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「お客様の現在の努力では」―― 10年超続くメイドカフェの投稿が物議 担当者が語る「旧来型メイドカフェが淘汰されつつある秋葉原の今」(2/2 ページ)

2004年にオープンした「ミアカフェ」東京店に取材しました。 ※2月26日追記

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 もう1つ、現代型の特徴として挙げているのは、仕事内容と釣り合わない低賃金。給与を「普通の飲食店」相当に抑えて従業員から搾取することで、メイドカフェより高く、ガールズバーより安い中間的な料金設定を実現し、“安くて質の高いサービス”を提供しているといいます。

 ですが、旧来型も現代型も、同じ「メイドカフェ」というカテゴリーで認識されており、「ガールズバーとの境界が曖昧で、もうかる現代型の店舗が繁栄 → あまり稼げない旧来型が淘汰される」という動きが進んでいるとのこと。ミアカフェを含む旧来型の店舗は秋葉原で数カ所、全国的に見ても20店舗程度しか残っていないそうです。

心優しいメイドさんを守るために、徹底した「嫌な仕事の排除」

 Twitter担当者によれば、ミアカフェには創業以来、「(経営側が)自分が働きたくない会社にはしない」という方針が。例えば、スタッフのシフトを勝手に入れることは避け、人員が足りないときは臨時休業で対応。飲食物を提供するにもかかわらず、将来性のある女性スタッフがケガをしないように、キッチンには包丁やフライヤーを置いていないそうです。また、給与は「普通のアルバイト」よりも高くなるようにしており、経営状況が厳しいながら、昨今の人件費高騰にも対応しようとしています。

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 ここまで待遇面に気を配る理由について、一連のツイートでは次のように説明されています。

 メイドカフェの本質は「心優しいメイドさんによるお客様への癒し」。ですが、本当に心優しい人を見つけるのは難しいうえに、そのような性格の持ち主は普通の職場だと、嫌な仕事を押しつけられるなどして辞めてしまう傾向が。そのため、優しい人に嫌な仕事が行かないように、嫌な仕事自体を無くすという「普通の会社がやらない無理」を14年間続けてきたといいます。

 しかし、同店は2009年ごろから赤字が続いており、コスプレ衣装の通信販売などの他事業に支えられている状態。その通販事業も安泰ではなく、最近では、他業者に合わせた送料無料化や運賃の上昇、より物価が低い中国からの出品などによって厳しくなっているとのこと。ミアカフェは現在、売上が1万円を下回ってしまう日もあり、「大赤字のまま維持できる自信がなくなってきた」そうです。

「ミアコスチューム」通販サイト

それでも、旧来型メイドカフェを残したい理由

 それでも、ミアカフェを続けようとする背景には、メイドカフェの歴史の中で同店が犯した“失敗”への反省があるといいます。

 「萌え~」がユーキャン新語・流行語大賞(2005)にエントリーされる前年、ミアカフェは、同人活動のようなノリを持つメイドカフェの世界に「普通の企業のやり方」を持ち込む形でオープン。実験的な試みではありましたが、一時は台風が来ようと、大雪が降ろうと終日満席になるほどの大成功を収めたそうです。

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ユーキャン新語・流行語大賞Webサイトより。「萌え」は2005年ごろに一般化していったと解説されています

 ですが、ここからメイドカフェの存在が世間に広まり、現代型の参入を招くことに。経営体力が乏しい傾向のある旧来型は、ビラ配りなどで客引きを行う現代型に需要を奪われるなどして、数を減らしてしまったとのこと。Twitter担当者は「自分たちがミアカフェをやらず、もう少しメイドカフェへの注目が遅れたら、今みたいなカオスな状況にはならなかったかもしれない」と悔やんでいるそうです。

 しかし、同氏にとって旧来型メイドカフェ事業は「会社の創業の原点で、秋葉原らしさの象徴」。苦境に追いやられていることを理解しつつも、数少ない旧来型の生き残りであるミアカフェを存続させたいと考えているようです。

 同店グループのアルバイト希望者向けのQ&Aにも「(メイドカフェをはじめとした)秋葉原特有の文化を、本来の秋葉原らしさ、オタクらしさの本質を失うことなく、次の世代に伝えることが、最終的な事業目標」と同様の見解が示されています。

アルバイト希望者向けのQ&Aページ。「他店勤務経験者からの質問です」という項目内で、メイドカフェなどの業界動向にふれつつ、自社の方針を明らかにしています

“安くて質の高いサービス”が、秋葉原らしさを破壊する?

 「働き方改革が叫ばれているなか、真面目に従業員のために頑張っている企業がなかなか評価されないこと、それから、従業員からも取引先からも搾取してるから実現できる“安くて質の高いサービス”に客足が向いてしまう現実について考えてほしい」とTwitter担当者。現在の状況が続けば、他の街とは違う秋葉原らしさを作っている「小さな事業者が集まる雑多な雰囲気」が消えてしまうという危機感も抱いているようです。

 秋葉原らしい街並みを守るために同氏が提案しているのが、存続してほしい店舗を利用するように心掛けること。例えば、ミアカフェの場合は電子部品が必要なとき、秋葉原駅ガード下に集まる店舗で購入するようにしているそうです。「今のミアカフェ東京店を守れるのは、お客様の毎日のご来店と使っていただくお金にかかっております」「これは義務だと思って、お客様に本当にお願いです」などの呼びかけは、このような考え方の延長線上にあるのかもしれません。

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 Twitter上には「ミアカフェを守りたい」という担当者に賛同する人が現れています。その一方で、利用者に行動を求める姿勢に「経営不振の原因は、経営側にある」と反発する声も少なくありません。

性的なサービスを提供する店舗が現れたメイドリフレでは、旧来型の淘汰がメイドカフェよりも早かったとのこと
このままでは、秋葉原が「渋谷や新宿と変わらない街」になるかもしれない、と危機感を抱いているようです

マッハ・キショ松

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