YouTubeには架空の「奇妙な雑学」を投稿し続ける“謎のチャンネル”がある――ホラー好きの間で人気急上昇中の動画クリエイターに「発想の源泉」を聞いた(2/4 ページ)
最高にゾクゾクする。
奇譚師にんぎょ「現在走馬灯を見たことがある方を捜しています」
―― 奇譚師にんぎょさんの動画では、思わずゾクッとしてしまう“架空の雑学”が紹介されていますが、そのような形式で投稿しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
奇譚師にんぎょさん: いわゆる「雑学系ショート」の形式はYouTubeユーザーの皆さまの目にとまりやすいフォーマットであり、分かりやすく情報をお伝えするのに適していると考えたからです。またクリエイター目線で言うと、編集コストが低いというのもあります。
―― 動画で紹介されている数々の“異常現象”は現実と地続きのような恐ろしさがありますが、設定やストーリーなどはどのように考えているのでしょうか?
奇譚師にんぎょさん: 日々の生活の中で思い浮かんだことをもとに考えています。
- 「人肉ってどんな味なんだろう」
- 「もし自分にしか見えない人間がいたら?」
- 「夢から永遠に抜け出せなかったら?」
そんなとっぴな妄想を、誰しもしたことがあると思います。それらを雑学の形式で分かりやすく言語化した結果が、私の動画です。
―― また、影響を受けた作品や雑学を思い付くためにしていることなど、発想の源泉についても教えてください
奇譚師にんぎょさん: 影響を受けた作品は、「世にも奇妙な物語」や星新一のSS(ショートショート)、SCPなどです。私の動画は「ホラー」というジャンルに区分されることが多いですが、ホラーはあまり通ってきていません。
世にも奇妙な物語で好きな回は、ベタですが「懲役30日」(※)です。今気が付きましたが、「罪人が苦しみながら永遠に近い時間の中で罪を雪ぐ」というストーリーラインは「fujita.mp4に関する興味深い雑学」にて分かりやすく影響を受けていますね。
※三上博史主演のSFホラー作品。死刑制度が廃止された世界で、7人もの人間を殺害し「終身刑」だと思われた男になぜか「懲役30日」の刑が科せられるという話。「世にも奇妙な物語」ファンの間で長い間根強い人気を誇る名作で、DVD「世にも奇妙な物語 DVDの特別編 3」に収録されている。
お話を考えるときには特別なことはしていません。強いて言えば、日々の生活の中でアンテナを少し高く張っておくと、話のネタが見つかることがあります。
―― にんぎょさんが初見の人にオススメしたい動画3選を見どころとともに教えてください
奇譚師にんぎょさん: 以下の3本です。
感染性記憶変容症候群に関する面白い雑学
人間は常に変化し続ける生き物です。例えばあなたが30歳だとして、10歳のときのあなたを構成していた細胞は一部を除き入れ替わっていますし、思考・精神・行動原理等もまた、まるっきり別のものになっていると思います。
果たしてそれは同じ人間といえるのでしょうか。一般的には「成長」という言葉で片付けられるそれを、「精神疾患」という別のアプローチから捉え直してみた動画です。
ニュードレプス症候群に関する恐ろしい雑学
夢を見ている最中って、その世界でとてつもなく長い時間を過ごしているかのような感覚になりますよね? この動画ではその現象の原因について、答えを出しています。特に明晰夢を一度でも見たことがある方には、ぜひ見ていただきたい動画です。
上に住む者に関する恐ろしい雑学
私は普段怖い動画を作ろうとして動画制作をすることはないのですが、この動画は珍しく、怖いものを作ろうとして作った動画です。1分間という時間的制約の中で、ジャンプスケア(※筆者注:見ているものを「ワッ」と驚かせるような演出)を使用しない映像としては、それなりに怖いものになったのではないかと思います。大きな音や恐ろしい画像で怖がらせるような動画ではないので、ホラーが苦手な方にも見ていただけると思います。
―― 現在チャンネル登録者が30万人を突破し注目度が高まっていると思いますが、心境はいかがでしょうか?
奇譚師にんぎょさん: 大変うれしく思いますが、数字に強いこだわりはありません。細く長く、続けていけるように頑張ります。
―― 初期はオムニバス形式の独立した“奇妙な雑学”という印象でしたが、最近では世界観がつながりを見せ始めているように見受けられます。コメント欄でもさまざまな考察がなされていると思いますが、今後はどのような展開を見せていくのでしょうか?
奇譚師にんぎょさん: YouTube ショートには1分間という制約があるので、私も全ての情報をお伝えできているわけではありません。故に想像の余地が生まれますし、そこが面白さだと思っています。
一方で、今後動画の本数が増えてくることで、すでにご紹介した異常現象を別の側面からご覧いただく機会が増えてくると思いますので、楽しみにしていただければ幸いです。
―― 最後に、にんぎょさんとしての今後の展望をお聞かせください
奇譚師にんぎょさん: ショート動画以外の形式(長尺動画や文章等)での制作にも、挑戦していきたいと思っています。また、現在走馬灯を見たことがある方を捜しています。
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