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» 2011年12月06日 19時00分 UPDATE

「異様な進化」遂げる日本の恋愛 AKBオタクが“搾取”されても片思いを続ける理由 (1/2)

日本社会ではAKB48のような既存の恋愛を超えた“謎のシステム”が生まれている――小説家の平野啓一郎さん、アニメ脚本家の櫻井圭記さんらが「アーキテクチャとしての恋愛」を語った。

[山本恵太,ITmedia]
ky_renai_1207_001.jpg 150席の会場で立ち見がでる盛況ぶり

 初音ミクのような実在しない存在を“嫁”と呼び、AKB48のようなアイドルにかなうことのない片思いを募らせる。この奇妙に発達した日本の恋愛は、どのような構造で成り立ち、どのような意味を持つのだろうか。

 批評家の濱野智史さん、小説家の平野啓一郎さん、アニメ脚本家の櫻井圭記さんなど6人のパネリストが慶応義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の研究発表イベント「Open Research Forum 2011」で、「アーキテクチャとしての恋愛」と題したセッションを行った。本稿ではセッションからAKB48の話題を中心にお届けする。

「AKB」には異様に進化したアーキテクチャがある

 濱野さんが「最近、やばいものがあると気付きまして」と話しながら議題に出したのはAKB48だ。自身も北原里英さんのファンで、握手会に参加するため12月発売のシングルを10枚ほど予約していると話す。北原さんは6月に行われた「総選挙」(AKB48 22ndシングル選抜総選挙)で13位だった。12位までのメンバーは「メディア選抜」として優先的にメディア露出をさせてもらえるため、「13位か12位かでものすごく人生の差が生まれてしまう」という。

 12位だった高城亜樹さんとの差は3052票。「それだけの差で(好きな子の)人生が変わるんだったら俺も投票しないといけないかなと思い(投票券が付いたCDを)20枚、30枚と買ってしまう。そういう搾取の仕組みがあるわけです」

ky_renai_1207_002.jpg 濱野智史さん

 あえて「搾取」という言葉を使う濱野さんだが、AKBのすごさは、“AKB商法”などと言われる批判をメンバー自身がかわしてしまうところにあるという。「総選挙で(2位の)大島優子さんが、『私たちにとって、票数というのはみなさんの愛です』と言って、AKBアンチからの批判を一気に“AKB愛”として(否定し、そのやり方を)大肯定させてしまった」

 一方で、総選挙1位の前田敦子さんについて濱野さんはこう語る。「僕はあっちゃん(前田敦子さん)かわいいと思ってますけど、ネットでは顔面センターとか浜ちゃんに似てるとか言われて叩かれている。あっちゃんは情報化社会でエゴサーチとかして知っているわけですね。そのことを。で、(総選挙で)何を言ったかと言うと、『私のことが嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください』と泣きながらしゃべって、会場のAKBオタは大絶叫した」

 なぜ、AKBのファンは自分たちが「搾取」されていることを認識し、AKBのメンバーたちは自分たちの商売が「AKB商法」と批判されていることを認識しながら、お互いに愛で結ばれているのだろうか。濱野さんはそこにAKBならではのアーキテクチャ(仕掛け)があると説明する。

 「ユルゲン・ハーバーマスっていう社会哲学者に言わせると、“システム”と“生活世界”は相容れない。愛というのは生活世界だけの問題で、システムというのは機械的に運営されていて、全然愛に満ちていない。こういう対立があるんですが、AKBの場合、この2つを握手会とか選挙っていう仕組みでくっつけてしまうことで、本気になりやすい環境がアーキテクチャとして作られている。それによって大島優子や前田敦子のような、謎の責任感を持つ主体が生まれる。そして、コミットする信者・オタが生まれるというある種カルト的な状況が生まれる」(濱野さん)

松田聖子の時代より片思い感が増している

 AKBについて熱く語る濱野さんに、櫻井さんが「僕はかつてモーオタ(モーニング娘。オタク)だったんです」と参戦。実体験から、アイドルに片思いする構造を騎士道に例える。

 「騎士道の恋愛対象というのは、自分の上司の奥さんだったりする。でも、上司の奥さんが特別きれいだからっていうわけではないんです。上司の奥さんであるという属性が、絶対に届いてはいけないという構造になっているからいい。AKBはそれを意識的に構造化していて、握手はできるし『誰々さん、ドラクエクリアできましたか?』とか言われるわけです。覚えていてくれたんだっていう。そういうことがあると、松田聖子のような時代のアイドルよりも、もっと片思い感が増しているわけです。届かないことは分かっていて、その上で届きそうで届かない感じがうまく演出されている」(櫻井さん)

 AKBは、その届きそうで届かない片思いを、握手会や総選挙によってうまくゲーム化していると濱野さんは指摘する。「世界中で革命なりデモなり暴動なりが起きていて、なんで日本の若者はそういうことやらねーんだっていう話があると思うんですけど、AKBとかあったらこっちのほうが面白いと思いますよ」

ky_renai_1207_004.jpg 平野啓一郎さん

 しかし、平野さんはこの構造が疑問だと言う。「プライベートでデートできるわけじゃないし、セックスするわけでもない。そこに不満が残るんじゃないかなって感じがものすごくする」。平野さんは恋と愛の違いについて「恋は短期的に燃え上がって、あの人のことを好きだと思う状態。愛は関係の継続性に関わるもの」と説明している。

 「人間は恋にものすごく燃え上がって、あの人が好きだと思っているときは、その人と結ばれて継続する関係性を夢見ている。愛の状態になってずっとその関係性が続いていると、ときどき瞬発的に燃え上がるような恋の感情を味わいたくなって、不倫したりとか、どこか旅行に行って恋心を燃え上がらせるとか工夫しなくちゃいけない。シーソーみたいに、恋は愛に発展するし、愛がずっと続いてると恋に揺り戻しがあるっていうのがずっと起こっているのが人間なのではないかと考えている」(平野さん)

 恋と愛を行き来しているのが人間の恋愛であるなら、AKBのファンたちはなぜ片思いの状態でとどまり続けることができるのだろうか。櫻井さんは恋と愛とは別の恋愛感情として、“萌え”が存在しているのではないかと指摘する。

 「萌えって言うのはですね。燃焼のBurnじゃないんですよ。燃えちゃだめなんです。それは、むにゅって心の中に生まれた萌芽のようなものをね、愛(め)で続けるんですよ。それは花開いちゃだめだし、ましてや燃えちゃだめ」(櫻井さん)

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