」というダイイチルビーに「レースは勝つだけではなく楽しんでいい、自分を追い込む必要はない」と気付かせるという物語です。

 そして使命のために走らなくても良いと気づいたダイイチルビーもまた「自分を育ててくれた人のために勝ちたい」というケイエスミラクルに「自分を追い込む必要はないのだ」とレースの中で悟らせることになるのです。ダイイチルビーとケイエスミラクルについていた勝利へのこだわりという呪いがそれぞれ解除されるというお話で、ヤマニンゼファーはそんな皆を見守っているという役どころです。

 悲劇的な結果に終わったケイエスミラクルの物語をきれいに納める、という意味ではアニメウマ娘1期に近いものがありましたが、2時間という時間の中で物語が濃密にされていたこともあり「救いの連鎖」とでも言うべき物語が実にうまく語られていたと思います。

 これらの物語を支える舞台演出も大変印象的なものでした。ステージのバックにスクリーンを使って字幕や実況席、コースを映し出すことでレースを再現しているのですが、走るウマ娘たちをタップダンスで表現しているのにとても驚かされました。最初は「えっ?」となるのですが、十数名のウマ娘がそろってタップダンスをすることで馬群が駆け抜けていく足音が再現されており、またレースの展開で加速していくさまがダンスのテンポアップで表現されます。

 また、背景のコース映像の変化に合わせてダンスの際に身体の向きを変えたりすることでコーナーの表現もしていたり、この見立てには「その発想はなかった!」とうならされました。ドキュメンタリー動画でその練習シーンは見られるのですが、これは舞台で見ないと伝わらないなあ、と思いました。

 ウマ娘なのでもちろんレースの後はウイニングライブがあります。レースの展開は史実に則ったものとなっているため、登場人物がそろって歌うシーンもあればソロで歌うシーンもあります。

 ミュージカルのように感情表現を歌に乗せるシーンもあり、そこで聞ける新曲もさることながら、おなじみの曲を効かせることで「ここでその曲を使うのか!」と思わせてくれる効果もありました。ダイイチルビー役の礒部花凜さんが朗々と歌い上げるシーンは大変印象深く、舞台を見終わった後「この人が出てる他の舞台劇を探してみるか」という気分になったほどです。また、ケイエスミラクルを演じる佐藤日向さんは前述の「レヴュースタァライト」にも出演しており、私がこの舞台を見てみるかと思うきっかけになった理由の人でもありました。

 そんな登場人物たちですが、ゲームの方ではどうかと言うと現在実装されているのはヤマニンゼファーとダイタクヘリオスのみ。ダイタクヘリオスの実装は1月20日と、この舞台にあわせてなのが大変分かりやすいもの。ダイイチルビーとケイエスミラクルはサポートカードのみの実装となっており、実はゲーム内でそこまで活躍しているウマ娘ではありません。

 ダイイチルビーとケイエスミラクルは2022年8月、舞台の発表とともに実装が発表されたウマ娘です。このメンバーがそろって登場してどういう話をやるか、というのは過去の競馬に詳しい方であればおおむね想像はできたでしょう。ですが、新規のウマ娘をいきなり舞台用に準備するというのはとても勇気がいることと考えられます。ルビーとミラクルの役者さんが演劇でベテランの方を連れてきているというのもある意味舞台ありきのような配役とも言えますし、思い切ったことをやったなあ、と改めて思います。

同室という設定のダイイチルビーとケイエスミラクル
そんなダイイチルビーに絡んでくるダイタクヘリオス
絡むようになったきっかけはゲームだと一目惚れ

 最後になりますが、この舞台を深く楽しむ上ではやはり競馬の知識はある方が良いと思いました。とは言っても、私レベルの「ウマ娘から競馬に入りました」という人間が調べてすぐ分かるようなお話です。大河ドラマにハマって歴史小説を読んだり博物館に行ったり、といったレベルの展開で十分な知識です。

 舞台の配信チケットは2月5日までであればまだ購入できますので、これを見てちょっとでも気になった方がいたらぜひご観覧いただければと。それ以降になるとBDが出るのは発表されているのですが、それ以外の閲覧手段がなさそうです。どこかでお金を払ったら配信を見られるようになってくれればうれしいのですが。

 ゲーム内で印象が薄かったダイイチルビーというウマ娘に対して「実装されたらガチャ引かないと……」というレベルにされてしまった怪しい隣人でした。なお、30日までピックアップされていたダイタクヘリオスは引けなかったため、彼女が登場するメジロパーマーを育成して己を慰めています……。

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