「いまいち萌えない娘」はいかにしてスターダムを駆け上がったのか? 「奇跡」の1年間を振り返る誕生から1年(2/2 ページ)

» 2012年01月14日 13時05分 公開
[池谷勇人,ITmedia]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

「いまいち萌えない娘」自体が萌えに対する問いかけだった

 多くの人が気になっているであろう「いまいち萌えない理由」の正答例について尋ねると、「うーん、ないと思います(笑)」(矢野さん)とやや期待ハズレな答えが返ってきた。中にはわざわざ紙面をコピーして回答を書き込んでくれた人もいたというが、包み隠さず言えば、あれは単なる広告のコピーであって、実際の合否には一切関係なかったそうだ。

 とは言え1年間、「いまいち萌えない娘」と向き合ってきたことで、「萌えとは何かを考えるきっかけにはなった」と矢野さん。「いまいち萌えない娘」にもニーソックスやツインテール、女の子座りといった萌えの「記号」は盛り込んだが、それだけではやはり何かが足りない。では萌えとは一体何なのだろう? それまでは無自覚だった「萌え」が、「いまいち萌えない娘」というフィルターを通して見ることで、ぼんやりとその輪郭を浮かび上がらせる。「あれ自体が『萌え』に対する問いかけになってしまいました。萌えるか、萌えないか、どこが萌えて、どこが萌えないのか。自分の中の『萌え』と照らし合わせて、答え合わせのように楽しんでもらえたら」と矢野さんは笑う。

 また一方では「萌えないところが萌える」といった声もある。萌えないと言われているのに萌えてしまう面白さ。加えて最初から「萌えない」と明言していることで、二次創作のハードルを下げたのもよかった。早い段階で、公式に二次創作を認めたこともあって、「じゃあ萌えさせてみよう!」と挑戦する人が次々と現れた。元絵が萌えないからこそ二次創作が盛り上がる――という点では、「東方」や「ひぐらしのなく頃に」などに近いのかもしれない。

画像 追加募集のため、8月に掲載された第2弾「いまだにいまいち萌えない娘」

画像 中にはフィギュアを作って送ってくれた人も。うつろな瞳が再現度高し

画像 こちらもファンが作った、被災地応援ステッカー

画像 二次創作作者にプレゼントされた缶バッジ。これも西さんの自腹だそう

4月以降は事業縮小?

 今後の展開について聞くと、「3月までに何か『締め』のようなことをやりたい」と矢野さん。というのも、「いまいち萌えない娘」が誕生するきっかけとなった、兵庫県の緊急雇用創出事業が今年の3月いっぱいで終了してしまうのだという(神戸新聞社は兵庫県からこの事業を受託しているという形)。

 もちろん「せっかく育てたコンテンツを捨ててしまうのはもったいない」ということで、今後は神戸新聞社の単独事業という扱いで、「いまいち萌えない娘」公式ページおよび「いまもえ.jp」は存続させるとのこと。しかし「やはりある程度の縮小は避けられないと思います」と矢野さん。なにぶん特殊なコンテンツであるため、社内でもちゃんと「いまいち萌えない娘」について理解している社員はそれほど多くないのだそうだ。

 今後はまず、1月15日にインテックス大阪で開催される「Comic Treasure 19」で同人誌第3弾「RE:いまいち萌えない娘」を頒布(ちなみに冬コミは落ちたらしい)、その後3月までに何かもう1つ「締め」になりそうな活動を考えているとのこと。とは言え、4月以降も「いまいち萌えない娘」がなくなってしまうわけではないので安心してほしい。

画像 3月にオープンした「いまいち萌えない娘」の公式サイト
画像 兵庫県のサブカル情報を発信する「いまもえ.jp」。こちらが本来の求人目的

「いまいち萌えない娘」という奇跡

 本来ならば、1回限りの広告で終わるはずだった「いまいち萌えない娘」。そもそも兵庫県が神戸新聞社に委託したのは「いまもえ.jp」の制作・運営の方で、「いまいち萌えない娘」については完全に予定外だった。それが今では、公式サイトまで作られ、Twitterを覗けば、やわらかな兵庫弁でフォロワーとの対話を活き活きと楽しんでいる。一瞬、「いまいち萌えない娘」という人間が本当に、この世に存在しているかのような錯覚を覚える。

 もしもあのイラストがもっと「萌える」ものだったら? もしもあのキャッチコピーがもっと別のものだったら? ネットで話題になるのがあと1日遅かったら……? いくつもの偶然がピタゴラスイッチのように積み重なって、今の「いまいち萌えない娘」は存在している。それを「奇跡」と表現した矢野さんの言葉は、決して大げさなものではないだろう。これからもそんな「いまいち萌えない娘」の奇跡を、末永く見守っていこうと思う。

画像 「いまいち萌えない娘」の公式Twitter。フォロワー数は1万人を超える

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  4. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  5. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」